守護契約
「……水」
レイちゃんは数秒目を閉じた後に言った。今の攻防の全てを反芻して、相手を分析したようでした。やっぱり戦闘に関してはレベルが違う。
「へぇ、それに気付くんだ。やっべぇ……」
「所詮魔力任せ……尽きれば死ぬ」
自称寮長は種がバレて明らかな強がりの笑みを浮かべて身構えていた。魔法のカラクリが分かりづらい初見なら、圧倒的な実力を持つ事が分かるレイちゃんに勝てると見込んだのかもしれなかったけど、それも見破られては勝ち目は薄いだろうね。
数秒睨み合いが続き、レイちゃんが動き出して首元目掛けて剣を振り当たる直前に何科に阻まれた。
「そこまでだ。全く何やっているんだまったく。許可のない魔法戦は許されてないぞ」
凍てつく眼光をここにいる全ての生徒に振舞ってあげて、震あがらせながらキツイ口調で言う。
コールド先生が、1歩歩けば冷気が地を這い、気温が一気に下がる。口元から白い息が出るくらいだ。
それに、杖を持っている。魔法を発動していたみたいだ。レイちゃんの剣と、自称寮長の前に氷の壁が出来ており、間一髪だったみたいだ。少し残念に思うけど、尻もちを着いて寒さだけのせいでは無い、震えている姿に溜飲が下りる。ざまぁみろだ。
「あ、先せ……師匠」
しかし、この騒ぎの中心にほど近い私は気が気ではなかった。無理やり連れて来られたのに怒られるのかなとか、思って萎縮してしまう。なにより、自称師匠は怖いのだ。
「おい、海」
「な、なんでしょう」
名前を呼ばれただけなのにビクッ!として背筋が自然と伸びる。殴られる!そう思って目を固くつぶると、肩に手を置かれた。あ、助かったと思い目を開けると、耳元で怒気を含ませた声で言う。
「アレの手綱はしっかり握れ?いいな?」
「は、はいっ気を付けます!」
「お前は反省文だ。今日はもう行け」
自称寮長に対して反省文を書くように命じて、全員を解散させた。いつの間にか冷気は無くなっていた。涙目になりながら、ほうほうの体で逃げていった。
その姿をきっちりと見届けてからレイちゃんの元に駆け寄った。
「レイちゃん、大丈夫だった?蹴られてたけど」
「あんなの大した事ない……殺せなかった、海様に仇なすヤツ、次こそは」
「う、うん。ありがとうね、えっと一旦戻ろっか」
「はいっ!」
寝起きでよくやったし、もう疲れた。けど、まだまだ朝だからチャチャッと支度さえすればレイちゃんとお出かけができる。
制服のまま街に行くのもどうかと思うけど、魔法学校の敷地内のお店は制服だと安く買える。それに、加えて生徒の中には自分お店を持って生計を立ててる人も居るんだとか。
「レイちゃんって私服ってあるの?」
「私服?正装の事です?」
なんか抜けてる子だし、オシャレとかに気を使わなそうだなと思ってたよ。まあ、制服を着てるだけでドレスコードみたいになってるから素材がいい。そりゃ、服なんてどうでもいいよね。それでも、可愛い服を着れば相乗効果でもっと可愛くなるはず!
「あー、うん。レイちゃんに似合う服買いに行こっか!」
「海様が私の為に?」
「ん?そうだよ?友達だもんね」
「ああ、今ここに生涯の誓いを立てます……!」
「もうっ、大袈裟だなぁ」
わざわざ肩肘立てて騎士の誓いを立てる。流石にちょっと困っちゃうし、誤解を生みかねないタイミングでまたしても来訪者が来た。しかもノックも何もしなかったし。
「失礼するわ……ごめんなさい」
「待って、待って、待って!」
「ええ、すみません。私は何も見ていません、どうぞ続きを」
「バッチリ見てるじゃないですか!」
「海様、浮気?……世界を滅ぼして私も死ぬ」
「そこは私を殺して後を追わないっ!?」
「私が海様を傷付けることなんて……!」
「そうだね、レイちゃんってそういう感じの子だね!落ち着いて!ね?お願い聞いてあげるから」
「……なんでも?」
「うん、なんでも!だから、ね?」
「アナタそれ、悪手じゃない?」
「え?」
「なら、守護者の契約を」
「あ、うん」
「受けるんだ」
「じゃなくて、用件はなんですか?」
「あ、私アシュリーです。お見知り置きを。コールド先生から言伝があります。今日は休みでいいが明日私の研究室へ朝10時に来るように。以上です」
「あ、はい。ありがとうございます」
「ではこれで」
「行っちゃった」
「海様!行きましょう!」
「そうね、全ての面倒事は置いておいて行きましょう」




