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レオル 〜裏切りの亜人王〜  作者: ヤマ蔵
1章 回帰と決意。
3/40

2話

「話し合う・・・だと?」


ジェイの言葉にゆっくり頷くグリウス。


今から訪れる訪問者、“人間”と話し合うこと


『話し合いが必要』


聞こえは普通の提案。

しかし、そこに決意に満ちた表情が加わる理由は“自分”にある。


それは・・・俺に対する“恐怖”。


こう表現してよいのか分からないが・・・

“かつての”俺は亜人を目の敵にする人間を拒絶していた。


いや、拒絶するようになっていった・・・


俺たちは皆、同じ目的を持つ集まり。

その目的とは・・・

亜人としてでは無く、自分たちは人間と同じであると認めてもらうことだ。

同じ・・・意思を持つ存在として。


だが・・・


無慈悲な立ち退き命令。

逆らえば実力行使。

傷つけられ、殺められたとしても大した罪にも問われない。

力に立ち向かおうものなら圧倒的な数と統一された組織力で簡単に一掃される。


共存が最終的な望みだが・・・

亜人と共存するメリットは彼らにとって無い。

その上、少しでも支障となる存在であれば尚更だ。

直接言わずとも、皆次第にそう感じていったはず。


絶望。


俺は・・・仲間の絶望に満ちた目を見るたび、言葉にできない恐怖を感じるようになり、信じて付いてきた仲間に突き放すような態度を取っていく。


いつしか人間に対する感情は“憎しみ”。

そして・・・認識は“敵”へと変わっていた。


《人間に抗って死ぬか。俺の元を離れて魔獣に食われるか》


恐怖で仲間を支配。


あれは理不尽・・・との言葉では片付けられないな。


たが・・・

俺は愚かだった、と、後に気付くことになる。


憎むべき人間・・・


一部の人間に対して受けた扱いで、全ての人間がそうであると思い込んでしまった。


安住の地を求める内に様々な人間と出会い、自分が間違っていたこと、取り返しのつかないことをしたこと、仲間は貴重な宝ということ・・・


それを気付かせてくれたのは皮肉にも人間だった。


分かり合える人間は・・・いた。

共存は夢物語では無かったのだ。


生きてきた中で最も後悔をした。

自分自身で仲間を失うきっかけを作っていたと考えず、人間のせいにしていたんだと。


だからこそ覚えている。

この場面は、恐怖支配の頂点に至る時期・・・


そう。

グリウスは、怒号を交えた反論に身構えている。


むぅ。

ではどう返せばいいものか・・・

確かにグリウスの言う通り、話し合いが出来るのならそうしたい。


だが、自分が招いた状況とも言えるこの場で、話し合いに応じてくれるとは思えん。


いきなり大人しくなれば、人間にも仲間にも怪しまれるだけ・・・

いや、別にいいのか?

グリウスが死ぬよりかは・・・


んー、分からん。

ここはとりあえずあの頃と変わらない態度で切り抜けて・・・その後落ち着こう。


「ゴホン」

「(ビクッ)」

「何を話せばいいのだ」

「・・・くっ」


冷や汗を流すグリウス。

(やはり、もうキングの意思は固いか・・・!)


「戦えば勝ち目はありません!我々に残されてるのは対話しか無いのです!」

「え?」


あれ?

いやいや、そうじゃなくて話す内容の提案・・・


「ちっ。何を言い出すかと思えば・・・。キング、グリウスの言葉に耳を傾けるな。どうせ奴らは聞く耳を持たん」


あ、どうしよ。これ。


「まずは敵意が無いことを示し、彼らがやってきた理由をとりあえず聞きましょう!」

「・・・時間の無駄だ。キング、俺は戦えるメンツを集めてくる」


「・・・無駄だ」


レオルの言葉に絶望し、地面に膝をつくグリウス。

ジェイはそれを横目に鼻で笑った。


「待て」

「・・・」

「ジェイ、お前に言ってる」

「「!?」」

「勝ち目は無い。皆を巻き込むな」

「レオル?・・てめー」


睨むジェイを無視するレオル。


「グリウス」

「は、はいっ」

「お前の言う通り、戦いは無謀。逃げることも出来んだろうな」

「・・・キング?」


色々と思い出してきたぞ。

ここで俺は人間からとある容疑をかけられ、理性を失い・・・戦闘になった。


グリウス含め、多くの仲間が死ぬ


ふむ

そうだな・・・


「敵意はもちろん出さない。しかし、理不尽に奴らが襲ってきたらどうする?」

「それは・・・」

「対処は無理だ。だが・・・」

「?」

「時間は稼げる」


目を見開くグリウスとジェイ


「俺が話をする。念の為、その間に仲間を連れてここを離れろ」

「正気か!?」

「いつもより数が多いのだろう?ジェイの読み通り、今回は何かあると踏んだ方が良い」


そう。奴らにとって亜人は未知となる部分が多い。本来は戦いを避けたいはず。

今までは俺たちを追い払うために、脅しだけで終わっていた。

この場面に対する前回の対面はあまり覚えてないが、状況から今回は本気ということだろう。


再び脳裏へと蘇る、血だらけで横たわるグリウスの映像。


そうだ・・・

今は余計な考えはいらない。


この時間の遡りが本物であれば、俺のせいでこれから帝国軍との戦闘が始まる。

そして、仲間の多くが死ぬ。

だからそれを回避出来る、出来ないに関わらず、前と違う行動を取らなければいけない。


上手くいけば良いが・・・


「き、キング!」

「?」


息を切らしながら走ってくる仲間の1人


「帝国軍が俺たちの長と話がしたいと・・・」


息をのむレオル


そして・・・


先程グリウスが見せた、決意の表情と同等の眼差しを前方に向けるのだった



もうこれは夢じゃない


だが・・・


本当に、何故時が戻ったのだ?


-------------------------------------

「隊長」

「ん?」

「ひとつ、聞いても?」


腕を組む人物、無精髭を生やした青年は振り返らずに頷く


「亜人共と会うだけなのに、この数を揃える理由は?」


数とは隊員の人数を示す

いつもより多いと違和感を持っていた隊員のひとりが、我慢できず隊長へ問い詰めた


「ブリーフィングの内容、聞いてたか?」

「?」

「覚えてないのかよ」

「い、いやそんなわけ」

「ならそれ以上話す必要はない」

「分かりましたよ、もぅ」


ため息をつく金髪の隊員


(内容・・・か)

--------------------------

-------------


〜数時間前〜


『今回の任務は襲われた小さな集落、ゼイユの調査。そこで得た情報を元に行う』


配られた資料に目を通す隊員たち


『これは・・・』

『むごい。無抵抗の人間を・・・』

『全て急所をひと突き・・・』


無精髭を生やした男性は、ある程度の時間を置いて再び口を開いた


『一部抵抗した跡はあるが、誰一人逃げた痕跡は無い。夜間の睡眠時を襲う複数による計画的な犯行。それに統率性を感じる上、誰1人として村人は死体を発見するまで凶行に気付いていない。魔獣の可能性は無いと言ってもいい。・・・それと』

『隊長』

『なんだ、リック』

『犯人の居場所が分かってコンタクトする、って話ですよね。相手の正体が分かってるんですか?』

『ったく、最後まで話を聞け。そうだ』


一息をつく部隊長


『あそこは鉱石業が盛んな地域。もちろん、ゼイユもそのひとつ。いい値で売られるような鉱石がたくさんあるにもかかわらず、盗まれたのは家畜と食糧のみ。夜間の犯行かつ、誰1人犯行時の音と悲鳴を聞いて睡眠から目を覚ましてない。世に影響がある人物や物を狙った政治的攻撃でも無い。もう分かるな?』

『?』

『消去法さ。計画性、統率性、目的、盗られた物・・・奴らしかいない』

『・・・』


『やはりお前らは・・・人間を・・・』



-------------

--------------------------

---------------------------------------


「亜人・・・」


金髪の騎士は何かを思い出すよう、視線を上に向けた


今まで彼らとは何度か会ったことがある・・・


だが、交流では無い


家畜泥棒、商人の物資強奪、資源の無断採取・・・

容疑がかかって取り調べをよく行なっていた


容疑は今回に比べたら小さな犯罪ばかり。

それに、証拠は無く今まで罪を暴くことが出来なかったが・・・

隊長の推測におかしな点は見つからない。


・・・

だが、何か引っかかる



(そんなリスクを犯してまで、少量の食料を奪うか? 殺人のリスクが分からない程、奴らは馬鹿に見えないが・・・)



「どうした?もしかして、亜人が怖いとか?」


突然の声に背筋を伸ばす金髪の騎士


「・・・んなわけ」

「まぁ、あちらさんが開き直って仕掛けてくる可能性が大いにあるぞ」

「まさか。口だけ達者で腰の引けた連中が、ですか?」

「ははは・・・」


部隊長が歩みを止め、行進が止まる帝国騎士団


「また・・・人間を殺めたんだ。とことん問い詰めるさ」

「・・・」


(また・・・か)


「いや、なんでも」

「はぁ。あ、それよりこの人数集めた理由を・・・」


手で話を遮る部隊長


目の前には白獅子と竜人が存在していた

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