第三話 対決! 本部VS透明人間
突然筆が失速してしまい前回から少し投稿が空いてしまい申し訳ございません。度々こういったことが起こりそうで気を付けないといけませんね。とりあえず投稿頑張りたいと思います!
「君が二人目の異能力者だって!?」
「そうよ。もしかして自分以外の能力者に会うのは初めて?」
「そりゃもう。生まれてから一度もないし、しかも同じ学校の子だなんてびっくりだよ」
「それはよかったわね。でも最初に会ったのが私だなんてあんた相当運がないわね。悪いことは言わないから私とは関わらない方がいいわよ」
先ほどから彼女の言動が妙に引っかかる。何かにつけて関わらない方がいいと忠告するのはなぜだろう。
「どうしてさっきから俺を遠ざけようとするんだ?」
「そんなの無関係のあんたに危害が被らないために決まってるじゃない」
どうやら俺の身を案じてのことだったようだ。しかしそれほど彼女と彼には何か人には言えない事情があるのだろうか。それも人に危害が及ぶような程深刻だとはとても思えないが、これ以上の詮索はそれこそ野暮というものだろう。
そう判断し、それ以上話を聞くのはやめにした。
「わかった。わざわざ忠告してくれてありがとう。君の言う通り、極力関わらないようにする」
「賢明ね。極力は余計だけど」
「でももう一個だけ個人的に聞きたいことがある」
「何かしら?」
「その手首につけてる妙なものはなんだ?」
見るからに異質なアクセサリーをしている彼女は顔を紅潮させ、とても困ったような表情をする。
形状的に手首を拘束するためのものではないため手錠ではなさそうだが、もしファッションとして身に着けているなら彼女のセンスを疑う。
「あんた、さっき関わらないようにするって言ったじゃない!」
「えーそれを聞くのもダメなの? いやそのアクセサリーが関係してるということは…まさかだと思うが本当に手錠なのか!? 実は今まで捕まっていて警察から逃げてる最中だったり? まさかあの男とも共犯で計画的な逃走を!?」
「そんなわけあるか!」
「いでっ!」
思いっきり殴られた。
「いい? これはただのファッションだから。勘違いしないで」
そういって身に着けているそれをこれでもかと見せつけてくる。
やはり彼女にセンスはなかったようだ。
「とにかく。私は帰るから、決して学校で会っても話しかけないでよ」
そうして彼女が路地から出ていこうとする。すると突然歩みを止め、俺の方へ振り返る。
「あと今日助けてくれたお礼にもう一つだけ。さっき会った男には十分注意して。あいつに狙われるとすごく厄介だから、それじゃ」
今度こそ路地を出た彼女に続くように俺も家へ帰った。
次の日。時間はとっくに18時を過ぎていた。
なぜそんな時間まで学校にいるのかというと、俺には外部から襲撃してくるかもしれない異能力者の迎撃をする任務を課せられているため帰宅できないのだ。
しかしいつものように異変は特にない、今日も平和である。
あとは終了時間の19時まで適当に時間を過ごせば、家に帰れる。
このまま何もありませんように、そう祈った瞬間だった。
突然学校中にけたたましく鳴り響く警報音。
初めての出来事でパニックになりつつも何とか冷静さを保つ。
この警報音は侵入者を検知した際に鳴るセキュリティシステムだ。
「嘘だろ? 一体どこの誰なんだ」
とりあえず、状況を把握しないと。
そう思いポケットから携帯端末を取り出す。
この端末は契約者にのみ支給されるもので、機能として異常事態が発生した場所から最も近いカメラの映像を画面に映し出すといったものだ。他にも任意で選んだカメラの映像も見ることができる。
これで状況の確認を行うが、画面が真っ白であり、どうやら煙幕のようなものでカメラの視界が遮られているようだ。別のカメラも確認するが一階フロアはすべて煙で特定は困難だった。
「まずい。これじゃあ侵入者の顔と人数がわからない」
このままでは侵入者を発見できないと判断し、今いる教室から出ようと歩き出す、すると…。
「なんだ男か。人の気配がしたものだから様子を見に来たが、当てが外れたな」
いつの間にか見知らぬ男が教室の中に入ってこようとしていた。
男の身なりは一般的な服装で常に周りを警戒して移動している挙動はまさに不審者のそれであり、男が侵入者であることは明白だった。
「おい小僧、俺は今人探しをしている。手首に妙なものを身に着けている女子生徒だ。心当たりはないか」
俺には心当たりがあった。男が言っている人物は恐らく、昨日路地で出会った彼女のことだ。
もしかして今のこの状況こそ、彼女が言っていた関わると危ない目に遭うっていうことなのか。
彼女のことを素直に答えるべきかどうかを考えあぐねていると男はそれを不審に思ったのか、ゆっくり近づいてくる。
「怪しいな。小僧は今俺の質問に答えようかどうかを考えてる風だった。ひょっとして何かを知っているな?」
俺は図星で何も言い返せなかった。
「やはりか。ならば力づくで小僧から女の居場所を吐かせる必要があるな」
そう言って男は臨戦態勢に入る。
今すぐにでも戦闘が始まりそうな一触即発な雰囲気のなか俺は恐怖から身体中が震える。しかし俺には男からこの学校を守らなければならない。
「ちくしょう。やるしかねえんだもんな。ここであんたを捕まえて異能課に突き出してやる!」
俺はポケットから鉄球を取り出し構えた。
「小僧も能力者か。いいだろう、かかってこい」
男が接近してきた次の瞬間、その姿が跡形もなく消え去ってしまった。
「き、消えたっ!?」
予想外の事態に面食らっていると、突如頬から殴られるような感覚と痛みのショックで身体がよろめいてしまい、今度は腹部に攻撃を受ける。
「ぐはっ」
これ以上は命の危険を感じその場から離れる。
男は目には見えないが間違いなくさっき殴られた場所のどこかにいる。目には見えないのにそこに存在する、さながら透明人間のように。
男の異能力は透明になれる能力だろうか。
もしそうなら非常に厄介な能力だ。見えない敵とこのまま戦っても一方的に攻撃されて負ける。どうにかして敵の位置を特定しなければ。
そうと決まれば俺の能力の出番だな。
俺の異能力は磁力を操作することができる。磁力を発する物質を引っ張ることや反発させることが可能な能力。
男の持ち物からクレジットカードでも家の鍵でも、何か磁力を持つ物質を引っ張ることで相手の位置を特定する。
磁石を引っ張るイメージでいろんな方向に手をかざす。それから俺の発する磁力に反応するものを集中して探す。
教室の出入り口付近に反応なし。教壇付近に反応なし。教室の奥のロッカー付近に反応あり。
「見つけた、そこだ!」
すかさず鉄球を勢いよく投げ、何もないはずの空間に鉄球が命中する。
「ぐっ、馬鹿なっ!」
そこにはわき腹を押さえた男の姿が現れた。
「大した小僧だ。まさか偶然じゃないよな? 小僧の異能力か」
「よしこれならいける」
「侮れない相手だな。正直な話一方的な戦闘になると思っていたが、一筋縄ではいかないようだな」
再び透明化になる男。
「透明になっても無駄だ。もう一発食らわせてやる」
再度俺は索敵の態勢に入り位置の特定を試みる。どうやら男は機会を伺っているのか俺の周りをぐるぐる動いている。そしてすさまじい勢いで接近してきた。
それを冷静に対応し、再び鉄球は命中した。
「よし! これで二発目!」
しかし何かがおかしい。先ほどの手ごたえとはまるで違う。
不思議に思い、攻撃した方向を注目すると、あろうことか先ほど命中させたのは男の私物であろう何かの鍵であった。
「嘘だろ。本体じゃない? てことはまさか」
嫌な予感を感じ防御する態勢をとろうとしたが間に合わなかった。腹部に思いっきり蹴られる強烈な痛みとその衝撃で身体が吹き飛ばされ受け身も取れないまま壁に衝突してしまう。
やっとの思いで立ち上がると男が何やら満足そうな笑みを浮かべている。
「さっきので確信したぞ、小僧の能力が何なのか! 恐らく物を引き寄せる能力。しかも鉄や磁力を発する物質だけのはずだ。違うか?」
見事なまでに能力を看破されてしまった。
「さっきから車の鍵が小僧の方へ引っ張られていたからもしやと思ってデコイのつもりで投げてみたが、見事に俺から注意を逸らして鍵の動きを追ったのをみて確信したんだ。さっきの仕返しが出来てすっきりしたぜ」
まさか能力を逆に利用されるとはしてやられた。
それにこの短時間で限られた状況から相手の能力を見抜く洞察力といい、これが経験の差というものなのか。
それにしても今の状況はまずい。男の私物を探知して分かったことだが俺の能力で探知できるものはさっきの車の鍵しかなかった。また透明になられたら索敵の術を失ってしまう。今ここで決着をつけなければ負ける。
痛みに耐えながら二個の鉄球を男めがけて放つ。すると男は一個目を冷静に回避するが二個目は対応が遅れ頭部に着弾しよろめく。
これはチャンスだ。そう思った俺はすかさず鉄球を回収し、再び放つ。
「これでとどめだー!」
放たれた鉄球は男の頭部に吸い込まれていく。しかしその間を縫って無防備な俺に重たい一撃を叩き込んだ。
「いいか小僧。相手にとどめを刺すときは確実でなくてはならない。決着を急ぐと今みたいに相手の反撃を許してしまうからだ。よく覚えておくんだな」
男は教室の出入り口に向かい走り出した。
「待て…どこにいくんだ」
「俺も予想以上にダメージを受けた、ひとまず小僧との決着はお預けだ」
そう言って駆け出す男の跡を必死で追いかける。
ここで逃がすわけにはいかない、そんな強い意志が俺を突き動かしてくれる。
廊下に出るとすでに透明化していた男だが、先ほどの戦闘で負傷した傷から出血しており、追跡は可能だった。
何とかして逃げ道のないところへ誘導しなくては。ここは学校の三階で廊下の左を曲がった先は行き止まりのはずだ。
男が右へ曲がるのを鉄球で阻止する。
そして程なくして例の行き止まりの場所まで誘導が成功した。
「観念して透明化を解いたらどうだ? どっちみちあんたに逃げ道はない」
「流石に地の利は小僧の方か。まんまと行き止まりに誘いまれたわけだが依然有利なのはダメージの少ない俺だ」
俺も男も静かに戦闘態勢に入る。
あの男を負かすには気絶するほどの重い一撃を与えること。狙うなら奴の後頭部だ、後頭部に命中させて奴を一発koさせるしか俺に勝ち筋はない。
問題は鉄球をどうやって後頭部に命中させるかだ。今ちょうど妙案を思いついたがそれが通じるかはわからない。でもやるしかない。
まだ一度も見せていない磁力のもう一つの力で奴に勝ってみせる!
最後まで読んでくださりありがとうございます! 前回でも話していたように戦闘描写はワクワクしながら書いていたので楽しかったですね。これからの話でも色んなシチュエーションの戦闘を考えていますので楽しみにしていただけると幸いです。それでは。