ヌメロアン
「心の底から不本意だけど、私とアンタは『ヌメロアン』によって繋げられているわ。」
そう言って自分の左腕の皮を軽く抓る少女。
彼女の言葉通り、何故か僕の左腕にも抓られた感覚が奔る。
「そ、そんな…まさか…本当に…?」
嘘だと言って欲しい、そんな思いで彼女に問う。
「…私だって信じたくないわよ。でも、間違いなく何者かが私とアンタに呪術を使ってるわ。」
そう言うと、苛立ちを隠さずに大きく溜息を吐く少女。
「今のところ、痛覚以外の感覚をどこまで共有しているのかまでは分からない。でも、この『ヌメロアン』の呪いが厄介なのは、受呪者の一方が死ねば、もう一方も死ぬってところよ。」
彼女の言葉を聞き、さーっ、と血の気が引いていくのが分かる。
「どうすれば…呪いを解くにはどうするんだよ!?」
あまりにも理不尽過ぎる状況に、無意識に言葉が強くなった。
「簡単よ。呪いの元を消す…つまり、この呪いを掛けた呪術者を消せばいいのよ。」
そう言う彼女だが、その表情は暗い。
「まあ、誰が呪術者でどこにいるのか分かればだけど…」
そうなるよね…
「心当たりはないの?」
そう問う僕。
「無い…訳じゃないわ。でも、そいつら如きで行使出来る呪術じゃないわ。」
心当たりはあるのか…まあ、あの性格じゃあ仕方ないだろう。
「そう言うアンタはどうなのよ?」
逆に彼女から問われるが…
「心当たりも何も…そもそも、この世界には魔法なんか存在しないからキミの言う呪術を使える人なんか居ないと思うんだ。」
僕の答えを聞いた少女は、驚愕の表情を浮かべ、言葉を失っていた。
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「ま、魔法が存在しない…嘘よ!!嘘だわ!!有り得ない!!魔法無しにどうやって生きてるって言うのよ!?」
取り乱す彼女。
「この世界では、魔法が無くても人は生きていけるんだよ。」
まあ、そんなことを言う僕はポンコツ超能力者で、どちらかといえば彼女寄りの扱いなんだけど。