~君には好きといえなくても~
吾妻瑞稀
高一の冬、私、吾妻瑞稀は曇天の空の下地面を見つめながらこれから通うことになる塾へと歩いていた。私は気分が重かった。
私が通う茨田高校はどの部活も盛んで校訓には文武両道が掲げられている。しかし私は弓道部に所属しているが、一回も目立った成績を収めたことは無い。なぜなら私は内気な性格だからだ。小学二年生で事故にあい、そこから人と目が合わせるのが怖くなった。両親はそれについて理解してくれないし、私自身後々困ることは自覚していた。私は昔から他人によく思われようと必死だった。他人の評価が怖かったからだ。そして、意見を持つことさえ怖くなった。自分が提案することによって人が傷つく。なぜかは根拠はなかったが考えることでもっと内気になるのではないかといつも怯えていた。そしていつしか私はいつでも最悪な方向に捉えるようになってしまった。
塾の入口前に来た私は軽く深呼吸をした。よし、入るぞっ…!足を踏み入れようとした瞬間、誰かが肩をぶつけてきた。「ったく、いてーな!入るならさっさと入れよ!」と学ランを着た男子高校生は言い放ち塾に入っていった。こんな人が塾にいるのかと思うと入るのが怖くなった。
塾に入ると先生が教室へ案内してくれた。緊張で前を向けなかった私は当然みんなの顔なんて見えてない。私は気を紛らわすために弓道の本を読もうとした。そのとき、本を落としてしまい拾おうとしたが前の席の人の机の下に落ちてしまった。どうしよ…と焦っていると、前の人が気づいてくれたからか拾って「ちっ、お前弓道部なのかよ」と聞かれ思わず目を合わせてしまった。目の前にはさっきの男子高校生がいた。