表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

対異世界武器戦闘術

老人勇者が軍隊チートと戦った話

作者: 山田 勝

「おじいちゃん・・じゃなかった。タキジロウ勇者様!~~~~お食事の時間でございますわ!」


「あれ、さっき、いや、頂こうかのう」


 城の中庭で、日向ぼっこをしていた老人が、10代のお姫様から声を掛けられた。

 お昼ご飯の時間だ。


 ・・・私はフレデリカですわ。小国の王女、我が国は異世界召喚を行ったのですわ。

 神官様と聖女である私が、麦20キロをお供えして儀式を行ったの。来られたのは、70近いおじい様、タキジロウ様ですわ。


 皆は落胆したの。

 でも、呼んだのは私たち。途方に暮れるタキジロウ様に、申し訳なく。

 故郷から引きはがしたせめてもの罪滅ぼしに

 客人として歓待しようと決めたの。


「お味は如何ですか?」

「最高じゃ、ところで、何故、ワシを呼んだのじゃ。孫の本では、魔王やドラゴンを退治するために、異世界召喚するのじゃろ?」


「いいえ・・・・タキジロウ様には、客人としていらっしゃるだけで、民の心が休まりますわ」

「そうかのう」


 ・・・可哀そうに、お孫様がいらっしるのね。


 我が国は、勇者に荒らされている。勇者の名はロマン。

 異世界の武器を召喚し、鉄の車で、我が国の村落を襲い始めた。


 ロマンの持っている魔法の杖は、この国、一番の冒険者を簡単に屠り。私の婚約者・・・この国一番の騎士をも簡単に打ち取ったわ。

 見えない鉄ツブテを放つ恐ろしい魔道具。


 父上は苦肉の策として、上納金を渡し、乱暴狼藉をしないように、取り決めをしたの。守られるはずもない。

 今でも、面白半分に、人を襲っているのですわ。

 今、問題になっている一番の心配は婦女子の貞操ですわ。


「フレデリカ、すまない・・・無力な父を許してくれ」

「フレデリカ、グスン、グスン」

「姉上!」


「フフフフフ、この身一つで、ロマン様が満足なさるのなら、お安いもの。私がロマン様を改心させてみせますわ」


 今日、ロマンの使者がやってくる。

 私は、鉄の車に乗り。ロマンのアジトで、仕えるの。


「くれぐれも、タキジロウ様には、毎日、肉か魚を食べさせてあげてくださいね」


「おお、約束しようぞ」

「「「グスン、グスン」」」

「フレデリカ!」


 タキジロウ様では絶対にかなわない。それは分かるわ。


 私の部屋は、城の3階にございますの。国を一望できますわ。大好きな光景、これも見納めね。


 あら、城の門の前に、鉄車が来ましたわ。城兵が出迎えていますわ。


 ブロブロブロ~~


 ロマンの能力は、こうした不思議なものを召喚することができますの。

 付近のゴロツキも集まり。手が負えなくなりましたの。


 あら、タキジロウ様が、鉄車に近づきましたわ。

 あら、異世界から持ってきた杖・・・えっ、刀ですの。刀を抜きましたわ。

 え、ロマン配下のゴロツキを・・・・


「斬ったわ!」


 私ははしたなくも、スカートの裾を掴んで、走って、タキジロウ様のところにいきましたわ。


 父上、母上、弟や兵士も・・タキジロウ様のところに参りましたの。


「フォフォフォ、話は聞いておったのじゃ。戦争じゃ。魔導士と鍛冶職人を呼ぶのじゃ」


 ロマンの使者を殺すということは、軍事チートと戦争をすることよ。

 父上は膝を落としていますわ。

 しかし、


「是非も無し。勇者タキジロウ様の言うとおりにしよう」


「「「オオオォォォ」」」


 この日、ロマンが国を襲うようになってから、初めて、城に歓声が響いた。


 タキジロウは、一人生き残った使者に、文書を持たす。


「歩いて帰るのじゃ。姫はやらん」


 書いた文字は、日本語である。


「や~い。キラキラネームのドキュン。姫はやらん。そのくさい〇〇〇は自分じぶんで処理しろ。バーカ」


 であった。漢字に読み仮名をふり馬鹿にしているのが分かる。この世界の人々には分からない。


「さあ、鍛冶職人を呼ぶのじゃ。力仕事を出来る若者を呼ぶのじゃ。決戦じゃ!」


 ☆軍議


「いいかのう。おぬしらが鉄車と呼ぶものは、燃えるのじゃ」

「「「何と!」」」

「そしての。鉄車はジャンプしないのじゃ」

「「「何と!」」」


「つまりじゃ」


 タキジロウは、鍛冶職人にある鉄製のものを作らせ。若者に、穴を掘らせ。土嚢を作らせた。


 ☆洞窟


「バーカだと!」


 洞窟付近の盗賊を吸収した夢見ロマンはいきり立つ。


 パン!

 日本時代愛用していたトカレフで、おめおめ帰って来た使者を撃つ。


「日本人が来たか」


 ・・・本職に追われ、川に落ちた時、死んだと思ったがよ。気が付いたらこの世界にいた。異世界転生したのさ。

 俺の能力は、地球の軍隊のものを無制限で召喚できる。

 やったぜーと思ったものよ。


 しかしよ。装甲車や戦車、戦闘機を召喚したが、運転できないじゃん。使えないじゃんかよ。

 F県の本職さんは、ロケットランチャー使うっていうけど、習っとけばよかったぜ。

 せいぜい、車と銃くらいしか使えない。

 自衛隊に入っておけばよかったか?あ、俺、刺青あるんだわ。


「で、相手はどんな奴よ」


「・・・あのロマン様、あの、唯一、城の勇者を見た使者をさっき殺しましたが」


【んだこら!】


 シーン


「まあ、いい。これからブッコミだ、特攻隊長はお前やれ。銃を持たせてやるからの」


「は、はい」



 ☆


 ロマンたち50名は、ランドクルーザー型の車に分乗して、銃を撃ちながら、王城の門の前に来た。


「おら、落とし前つけてやる!勇者出てこい。姫を寄こしやがれ!」


 しかし、先頭の車が視界から消えた。


 ドサ!ガチャン!


 落とし穴がほってあったのだ。


 タキジロウの言では、


『いいかのう。車はジャンプできないのじゃ。基本舗装、道しか通れないのじゃ。オフロードタイプでも、大岩があれば無意識によけるのじゃ。そこを踏まえてほるのじゃ』


「本当だ」

 と遠くから、観戦していた穴を掘った村人はつぶやく。


 車列の最後尾にいたロマンは、


「よけろ!!」


 命令し、車は左右の草原に入る。


 プス、シュユゥウウーーーーーー


 車は草むらによけたが、そこには、鉄で作った逆木が植えこまれていた。


『いいかのう。車で一番、脆いのは足じゃ。あの車輪はのう。鉄の刃でパンクするのじゃ』


「パンクってこれのことか」

 また、遠くで見ていた鍛冶職人は納得する。


 車が動かなくなったら、隠れていた魔導士たちは、車に向かってファイヤーボールを放つ。


「「「ファイヤーボール!」」」


 ボオオオオーーーーーーー


 車に着火した。


『いいかのう。車は燃えるのじゃ。鉄じゃが、燃える血が流れているのじゃ』


「本当に燃えやがった。さあ、逃げるぞ!」


 魔導士たちは、付近に用意された豪に逃げ込む。


「ええい。自動車から、降りて、銃をぶっ放せ!」


 パン!パン!パン!パン!


 銃声が響くが、魔導士たちが逃げた先には、土嚢が積まれて出来た壁が1.2メートルぐらいの高さである。形は半円状だ。

 魔導士は飛び込む。

 中は穴が掘ってあり。いわゆるタコツボ陣地だ。


 プス!プス!


 壁は貫通しない。

 普通土を詰めた状態の土嚢は、横二個の厚さで5,56ミリ弾は、貫通しないとされる。


 そして、


 タキジロウは、


「ほお、これからは、騎士の出番じゃ。矢衾じゃ!」


 ドンドン!と見張り台から、太鼓をたたく。


 合図とともに、魔導士は、豪に鉄で出来た蓋をしめる。


「撃て!」


 およそ、300名の騎士が、一斉に弓を撃つ。

 個々を狙ってない。

 面制圧を狙ったものだ。


 グサ!グサ!グサ!


「「ギャアアアアーーーー」」


 ロマンは、

 部下を見捨てて、逃げ出した。


「「「やった――――――――」」」



 ☆洞窟


「はあ、はあ、はあ」


「あれ、親分、どうしたんですか?」


「いいから、金目の物を出せ!」


 パン!


 居残り組の金庫番のゴロツキを射殺して、逃げようとしたが、


 洞窟を出た瞬間、ふいに横から人影が現れ、


 グサ!


 銃剣でロマンの胸は突かれた。


「ウグ、ウ・・」


 ロマンたちが落としていった銃に、小刀を急遽取り付けたものだ。


「貴様、日本人じゃろ?面汚しが!自動車化部隊と機甲化部隊の違いが分からぬから、車が燃えるのじゃ!いいか?車で戦場に突っ込むのはイスラム国ぐらいじゃ!このド素人めが!」


「そんな話はもう、どうでもいい。仲間・・・だろ。こんな名前を付けた親が悪い・・名前と強面があっていないから、俺は・・・グレタ・・そうだ。回復術士を呼んでくれ、この世界であんたと手を組めば、国盗りだって・・」


 パン!


 タキジロウは銃剣が刺さったままの状態で、引き金を引いた。

 近距離の射撃なので、返り血を浴びる。


「グワッ!」

 プシュシュシュシュ―――


「フン、ワシじゃってな。ハンサムな顔に、タキジロウで苦労したんじゃわ。それにジロウってなんじゃ。次男ってすぐに分かるから、嫌な思いしたことあったのじゃ」


 と一人、軽口をたたく。


「タキジロウ殿!」

「タキジロウ様!」

 遠くから、タキジロウを呼ぶ声が聞こえる。


 フレデリカを筆頭に、王、王妃、王子、城兵たちが、車でロマンを追いかけたタキジロウの後を追って来たのだ。


「フフフフ、最近の異世界転生して来る。日本の若い者の後始末をするのが、これからのワシの定めじゃ」


 タキジロウは静かに去ったが、


「タキジロウ様!勝手にいなくならないで下さいませ!」

「タキジロウ殿!騎士団長になって下さい!」


 老人の足なので、すぐに追いつかれた。


「返り血ごときで、私たちが貴方を嫌うと思いますか?」

「あの、その、ええと~儂は」


「さあ、今日は宴でございます。タキジロウ様の異世界での生活を教えて下さりませ!」


「儂は、その~」

「さあ、お父様、今日はホロホロ鳥ですわ!」

「ああ、国庫を解放しようぞ!」



 ・・・・・


 この後、タキジロウの詳細は伝わっていない。

 一説には、異世界の騎士出身であると云われている。


 ただ、白髪、黒目の老人が、この国の中庭で、老メイドと一緒に、お茶を飲みながら、日向ぼっこをしている姿が、他国の使者に目撃されている。


 後年、この小さな国が、大国からも一目置かれるようになったのは、「タキジロウ教範」発祥の地だからだ。


 この世界で、軍事チート型のクズ勇者の被害が少ないのは、この小国発祥の「タキジロウ教範」なる本が冒険者ギルド、大国にまで出回っているおかげであると云う人も数多い。






最後までお読みいただき有難うございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ