第一夜:鏡の中
非情な天使、悪魔な男爵に登場したラファエルを主人公にしてみました。
評価感想など読んだらお願いします。作者の励みになるので。
私はキング・サイズのベッドで眠る男の寝顔を何時までも見つめた。
腰まで伸びた黒髪はボサボサだったが、私が先ほど櫛で梳いたからサラサラになっていて髭も剃ったから不潔感はない。
男の顔は彫が深く西洋人に見えるが黒髪は東洋人で彼自身も東洋人だ。
右眼の眼帯が戦ってきた証を物語るが、それは違う。
この眼帯は魔具だ。
強力な力を封じる為の魔具。
これを外せば彼は記憶を戻してしまう。
そうなったら私は終わりだ。
「・・・貴方を愛している」
眼帯を外してしまったら貴方は私の元を去ってしまう。
それだけは嫌だ。
だから、外させない。
私は眠る男の髪を撫でた。
「・・・・お休み。私の愛しい男」
眠る男に口付けを落として私は部屋を出た。
部屋を出た後は自分の部屋に行く。
暗い廊下を歩いていると窓ガラスから月明かりが流れ出て廊下を照らした。
「・・・・彼と会ったのも今みたいに月が昇っていた頃だったわね」
彼と久し振りに会ったのは今から一月前だ。
たまたま地方に出張という名前の夜会に出ていた時に血まみれで倒れていた彼と再会した。
私が声を掛けても彼は意識を失ったまま。
このまま放っておいたら出血多量で死ぬか、天使の仲間に見つかって八つ裂きにされてしまうのは目に見えている。
躊躇することなく私は彼を自分の城まで運んだ。
その間、軽い応急処置を施しながら。
城に連れて帰った私は自分だけが知っている秘密の部屋へと彼を隠した。
如何に自分の領土でも悪魔である彼を快く迎えてくれる訳がない。
何より彼をサリエルやガブリエルに見せたくなかった。
サリエルは彼を見れば力づくでも連れて帰るし、ガブリエルは恐らく彼を魔界に帰す。
それは嫌だった。
彼をベッドに寝かせて私は必死に治癒魔法を施しながら傷の看病をした。
背中から袈裟にかけて酷い剣の斬痕があったから恐らく仲間の誰かが裏切ったのだろう。
人間出身である彼を快く思わない者は魔界でも多くいるから。
彼は三日後に眼を覚ました。
拒絶されるのではないかと不安な気持ちで声を掛ける。
「大丈夫?飛天」
「・・・飛天?俺の名前か?それは・・・・・・・?」
言われた時は耳を疑った。
「もしかして、記憶が無いの?」
私が聞くと彼を無言で頷いた。
戸惑ったが、心の何処かで記憶が無い事を嬉しがる自分がいた。
記憶が無いから彼は私を知らないし過去も覚えてない。
それは私にとって好都合だ。
記憶があったら私を殺すから・・・・・・・・・・
私が、彼の幸せを・・・・・・・大事な女を奪ったから。
事実的には私が奪った訳ではないが、知りながら助けなかった私も彼から言わせれば同罪でしかない。
私は彼が好きだった。
ひた向きに生きて、屈辱を味わっても前を向いて生きる彼の姿に惹かれた。
彼の隣には私が立っていたい。
だから、彼の隣に立つ女が許せなかった。
・・・・・だから、彼の愛した女と腹の中に宿っていた胎児を殺した。
彼は怒り私を殺そうとした。
当たり前の事だ。
だが、私は彼に殺されたくない。
彼に愛して欲しかった。
だから逃げて逃げ続けたのだ。
いま彼は記憶が無い。
ならば記憶が戻らないようにして彼を私の物にしてしまおう。
そうすれば彼は私の傍にいてくれる。
悪魔の誘惑は甘美で逃れられない。
天使でも上級クラスの私が悪魔に屈するなど在ってはならない。
だが、私は屈した。
誰でもない私自身の心に掬う“自分”という悪魔に・・・・・・・・・・
部屋にあった姿見を見ると、そこには私自身が写っていた。
とても天使とは思えない笑みを浮かべていた。
私は反射的に花瓶を取ると姿見に投げた。
姿見は音を立てて粉々に砕け散った。
砕け散った姿見は部屋中に飛び散ったが、それでも私を写し続けていた。
残酷な笑みを浮かべた私自身を・・・・・・・・・・
千一夜物語とタイトルにしましたが、千話まで書けるか分かりません!!(おいっ)
ですが、皆さん飽きずに読んで下さい。




