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8. 異世界にも「萌え」はあった

「………お、おにいちゃん…」

マヤは絶妙な上目遣いで照れながらいじらしそうに言った。

笑いを堪えられなくなり吹き出してしまった。そのチョイスはどうなのよ。


その一言だけ言い、固まってしまった。

見てるこっちまで恥ずかしくて照れてしまいそう。


でもその一言と仕草は圧倒的な破壊力。

それだけで観客はみな総立ちで拍手を送っている。


いいぞ!とか、かわいいー!とかこれが萌えか!とか歓声が聞こえてきた。


あたしなんかより全然盛り上がってる。これでいいんだろうけど、なんだかね。


顔を真っ赤にしながらマヤはステージから戻ってきた。


「セリカ!なんなんだよ、男性本能をくすぐる萌えって!」


「盛り上がったし良かったじゃない。あれだけウケたってことはもしかしたらお妃様に選ばれるんじゃない?やったね、おにいちゃん♡」


マヤはさっきよりもっと顔を真っ赤にして怒り肩で床をわざと鳴らしながら去っていく。


ほんとマヤは前世の記憶があるのか疑わしい。見た目通りで中身もまんまおこちゃまじゃない。



♧♧



すべての参加者が出番を終え、参加者一同がステージ上に集まった。

ナオト王子とその取り巻きも舞台上へ。


これからが10何人目のプリンセスになるお妃様発表の時間。


「大いに盛り上がった選考会もあとは選ばれし妃の発表を残すのみとなりました!では、ナオト第8王子様より発表いただきます!お願いします、どうぞ!」


「皆さま、本日はお楽しみいただけましたでしょうか。数多くの参加者、そして観客の皆さまのお陰で他国に類を見ない盛大な催しとなり、また無事終えられたことを感謝いたします。では前置きはこれくらいにして発表いたします。私の妃として選ばせていただいく女性は…」


ほんの少しだけ間が空いた。

固唾を呑む。


「セリカ・ビスタ!あなたです!どうぞ前へ!」


あたしの名前が呼ばれた。

呼ばれた瞬間ガッツポーズをしそうになるのを堪えた。


だってあたしはお妃様なんだから。これからはおしとやかにいかなくちゃ。


周りから一斉にあたしに視線が向けられた。

あたしは口に手をおさえて信じられないって顔をする。

くだらない演技。そんなんでも必要な時がある。


参加者たちの間をすり抜けて一番前へ。

「さあみなさん、新しい我が妃に拍手を!」


観客はみんな拍手と声援を送ってくれた。あたしは感動のあまり泣きそうな顔をしながら手を振りかえす。我ながら名女優。


「実はもう1人、選びたい女性がいます!」


ナオト王子の突然の発表に黙る一同。


「その名は、マヤ・クリスエス!」


後ろの方からええーっという驚きの声が聞こえた。

声がしたあたりから参加者たちに押し出されるようにマヤが前に出てくる。

あきらかに気まずそうな表情。

もっと嬉しそうにしないとおかしい場面でしょ。


マヤはすごく申し訳なさそうに観客に手を振り返してた。



♧♧



「では妃選考会はこれにて終わりです!このあとまもなく、この広場前の通りから城門までお披露目パレードとなりますので宜しければそちらもご覧いただければと思います!みなさまありがとうございました!」


司会より最後の挨拶のあと、あたしとマヤは係員に手を引かれ舞台裏の更衣室に連れていかれパレード用の衣装に着替えるよう指示された。


純白のドレス。ウエディングドレスってやつ?髪飾りにはすごく高価そうなティアラ。マヤも同じ格好。


マヤはぶつぶつとなんでこうなっただのなんだの呟いてた。ほんと独り言多いやつ。


着替え終えたあたしたちは慌ただしくパレード用の馬車に誘導される。

馬車にはすでにナオト王子がいた。


「さあ、お手をどうぞ」

「ありがとう…ございます」


ナオト王子の手を取り、馬車に乗る。

あたしの顔をまじまじと見つめてくるナオト王子。


「あの…ナオト様。どうかなさいましたか?」


「近くで見るとセリカの美しさを一層感じられて目が離せなくてね。一目見た瞬間に君を選ぼうと思ったんだけど、やはり君を選んで良かった。」


結局見た目かよ。

アピールポイントとか無駄なことさせて。このスケコマシ。



♧♧



パレードはすごかったの一言。

壮観なパレードの隊列と王子と新たな妃を一目見ようと王都中の人で溢れた通り沿い。

手を振られ名前を呼ばれ、あたしは笑顔で手を振り返す。


これだけ注目を一身に集めたことなんてない。悪いもんじゃない。

むしろハイソってあたしに合わないと思ってたけど案外いいかも。柄にもなく舞い上がっちゃった。


でも妃としての生活はたった1日でさえもたなかった。

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