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7 林太郎への文(ふみ)

 俺は、後から後から現出する、林太郎が舞う様に演武する古武道の真剣勝負を夢心地で見ていた。


 高弟達が代わる代わる色々な攻め方で林太郎に立ち向かう。林太郎はそれを完璧な技で破って勝つのだ。カメラマンは必至になってその様を記録していた。



 俺達は林太郎のバイクで二十四日の夕方、北越のログハウスに帰ってきた。

 前の日の印可の授与が終わった後、宴会で林太郎は稽古仲間の祝福を受けた。

 特に最初に破られた高田は、あいつを『若先生』と呼び盛んに盛り立てていた。道場に頻繁に来る様懇願していた。


 俺がシャワーから出ると先に入ったガウン姿の林太郎が手紙を読んでいた。まだ濡れた緑の髪(艶のある黒髪の古い表現)に長い睫毛。

「何だ?それ、手紙?」

 林太郎ははっとして俺を見た。何か怪しい。

 待っていると、林太郎はおずおずとそれを俺に渡した。


「林太郎若先生

 私は若先生に惚れました。あの合撃で打ち負けた時、もっときつく叩いて欲しかった(笑

 若先生は兵庫介、連也の再来です!若先生のためなら火の中水の中、厭いません!死ねと言って下さい!どうか、道場に沢山来て私を叩いて(爆)、いや、ご教示ください!

 頓首頓首     高田三之丞

 電話 ・・・・」


「・・・何だこれ、ラブレターか!」

 林太郎は真っ赤になって、

「ち・・・違うだろ!高田さんはそんな・・・ふざけているだけだろ」

 俺は意地悪く笑って、

「じゃ、ファンレターということにしておこう」

 林太郎は俺を下から上目で見つめ直した。

 あの道場での厳しい表情ではなく、女性の様な悩ましい目つきで。

 そして俺に質問した。

「・・・心配だった?」

 俺は、膝を崩して座る林太郎の前に立ったままで答えた。

「当たり前だろ・・・凄い緊張感で、本当に戦っている様だった」

 あいつは目を降ろして、しばらく黙っていたが、

「・・・本当に戦っていたんだ」

「・・・」

「竹刀だから真剣勝負じゃないなんて新陰流にはあり得ないんだ。真剣を持っても同じ事が起こらなきゃ、ならないんだ・・・」



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