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異世界魔女、ESP対策室に転移する。  作者: まるまるくまぐま
6/10

もう一人の天才魔女

 見慣れた自室の天井。

 目覚めた朧気な瞳がそれを捉えた後、顎と側頭部から鈍い痛みが伝わってくる。

「やっぱり夢じゃないんだな…」

 そう呟いた。

 そんな痛みが、全て現実で起こったことなのだと証明していた。


「というより…」

 ぼんやりと時計を見た。

「完全に遅刻…いや、欠席だよな…」

 正午を過ぎを示した針を見て、そう呟いた。

 受験を終えた三年生の授業は午前で終わる。一応志望校に合格している僕は、欠席扱いになるだろう。

「なにもかも、あの貧乳のせいだ…」

 痛む顎と側頭部を撫で、隣に横たわる少女に、そう恨み節を吐いて瞼を閉じた。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



「流石は勇者と大魔女の娘!!」

 何をしてもそう称賛される。

 純粋な才能も、努力も、全て血筋としか見て貰えない。

 誰も本当の私を見てくれない!!

 

 評価は全て血筋。

 じゃあ、私は何なのか!?

 それじゃあ、あの人は何なのだ!?

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−


 

 瞼を閉じた僕の頭の中に、そんな少女の泣き叫ぶ映像が否応なしに流れた。


 この少女は何者なのだろう…


 少女の記憶なのか、その最後に映った影は、あまりにも美しかった。



−−−−−−−−−−−−−−−−−

−−−−−−−−−−−−−

−−−−−−−−−



「勇者も、その仲間たちも倒れた。神の加護を持つ者が我の前から消えた筈…」

 圧倒的な、邪悪なオーラを撒き散らしながら、片膝を付き、呻く巨大な黒き存在。

 そんな存在を冷ややかに見る者。

 白銀の長髪、スラッと長い脚とくびれた腰、豊かに実った胸部に、永久凍土の如き冷たさを感じる美貌。

 白銀の美女が邪悪な存在を降していた。

 そんな彼女が装備しているのは、その辺で拾ってきた様な木の枝一本と防御力皆無の普段着。

「神界さえ破壊する我、邪神ドグラが…小娘に屈するか…」

 息も絶え絶えに笑う邪悪な存在。

 そんな余韻に浸る邪神に、美女は一歩近づく。


「妹を何処に隠した?」

 ゴミを見る様な目で邪神に問う。

「さあな…しかし、愚かな貴様の妹のお陰で、我は滅びぬ!!」

 地の底から響く様な邪神の笑い声が響いた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−


「もう一度だけ聞く。妹を何処に隠した?」

「ごめんなさい、嘘です!!勝手に何処か行きました!!恐らく、ゲートを使ったのだと…」

 美女の問いに、威厳の欠片さえ無くなった邪神は、命乞いしながら答える。

「ゲート…転移魔法をあの子が使ったってこと?」

 木の枝を振り上げて問う美女。

「そ、その通りです!!わ、我が降臨した際に生じた魔力磁場を利用したのだと思います!!」

 ヘコヘコと土下座しながら答える邪神。

「転移先は?」

 そんな邪神の横っ面を木の枝でペシペシと叩きながら、再度問う。

「わ、分かりません…す、すみません!!命だけは御容赦を!!」

 そう答えた自分を見る、氷の刃の様な美女の瞳に、邪神は?無様に命乞いするしかなかった。

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−


「私の可愛い(お嫁さん)…お姉ちゃんが見つけるからね…」

 命乞いする邪神を容赦無く滅ぼし、そう呟いた美女は、魔法で門を創り出す。


「何処に居ても、お姉ちゃんは見つけるよ…」

 そう言って門を潜った。




 

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