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レオル 〜裏切りの亜人王〜  作者: ヤマ蔵
1章 回帰と決意。
7/40

6話

鈴虫の鳴き声が響く森。

暗闇を照らす焚き火・・・


その焚き火を囲む数十の影。

その中心にリザードマン、グリウスの姿があった


「話は以上。意見のある者は?」


しん、とする場


(難しいか。あのキングが、無実の証明に単身で帝都へ向かったなどと信じる者は・・・)


「あの・・・」

「っ!! な、なんだ?」

「・・・」

「キングは俺たちの居場所を見つけるために活動しています。だから俺たちも信じてついて来ました」

「あ、あぁ」

「でも、最近は力を示すとか、弱さを見せないためにとか、人間との争いを考えているような発言が多かった。まるで・・・友好なんてどうでもいいような・・・」

「・・・っ」

「だから、いきなり無実を証明に行くなんて・・・。どういう考えなのでしょうか」

「それは!・・・皆のために!」

「無実を証明したら、何が変わるんですか?」

「っ!」


(確かに。無実を証明したところで何か変わるのかと言われれば・・・答えれない)


「あの・・・キングは、自分だけ人間に認められようと・・・してませんよね?俺たちを見捨ててでも・・・」

「なっ、馬鹿を・・・!」


背筋に電流が流れる感覚


違う。

そんな簡単な否定すら声に出ない


考えもしなかった予想。

いや、容易に出来た予想でもある


《あり得る》


そう、直感的に思えてしまったグリウスは頭を抱えた


「ま、マジかよ」

「今までキングのいう通りにしてきたのに!」

「俺たちを役立たずとして捨てる気なのか!?」


(やめてくれ・・・頭が、おかしくなる)


「キングの強さなら・・・可能性は低いが、人間に認められてもおかしくないかも・・・」

「俺たち、魔法で一掃される?はは、はははっ」

「ここはバレてますよ!グリウスさん!早くこの場を離れたほうが良いのでは!?」


(どうする・・・どうすれば・・・)


ふと、木に寄りかかる幼いダークエルフ、ルカの横顔が目に映った。

同時に今日起こった数々の出来事が脳裏に浮かぶ


(馬鹿だな私は。キングを信じ、あなたが帰るまでこの子たちを守ると誓ったばかりなのに)


「聞け」


低く、重い声質。

呟きに近い発言だったが、ざわついた周りを沈ませる一言であった


「今まで様々な困難から我々を救ってきたのは誰だ?」

「・・・!」


静かになる一同


「その時、キングの目や背中を見てきただろう。きつい言葉を並べても、お前たちを守る姿はどのように映っていた?」

「・・・うっ」


皆が脳裏に浮かべるのは魔獣との戦闘時、レオルが放っていた言葉。


弱者と罵られ、勝利しても戦闘で傷付いた身体を労らってくれない。



しかし・・・



最後には、自身が傷付いても必ず仲間を庇って命を救ってくれていた。


「キングが別れ際に見せた目は・・・私たちを守る目そのものだった。誓ってもいい」


完全に黙る一同。

その様子を見て、グリウスは小さく息を吐いた


(ふぅ。ん・・・?)


新しく現れる影に視線を移すグリウス


「誰だ?」


影の正体は黒豹型の亜人、ジェイだった


「・・・」

「集会には顔を出せと言っただろう」

「帝都の様子を見てきた」

「何?」

「キングがひと暴れするんじゃないか、ってね」


【ひと暴れ】という言葉に反応する亜人たち。

落ち着き始めた空気が一変し、不穏な空気へと戻っていく


「え?まさか、そっち?」

「諦めたのは本当で、帝国で一矢報いるためにわざと捕まった?」


(ジェイ、余計なことを・・・!)


「ガルムとハークスを連れて見に行ったんだが・・・」


ジェイの横で身体を震わす鳥類の亜人、ハークス


(ん?ガルムの姿が見えないが? )


ハークスの違和感ある様子も重なり、冷や汗を流すグリウス


「ガルムはどうした?」

「・・・」

「ま、まさか」


黙り込むジェイでは埒があかないと悟ったグリウスは、隣のハークスへ歩み寄り、両肩を押さえた


「何があった!?」

「あ、あの・・・その・・・」

「ハークス!」

「ひっ!私は、け、結構離れていたんですが・・・ギルバートとかいう、帝国騎士・・・が、いきなりやってきて・・・」


(ギルバートだと?今日現れた騎士が名乗ってたのも確か・・・)


「連れて・・・いかれました」

「!?」


ジェイに詰め寄るグリウス


「何故そんなに冷静でいられる?仲間が・・・」

「キングがガルムを巻き込んだ」

「え?」


グリウスは自分よりも早く反応したハークスへ視線を向ける


「ハークスは遠くから見てた。話の内容は聞こえちゃいない」

「・・・この反応はそのようだな」

「さて・・・本題だが、キングは身内の情報をベラベラ喋ったみたいだぜ?」

「待て。何故分かる」


-------------


『狼、灰色の獣毛・・・君がガルムだな』


-------------


「奴の最初の言葉はこうだった」


(知らないはずのガルムの名を?)


「それでよ、聞いたらレオルが指名したらしいじゃねーか。何故ガルムなのか知らねーがな・・・」

「・・・?」


一瞬、悲しそうな顔をしたジェイに首を捻るグリウス


「俺の今の態度はキングに対しての呆れ、さ」

「・・・」

「連れて行かれたのは俺の責任でもあるが・・・キングは誇りを忘れ仲間を巻き込んだ。グリウス、アイツは終わりだぜ」


ニヤつくグリウス。

その様子を見て、ジェイは顔を歪める


「安心したよ」

「聞き間違いか?」


無言のまま表情の変わらないグリウスに、たまらず胸ぐらを掴むジェイ


「どういう意味だ?」

「ガルムには申し訳ないが、あの子は気が弱くて戦闘でも光るものが無い。何より、優しい」

「はぁ?」

「少なくとも、争いを企むという線は消えた」

「・・・ちっ」


ワケが分からないまま、グリウスの微笑みにジェイはゆっくりと手を離す。


「信じるんだ。もう馬鹿な真似はよせ」

「信じる・・・?」


ジェイの脳裏にとある映像が映し出される。


--------------------------


『そん・・・な』

『素直に言うことを聞いたほうがいい。お前たちでは俺に勝てん』

『ジェイさん。俺、行きます・・・。奴の言う通り勝てない。そんな気がします・・・!』

『馬鹿言え!連れ去られる仲間をただ見送るかよ!』

『・・・心配するな。連れて行く奴は上に報告しない。お前たちの長が目的を果たせたら、そいつだけは必ず返すと約束する』

『っ・・・』


--------------------------


(必ず、だと?人間の・・・人間の言うことなんか信じられるかよ。どっちにしろ殺すつもりだ!)


ギルバートとの対面時、膝が震えていたことを思い出すジェイ


(くそっ、俺は何もできなかった・・・)


(レオル。何故お前は俺を・・・)


---------------------------------------------------------------------------


~帝都・グリンベルト城・地下牢入り口~


狼型の亜人、ガルムを見て顔を歪めるリック


「えっと・・・明日の朝一、って話じゃ無かったですか?」

「気配を感じて巡回してたらたまたまソイツがいた」

「いやいや、色々マズいでしょ。総帥に話を通さない方向もアレなのに・・・。朝迎えに行ってそのままこっそり、って話だったじゃないですか〜」

「黙れ。手間が省けただろ」


両手を縛られたガルム。

その後ろで口論するギルバートとリックを横目に不安の表情を浮かべた



「はぁ・・・。というか、隊長?」

「なんだ」

「なんであの獅子顔の言うこと、聞いてやるんです?」


歩みを止めるギルバート


「・・・」

「俺たちにひと泡吹かせるための要員で、何か起こされたら強制退役じゃすまないですよ?」

「それは無い。まだガキで実力も無い」

「言い切っちゃった」

「・・・おい」


突然の問い掛けに背筋を伸ばすガルム


「お、俺ですか?な、なな、なんです?」

「まずは拘束せざるを得ない状況を謝る。それと、何故お前がここにいるか説明したな?」

「は、はぁ・・・」


ギルバートは一息をついてリックへと視線を戻す


「見たろ」

「え?いや、何を?」

「何も知らない顔だ。奴がここに来れた場合の作戦があるなら、予めコイツにも話は通っているはず」

「演技、って言葉・・・知ってます?」


返事しないギルバートにため息をつくリック


「で、この亜人、一人だったんですか?」

「いや3人いた」


ガルムはピクっ、と尻尾を伸ばす


(まさか・・・あの遠くにいたハークスさんに気付いてたのか?)


「よく連れてこれましたね。まさか・・・」

「お前が思っているようなことはしてない。お前たちの長が目的を果たせたら返すと約束したら素直に・・・とは言えんが引いてくれたよ」


(ますます怪しいだろっ。獅子顔の指名する奴がそこにいた時点で怪しすぎるって)


「リック」

「え、あ、はい?」

「何故奴の言うことを聞くのか、と言ったな」

「はい」

「理由は2つ」


ガルムに「歩け」と顎で指示し、歩き出すギルバート。

それに合わせ、歩み始めるリック


「俺は、亜人、人間に限らず悪は躊躇なく斬る」

(嘘だぁ。亜人は特別っしょ?)

「そのため、あの事件の犯人をなんとしても突き止めたい」

「亜人の力を借りてでも・・・ですか?」

「そうだ」


リックは突然放つギルバートの雰囲気に、冷や汗を流した


「コイツらが何か企む?もしそうなら逆に好都合だ。俺は喜んで獅子顔の仲間を殲滅し、総帥の機嫌取りをするよ」

「・・・」

「小細工が通用すると思ったら大間違いだ。だから、ある程度の行動を許せばボロが出るのも早まる。そう思ったのさ」


ギルバートの異様な雰囲気に震えるガルム


(キングは、何かを企んでいるのか?。でも、いくらキングでもこの人には・・・)


「2つ目は?」

「・・・」


重い空気が一転したことに、リックは首を傾げる


「・・・ロイドが奴に石をぶつけたとき」

(息子さん?・・・あぁ昼の一件か)

「奴の顔を見た・・・」


思い出そうとするリック


「あの目、とても人間を憎んでいる奴の目じゃない」

「 っっ」

「悲しみに満ちた・・・目だ」


リックはギルバートの言葉で、そのときのレオルの表情を完全に思い出した


-------------


『帝国人は皆、亜人を憎んでいるのか?』


-------------


「人間を憎むなら、咄嗟に見せる目ではなかった」

「・・・」

「奴が共存のため本気に考えを改めた。ならばその本気がどこまで続くのか見てみたい。そんな気持ちが心のどこかに生まれてるのかもしれんな・・・」



会話が終了し、しばらく無言で歩く3人

ひとつの牢とその中の大きな影が視界に入ってくる


「ガルム!?ど、どうして・・・?」

「お前が連れて来いと言ったんだろ。なんだその顔は」

「そ、そうだが、話では明日だったじゃないか」

「キング・・・」


隣の牢にガルムを入れる準備を始めたギルバート


「何故隣・・・と、聞かないんだな」

「突っ込んでほしいんすか?はぁ。ここまで来たら既に同犯ですからね。もう好きにしてください」

「・・・」



気まずそうに見合うレオルとガルム


そして、2人は同時に目を逸らすのだった

ガルム

14歳

狼型、亜人

獣毛色:灰色

173cm、58kg

人1:9獣


ハークス

17歳

鳥型、亜人

羽毛色:茶色

157cm、42kg

人2:8獣

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