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前世の記憶



何が起きた・・・



「エアリス様! お気を確かに!」

「ああ…頭から血を流しておられる」



ぼんやり霞む視界の中で、昔から僕の世話をしてくれていた使用人達が慌てふためく。お屋敷の近くを流れる小川で遊んでいただけなのに…足でも滑らせたのか頭を石に強く打ち付けてしまった。


おかげで意識がはっきりしない。

どろっとしたものが顔を流れる感じがする。これがきっと血なんだろう。



周りの焦り具合から決して軽い怪我ではないことが分かる。

ひょっとしたら死んじゃうのか…



いやだ・・・また(・・)死ぬだなんて。





あーーー『また』ってなんだ?




突然頭に鋭い電撃が走る。

今まで忘れていたものを思い出したかの如く現実味がない、しかし決して他人のものとは思えない『日本』での光景が頭に流れてきた。


そうか。僕は……僕は……



二十年にも及ぶ長い記憶をわずか一秒にも満たない間に追体験していたが、その記憶の映像はやがて終わりを迎える。


最後に流れ込んできたのはどこを見ても火の海に包まれた真っ赤な光景と、全身をゆっくりと溶かすように蝕んでいく信じ難い痛みだった。



「う、ああああ!!」



思わず声を上げる。

身体が灼けていく刺すような痛みが襲う。火事でビルが炎に包まれる中避難することができなかった僕は、周りで断末魔をあげる友達の叫び声を聞くことしかできない。


痛みで涙を浮かべても辺りの熱で瞬時に蒸発する。声を上げたくても喉が灼けて掠れた嗚咽が出るだけだ。確実に無くなっていく酸素を少しでも吸い込もうとしてもまるで焼肉屋にいるような人間が焼ける匂いが鼻腔をくすぐり吐気を催す。



窒息で死ぬか全身が灼けて死ぬのか。

屋敷へと急ぐ使用人に抱えられながら、死への恐怖と絶えず襲ってくる痛みによって散々叫び声を上げていた俺は意識を失った。



この日、僕は前世の記憶を思い出した。


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