白薔薇
「な、なんでこんなところに【白薔薇】のミーアが……」
「こんなところって。一応ここは私の家の前だし」
「そうじゃなくて、どうして俺の前にってことだ!」
レイルは、周囲の視線を集める程度の大声で説明を求める。
フード女の正体は分かったが、何故自分をここまで連れてきたのかは分かっていない。
白薔薇は、数多くあるパーティーの中でもランキング二位を維持している超有名パーティーだ。
そんな化け物パーティーのリーダーであるミーアが、底辺冒険者の自分に何の用があるというのか。
一瞬だけ人違いという線も考えたが、確か最初にレイルの名前を出して確認していたはず。
つまりレイルという名前の別人でない限り、間違いなく自分に用があるということ。
考えれば考えるほどに分からなくなっていく。
「まあまあ。詳しいことは中でお話ししようよ。時間ある?」
「……時間は山ほどあるけど」
「じゃあ決まり!」
そう言ってミーアは、どんどん中へと進んでいく。
門から玄関までの道でも疲れてしまうほどの距離。
庭には見たことのない種類の花が植えられており、レイルの全財産を使ってもここまで揃えることができないだろう。
少し歩くだけでも、圧倒的な差を見せつけられた気分だ。
「――あ、最初に聞いておきたいんだけど、アナタの仲間と連絡を取ることはできる?」
「あー……それは、うーん」
「? どうしたの?」
「仲間というか、元仲間なんだけど。俺はもうパーティーから外されたし」
レイルは気まずそうに事実を伝える。
自分の口でパーティーを追放されたと言うのは、想像以上に恥ずかしさを覚えるものだった。
できればずっと隠しておきたかったことである。
いくら元仲間側に問題があるといっても、追放されたという事実は変わらない。
チラリとレイルはミーアの表情を窺う。
「ほんとに!? それはとても好都合だよ!」
「え?」
しかし。
ミーアの反応は、レイルの想定していたものとは真逆のものだ。
幻滅しているどころか、むしろ嬉しそうにしている。
状況が読めないレイルは、ミーアの口から出てくる次の言葉を待つしかない。
「それじゃあ、取引も相談もする必要はなさそうだね。面倒な手順が一つ無くなって良かったよー」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。話が全然見えてこないぞ」
「パーティーから外れたってことは、レイルは今ソロなんだよね?」
「それはそうだけど……」
「なら――はい。この契約書にサインして、私たちの仲間になってよ」
客室に入った途端。
ミーアはニコニコとしながら、一枚の契約書を差し出したのだった。
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