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個人戦績


「な、仲間!? それって、俺が白薔薇に入るってことか……?」

「そうだよ?」

「あ、ありえないだろ!」


 レイルは、差し出された契約書を受け取れないままでいた。

 ミーアが言っていることは、あまりにも現実味がないことだ。


 ランキング二位のパーティーが、元最下位パーティーのメンバーを獲得する意味が分からない。

 目の前にいるのは、ただのミーアのそっくりさんなのではないかとすら疑ってしまう。


 いや。

 まだ人違いだったという方が納得できる。

 それほどまでに有り得ないことだった。


「まあ、疑う気持ちは分かるけどね。大丈夫、こっちも本気だから」

「……なら、どうして俺を仲間に入れようと思ったんだ?」


「個人戦績」


 と、ミーアは問いに一言で答えた。


 個人戦績――冒険者であるレイルでも、なかなか聞かない言葉だ。

 意味は何となく理解できるものの、それが具体的にどういうものなのかは知らない。


 チンプンカンプンなレイルに、ミーアは詳しく説明を始める。


「個人戦績ってのは、ギルドが独自で記録してる戦績だよ。貢献度って認識してもらっても大丈夫。普通の人は見ることができないけどね」

「……その個人戦績っていうのは、俺とどういう関係があるんだ?」

「簡単だよ。君の個人戦績が圧倒的だったんだ。まとまりのないパーティーで、あそこまで優秀な戦績を残すのは凄いよ」


 ミーアの話は、実際に分かりやすく簡単なものだった。

 これまでの冒険者生活では全く意識していなかったが、どうやらいつの間にか個人戦績の数値がかなり高くなっていたらしい。


 ミーアが気に掛けるということは、全冒険者の中でも上位に食い込んだのだろう。

 自分のパーティーでの役割を考えれば――その話も少しだけ納得できる。

 ニックたちはまともに戦えていなかったため、三人分の貢献度がレイルに入っていた可能性もあった。

 そう考えれば、個人戦績が高くなるのも必然だ。


「これがレイルを選んだ理由かな。一応理由はこれだけじゃなくて、伸びしろとかも考慮してるんだけど」

「……そうなのか」

「うん。分かってくれた?」


 コクリ――とレイルは頷いた。

 完全に理解したというわけではないが、ミーアが嘘をついているとも思えない。

 それに今の自分の状況を考えれば、この話は一筋の希望だ。


 新しくパーティーを組んでやり直せるなんて、願ってもない事態である。

 心も落ち着いてきたレイルは、迷うことなく了承の意を示す。


「ありがとう。これからよろしく」

「よろしくねー。ということで――はい」

「ん? これは?」

「指印。これでパーティーを組んだことになるから」

「ああ、なるほど」


 ミーアから書類と朱肉を受け取ると、レイルは自分の親指をしっかりと書類に押し付ける。

 その瞬間に、レイルは勇者パーティー白薔薇の一員となった。


 ランキング最下位のパーティーから、一気に二位のパーティーに移籍するという異常事態。

 その凄まじいスピード昇格に、感覚が追いつくのは時間がかかりそうだ。


「ようこそ! 白薔薇へ!」


 レイルを歓迎するミーアの言葉。


 今はまだ。

 ミーア自身も、レイルがやがてパーティーの核となる存在であることを知らなかった。

 そして、レイル自身も自分の才能に気付いていなかった。


 これから。

 無名だった支援魔術師は勇者パーティーのサポート役として成り上がることになる。

 



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