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レオル 〜裏切りの亜人王〜  作者: ヤマ蔵
1章 回帰と決意。
9/40

8話

陽は昇り・・・


手枷を着けられた亜人2人、レオルとガルムは馬車の荷台に乗せられ、沈黙を保っていた


それを後方から見ているリックは、ギルバートの耳元へと近付く


「何か分かりました?」

「何の話だ?」

「え?見張ってたんですよね?」

「・・・亜人の長は俺の存在に気付いていた」

「はい?嘘でしょ?」


(俺が下級竜人に近付いたときは気付いて無かったように見えたけど・・・)


「あぁ。あいつが何を話していたところで無意味。変に考察の幅が広がるのを恐れて盗聴はやめた」

「またまた。『誰かいるかも』って警戒されてただけじゃないんですか?」

「・・・」

「・・・はいはい、もうやめますよ」



「・・・」


レオルは後ろで拘束された両手を見ようとするも、見張りの女性騎士が睨んでいるのが目に入り、慌てて目を泳がせる


殺戮の犯人は俺たちと信じて止まない目、といったところか


ん?


ふと、ガルムを見る。

不安がピークに達したのか視線を下方に向け、身体を小刻みに震わせている


必ず帰してやると言ったが・・・

ギルバートは帰す気が無いとすれば、逃げれる自信は正直無い。

これ以上無責任な言葉を並べるのも気が引ける。

ギルバートを信じるしか無い今、なんと言葉をかけてやればよいか・・・


「キング」

「ん?」

「目的は聞きましたが、もし上手くいかなかったら・・・」

「?」

「俺が囮になります。その隙に逃げて下さい。それしか役に立てませんから・・・」


ガルムを睨むレオル。

レオルの表情が理解出来なかったガルムは自分の発言を振り返り、誤りは無い、と首を傾げる


「俺はお前たちをまとめる立場にある。そのため、皆俺のことを【キング】と呼ぶのだろうが、正直その呼び名は嫌っている」

「え?」


だよね。

前世はなんか気に入ってた感覚があるかも。


唐突の話に、慌てて思考を整理するガルム


「仮に俺を人間の立場での【王】としよう。王とはたしかに守られる存在だ。しかしまた、【民】を守るべき存在でもある。だが、絶対的存在の王と民、守られるべき優先度という話になれば一般的な答えは前者だ。お前の犠牲心も誉められたものだろう」

「??」

「俺は王じゃない。目標へ向かう道を共にする、1人の仲間だ」

「っ!」


ガルムは睨まれた理由と、今の話が自分の発言に対してだということを理解し、しばらくレオルの横顔を見つめるのだった


「亜人」


1人の騎士がたまらず声をかける


「コソコソとしゃべるな」

「む・・・悪い」

「す、すいません」

「次は隊長に報告する」

「あぁ」

「・・・」


(やけに素直だな。やはり何か考えてるのか?)


立ち止まる騎士団一行


ギルバートはレオルたちが乗る馬車に近付き、見張りの騎士たちへ合図した


「降りろ」


騎士の1人が顎で指示するのを見て、レオルとガルムは重い腰を上げる


降りた先へ視線を向けると、雑だが人工的に作られたであろう石階段が目に入った

真っ直ぐな造りでは無いため、階段の終わりは見えない


「ひとつ、いいですか?」


とても小さな声だが、先ほどとは違うジェイの雰囲気に目を丸くするレオル


「どうした?」

「先程の言葉を聞き、意見したい部分があって」

「む?」

「キングは最初、何があっても帰してくれるとおっしゃいました」


聞いてた?

キングの呼び名、嫌いって言ったよね?


って、もしかして逃げれないの気付いた?

いやぁ、でも本当にギルバート相手に逃げるのは無理だし・・・

全力で抑えるは抑えるが・・・


もう開き直って謝るか?

よしっ


「仲間、なんですよね?」

「へっ?」

「キングのその言葉には犠牲心を感じます。俺がさっき言ったような・・・」

「!」

「必要だと言ってくれて嬉しかったんです。巻き込まれたなんてこれっぽっちも思ってません。だから・・・言わせて下さい」

「ガルム・・・」

「一緒に、生きて帰りましょう」


目を見開くレオル


馬鹿だ・・・俺は


「す、すいません。いきなり生意気でしたね・・・」

「お前の言う通りだ」

「え?」

「力を貸してくれ。もしもの状況が来たら、その時は力を合わせよう」

「・・・はい!」


互いに笑う亜人の2人。

それを横目にギルバートは反応を見せず、口を開いた


「例の集落はもう目の前だが、これより先は馬車での移動は不可能。徒歩で行く」

「了解」

「了解致しました」

「万が一に備え、コイツらは俺が見張る」


“万が一”の言葉に疑問を持つ、【エイミー】という名の女性騎士

副隊長のリックがリアクションをしなかったことで、更にその疑いを深めた


(隊長の強さは数少ない聖クラス。万が一など無い、と、リック副隊長なら半笑いで言い返すと思ってたのに・・・)


はっ、とするエイミー


--------------------------


『すまん、君しか思いつかなかった』


ため息をつく初老の男性


『え?』

『ギルバートから頼まれてな。戦闘魔法に長けた調査団員を1人貸してくれ、って』

『ギルバート・・・第一部隊の部隊長?』

『そう、変だろ?調査という名目で第一部隊が同行すること、調査団に戦闘力を要求することがさ』

『え、えぇ。そうですね』

『第一部隊と同等の戦闘力を持つ人員など調査団にいるはずがない。けど1人誰か、と言われたら・・・ね』

『・・・』

『で、任務の内容なんだが・・・』


--------------------------


(そうだった・・・)


ガルムの背中を見る女性騎士団員、エイミー


(人間に対して恐れを感じている亜人の1人・・・、とても演技には見えない)


続けてレオルの背中へと視線を移す


(堂々としているが、覇気が無い。しかし、第一部隊の責任者2人は最大限の警戒をしているように見える。何か・・・ある?)


エイミーはため息をつき、今度は2人をまとめて視界に入れた


(ギルバート部隊長には断ってもいいと言われたけど・・・私も帝国騎士の一員。危険だからという理由で断るわけにはいかない。それより・・・私は研究が好きで、発見や開発で国に貢献することに生き甲斐を感じている。そして、調べたくても調べることが出来なかった素材・・・。それが目の前にいる。“亜人”・・・という研究材料が)


「結構足場が悪いな」

「幅も比較的狭い。鎧着てると体力と神経が削られてしんどいよ・・・」

「だな。そういや場所は鉱石業と聞いたが、帝国へどのようにして運ぶんだろうか」

「背負って、らしいぜ?」

「え、嘘だろ・・・?」

「まぁ平地まで来たらさすがに馬車を使うだろうけど」


(第一部隊ってこんなおしゃべりなの?もっと亜人を警戒し・・・っ!?)


会話を聞いていたエイミーは気を取られ、階段の端を踏んでしまいバランスを崩す


「きゃっ」


後方に強く踏み込んだ石階段は運悪くズレ、そのまま転落へと向かった


1番後ろにいたこともあり、誰もが反応に遅れる


「・・・!」


いち早く気付いたギルバートはエイミーの転落を阻止するために向かうも、間に合わないことを瞬時に把握し、歯を食いしばった


(無理か!?・・・くそっ!)


そして


目の前の出来事にギルバートは動きを止める


「・・・」


何故か転落を免れ、天を仰いでいる自分に疑問を抱くエイミー


「あ、れ?」

「はぁ、はぁ。間に・・・あった」

「っ!あなた・・・」


ギルバート、リック、レオルの目に、ジェイの脚によってエイミーが支えられている光景が映った


(馬鹿な。この不安定な足場であの位置から?)


・・・


でかした!ガルム!


さすがの瞬発力・・・

どうやら奴から逃げれ無いというのは俺だけの話かもしれん。

この不安定な場所での正確で俊敏な動き。


あっ


初めて知った?

いや、知っていたが、深く知ろうとしてなかったか・・・


「もう大丈夫だから。その脚を・・・どけて」

「え?あっ、ごめん」


(なんであなたが謝るの)


そっと押し戻され、距離を取るエイミー。

そして、悲しそうな表情のガルムを見て心を傷める


「大丈夫か?」

「た、隊長。すいません・・・」

「危なかったな」

「は、はい・・・」

「気をつけろ。ただの不注意で不幸を起こすのは許さんぞ」

「申し訳ありません」


俯くガルムに近付くレオル


「良くやった」

「キング・・・」

「最悪の事態になれば調査どころじゃ無かったからな・・・」

「・・・」

「ガルム?」

「助けても、あんなに嫌な顔をされたら・・・ちょっと」


なるほど

よし、ここは・・・


「人間はな」

「・・・?」

「脚で何かをされることに不快感を持つことが多い」

「そう、なんですか?」

「うむ」

「でも、両手が使えてたら手で支えましたよ」

「そう。それはあの女騎士も分かっている」


よし、ここだ


「お前、脚臭いから」

「・・・」

「がははっ!冗だ・・・あれ?」

「・・・俺の脚、臭かったのか」


馬鹿な。嘘だ。

確かこれは必殺の・・・


あっ!!


レオルの脳裏に、顔も名前もわからない人物の記憶が蘇る


--------------------------


“レオル、少し臭いますよ?”

“えっ”


マジか・・・。

先程水浴びをしたばかりだが、甘かったか?


“・・・もう一回水に浸かってくる”


後ろから抱きつかれる感触


“あっ、冗談ですって。悲しそうな顔しないで”

“冗談?なんだそれは”

“元気つけるための必殺技だそうですが・・・おかしいな、あの方に試したときはとても笑ってくれたのに・・・”

“・・・”

“ごめんなさい。本当に臭くなんか・・・”

“な、なーんてなっ!俺も冗談だ!”

“むむっ”

“お前の困り顔が見たかったのだ!あー、愉快愉快”

“これは一本取られましたね・・・”


--------------------------


思い出した。

俺も冗談とやらを言われて・・・


本気で傷付いたんだっけ

エイミー

帝国騎士団、調査班所属

158cm、47kg、21歳

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