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3. 美人に生まれ変われると思ったら異世界でした

あいつに見せられたのは前世の記憶ってやつ。

幻覚を見せられたかもしれないし、勝手に前世の記憶って信じちゃってるから前世の記憶になっちゃってるのかも。


これが真実かどうかわからない。

でもあまりにも鮮明で、思い出すたびに心を締め付けられるってことは、やっぱりそれはあたしの前世なのかもしれない。



♧♧



名前はマツダ ヒロコ。享年はたぶん30歳。

こことは違う異世界の、ニッポンってとこで生まれ、育ち、生きて死んだ。


あたしが思うにニッポンは豊かすぎる。

だから余計なことに考えが囚われちゃう。そして人生を消耗する。


ヒロコはそうだった。

生まれも育ちもその世界の基準で貧しいなんてことなかった。教育を受けて、会社に勤めて、収入を得て、家族、友人、いろんな人、物に囲まれて暮らしてた。

あたしから見れば恵まれすぎ。


それでも悲しいことなのかな。人は他人と比べたがる。

比べるから劣っているところを伸ばすなり補うなりしようとする向上心が芽生えるんだろうけど。


ヒロコの人生を語るのは味気ない。

美人だったわけでもなく頭が特別良かったってこともなかった。何かに熱く打ち込んだってこともない。普通ってやつ。


だからこそ特別な何かが欲しかったのかな。虚栄心を満たして溝を埋める日々。


失恋した時、仕事で落ち込んだ時、お金に余裕がなくなった時、ヒロコはいつも思った。

自分が美人だったら違ったのかなって。

他に考えることはなかったの?


結局ヒロコの人生は自ら絶つことで終わった。

理由?ほんの些細なこと。色恋沙汰っていうほんとバカな理由。いい歳にもなって。

人生なんて心持ちひとつでどうとでもなると思うのだけれど。

ヒロコにそんな考えはなかった。


些細なことで自らの命さえ簡単に絶ってしまう世界とその住人。

だから豊かすぎるって言ってんの。

あたしから言わせれば人なんて死ぬまで生きりゃあいいの。


人が死んだら魂はどこに行くのか知ってる?天国、それとも地獄?

あたし、いやヒロコの場合はどちらでもなかったみたい。



♧♧



死んでから気づいたときには真っ白な空間に立ってた。


どこまでも広がっているような感覚になる不思議な空間。


目の前には1人の男の子。

歳はマヤと同じくらい。でもマヤじゃない。

中世の貴族の仰々しい子供服みたいな格好。


目の前の人物はヒロコに話し始める。本来自殺した魂は輪廻転生のルートから外れてしまうが特別にチャンスをやる。


そのうえ1つ願いを叶えて転生させる。

ただこれは契約。代わりに使命を与えるので必ず遂行しろと。

ヒロコは尋ねた。あなたは何者か。

男の子は口元をにやりと歪ませて答える。

何者でもいいだろう。神だと思えば神でいいし、ただの子供でもいい。勝手に決めてくれと。


正直、めちゃくちゃ怪しいしうさんくさい。

ヒロコはそう思わなかったみたいだけど。


だから願った。

美しくなりたい。

美しくなれば人生も変わると。

使命という条件も聞かずに。

愚かとしか言いようがない。

きっと目の前の奴が神に見えたんでしょ。


契約成立だと言われた瞬間、そこで前世の記憶は途切れてる。


まさか異世界に転生するなんてね。

ほんと、バカみたい。

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