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1 カリフォルニアから

・俺(角南大介)

 小説家。学生の頃林太郎と会い、一目惚れする。男色家という分けでもなく、林太郎一途である。林太郎と一時別れた時に書いた歴史小説で、自分と林太郎を古武士と少年刺客に置き換えて、契りの物語を描いた。後に林太郎の努力でハリウッドの有名監督に映画化された。


・柳生林太郎

 新陰流の師範を祖父に持つ美しい少年天才サッカー選手だった。晩稲で中性的な肉体の徴候を持つ。大学の頃、大介の下宿で犯されたが、その純情にほだされて恋仲となった。しかし心のどこかで大介を憎む心を持ち、愛情とのジレンマに苦しむ。怪我でサッカーを諦めた後、大介の小説の映画化を実現し、その主人公、少年刺客の役を演じ世界的スターになった。しかし大介が行方を眩ませたため、その一作で引退した。その後、シンガーに転じ、大介を捜し出しよりを戻した。


 この物語は、大介と林太郎がお互いの愛を再認識した後の話である。通常は、林太郎はカリフォルニアで歌手として活動し、大介は日本の北越のログハウスで執筆活動を続けている。

「大介、クリスマス・プレゼントに何が良い?」


 スカイプのイヤホンからあいつの弾ける様な声で質問が来た。俺はパソコンの会議ソフトのアイコンをクリックする。

 あいつの顔が画面に出た。あいつの背後に写る部屋はカリフォルニアの朝の光に満ちている。日本の北越のログハウスにいる俺は夜の9時の帳の中だ。俺は画面のあいつを指さしながら言った。

「お・ま・え!」

 画面の中のあいつが微笑む。

「じゃ、クリスマス・イブにそっちに行く」

「もっと早く来れないのか?」

 あいつが少し済まなそうな顔をして、

「爺ちゃんの具合が悪いんだ・・・」

「え・・・そうなのか?!」

「うん・・・それで動けなくなる前に、印可を受けてくれって言うんだ」

「印可・・・新陰流のか?」


 印可とは、武芸などでその流儀を極めた者に贈られる許可状の様なものだ。

 あいつの家は代々、柳生新陰流の主家を助ける師範だった。祖先は江戸末期に本家である柳生家より別れ分家となり、二百年の間、主家の陰日向になり武道において補佐してきたのだ。現在の主家は名古屋で道統を継いでおり、林太郎の家は関東のまとめ役となっている。

 林太郎は六歳のころから祖父の薫陶を受けたそうだ。相当の腕になっている。だが持ち前の運動神経で、サッカーに熱中して祖父をやきもきさせていたのだ。


「爺様を安心させてやれば・・・」

 画面の中の林太郎は頷いた。

「大介も来いよ。新陰流の奥義を見たいだろ?」

「え・・・見たい!でも、秘伝じゃないのか?」

「今時、秘伝もないよ。高弟達を納得させるには、その目の前で力を見せる必要があるんだ。おまいは研究家ということで、参観を爺ちゃんにお願いして見る」



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