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6. 怪力はアピールポイントになるのか、否か

「なんで!僕が!出なきゃ!いけないんだよ!」


今日は選考会当日。

ドレスを着ておめかししたマヤはご機嫌なのか元気いっぱい。


「元気いっぱいなわけないよね!」


元気があるのは良いことなんだけど声大きすぎ。


「うるさい。男ならいい加減観念して腹くくりなさい」


「男だからだよ!妃の選考会に男が出ちゃまずいよね!」


周りに聞こえちゃうじゃない。

マヤの頭を腕で抱え込んで、ひそひそ声で話しかける。


「いい?いくらあたしがルックス抜群の美少女だからってナオト王子が仮にロリコンだったらどうするの。幸いマヤは女の子って言われればそれで通せる見た目なんだから。少しでも可能性をあげるため。我慢しなさい」


ううっ、と悩ましい声を出しながらうつむくマヤ。

もう駄々こねないといいけど。



♧♧



妃選考会。

ここ、パノティア王国の古来からの風習…とかじゃなくて、ナオト王子の王国全土から広く妃候補を求めたいとの希望から催されることになったって話。


妃に選ばれれば自身だけじゃなく、家族親戚が王宮に召し抱えられ、王家が続く限り妃一族の繁栄が約束されると言われている。


だからか。参加者みんな気合いの入れようがすごい。

会場に着いてから何人にガン飛ばされたか。


あたしはそんなのパスだけどね。

妃になんてなったら衣食住の不安はなくなるけど、自由でいられなくなっちゃうじゃない。


好きなものを見て好きなものを食べて好きなことをする。

それが生きてく上での最優先。


でも今は事情が変わった。

絶対なんて世の中にないけど必ず選ばれなきゃいけない。


目的はみんなと違うけどあたしにも妃の座を譲れない理由はある。



♧♧



係員の案内で舞台裏に参加者が集まった。

すごい人の数。100人以上はいる。


肌の露出が多い派手なドレスや普段着と変わらないような地味目の服、甲冑を着てたり民族衣装なのかわからない奇抜な服装の人もいる。


まるで何かのショーみたい。

ただみんな顔の表情だけは一緒。緊張の色が見える。



♧♧



観客席の方から歓声が聞こえた。

舞台袖から覗くとたくさんの付き人を従えている人が見えた。


きっとあれがナオト第8王子。

真っ赤な宮廷服に身を包んでいる。

顔はイケメンの部類かな。見た目は割と若そうに見える。微笑みを作って周りに手を振りながら観客席の中央部に付き人と一緒に席に着く。


観客席のざわつきに比べて舞台裏は妙に静か。つばを飲み込む音まで聞こえてきそう。


第8王子妃選考会が始まった。



♧♧



まず舞台の中心に燕尾服を着た人が立った。司会進行役ってやつ。


観客に向かって選考会の説明を始める。

参加者全員がひとりひとり舞台に上がり参加申込書に書いた自己PRをやって、最後に妃に選ばれた人を発表の流れ。


説明を聞いてたマヤがさっきからあたしにアピールポイント欄に何を書いたかしつこく聞いてくる。


あたしは教えなかった。だって言っちゃったら興ざめじゃない。知らない方が上手くいくようなこともあるんじゃない?


1人目がステージに上がる。

舞台袖であたしはその様子を窺う。

すると舞台の中央に歩いて向かう途中で何かにつまずきこけた。こけてしまったことで焦り顔。


何につまずいたか確認してるけどそこには何もない。結局そのまま続けたけどなんか観客含めもやもやした雰囲気のまま終了。


2人目は甲冑を着た人。

これまた続き舞台中央でこけてしまい、自力で起き上がれなくなってしまった。


3人目、4人目も続けてステージの上でこけてしまった。

あたしの横にマヤが来て話しかけてくる。


「もしかしてセリカ…もしかして何かしてない…?」 

「ん?なに?」


「……いや、なんでもない」


言いたいことあるならはっきり訊けばいいのに。

それにしてもこの能力はすごく使い勝手が良くて便利ね。

任意の場所にサイズ問わず設置、移動できる透明な硬い物体。これは捗るわ。



♧♧



あたしにとっては順調に選考会は進んでいった。


けど、半分以上は終わったと思ったあたりで急に後ろから大声を浴びせられた。

聞き覚えのある声。


「邪魔よ!あんた!」


あたしは振り返り、恐怖した。

昨日のゴリラ女。そういえばこいつも参加してたんだった。


あたしはすぐさま道を開けた。ゴリラ女はあたしをいちべつしながらふんっ、と鼻を鳴らしステージに上がる。


ゴリラ女の邪魔はしなくていいかな。選ばれることは万に一つもないだろうし。

あたしは黙って様子を眺めることにした。


「あたいはマリア・ライト!18歳!」


ゴリラ女が大声で叫ぶ。

マリアってまた皮肉にも女の子らしい名前なのね。

てかあたしと同い年かよ。


「特技は!人一倍の腕力です!」


あたしは笑いをこらえられなかった。

だって見た目通りじゃない。期待通りといえば期待通り。


ゴリラ女は舞台の屋根を支えているぶっとい柱に近づいて両手で抱き込んだ。

まさかとは思うけど。


「ふうううんぬうううう!」


すさまじい雄叫びをあげるゴリラ。

ミシミシと軋みだす柱。

嘘でしょ。目の前で起こっていることが信じられない。

いや、嘘じゃなかった。


バリバリとすごい音をだしながらゴリラ女は柱をもぎり取る。

怪力なんてもんじゃない。人外の力。


不安定なバランスながらも倒壊せず持ちこたえる屋根。騒然とする観客。

周りで待機してた衛兵たちが急いでステージに上がろうと慌てて近づいてくる。


「ナオト王子いいい!かくごおおおお!」


ゴリラ女は間髪入れず、もぎ取った柱を観客席のナオト王子めがけて投げ飛ばした。


なんで!?

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