ミーア
「……どうしよう」
レイルは悩んでいた。
パーティーを抜けて歩き出したのはいいものの、頼れそうなものは何もない。
今の自分を歓迎してくれるパーティーなど、この世界のどこにも存在していないだろう。
冒険者という職業は、ランキングを至上主義とする職業だ。
他人からの扱いも、社会的な地位も、ランキングによって大きく変わる。
つまり、自分たちより下のパーティーからの引き抜きは有り得ない。
ましてや、そこから追放されたレイルなどもってのほかである。
最低とも言える状況に、流石のレイルも諦めそうになっていた。
「……ダメ元でギルドに行くべきか? あまり期待はできないけど……何もしないよりはマシだろうし」
ここでレイルが何とか思い付いたのは、ギルドの力を借りて新しいパーティーを探すという方法。
ギルドでは、いくつかパーティーメンバーを募集する旨の広告があったはずだ。
このような広告を出すパーティーは劣悪な環境のものが多いが、今は仕事を選んではいられない。
むしろそこにすら入れない可能性まであるため、環境のことなど言ってられなかった。
「はあ……行くか」
「――ねえ、ちょっといいかな?」
「え?」
そんなレイルの肩が、後ろからポンポンと叩かれる。
聞き慣れない声。自分の知り合いではなさそうだ。
ならば一体誰が声をかけているのか。
慌てて振り向くと、そこには自分より少し身長が低いフードをした女が立っていた。
「君、レイルって名前で合ってるよね?」
「そうだけど……誰」
「なら良かった。付いてきてよ」
と、フードをした女はレイルの手を取る。
自分より体は小さいはずだが、引っ張る力はかなり強い。
抵抗しようとしても無駄だと悟るくらいに強力だ。
危害を加えようとしているわけでないことは雰囲気で分かるが、それ以外のことはほとんど何も分からなかった。
「ちょっと、どこに行くんだよ!」
「ここを真っすぐ抜けたところだから。早く来て」
フードの女はもう一段階歩くスピードを上げる。
そして、人が少ない道をわざわざ選んで通っていた。
自分はどこに連れて行かれているのか。
目立ちたくはなさそうにしているが、どんどんと街の中心部へと進んでいる。
この女が何をしたいのか、一向に読み取ることができない。
「おい、そろそろ――」
「ここだよ」
ようやくフードの女は足を止める。
最終的に到着したのは、かなり人が多い場所だ。
一つの豪邸を中心に、様々な店が賑わっている。
「こんなとこに連れてこられても困るんだけど……」
「急にごめんね? もう着いたから」
「え? おい、そっちは――」
そこでフードの女が指をさしたのは、この辺りの中心となっている豪邸の門。
超有名冒険者パーティー【白薔薇】が住んでいるところだった。
個人の住宅なのにも拘わらず、周りには多くの見張りが設置されている。
当然指をさした門にも二人の兵士がおり、じっとレイルの方を睨みつけていた。
「まあ中に入ろうよ」
「お、おい、怒られるぞ!」
「「ミーア様! おかえりなさいませ!」」
「へ?」
兵士たちの予想外の反応。
怒られることを覚悟していたレイルは、開いた口が塞がらない。
部外者であるはずの自分たちを、何故か歓迎する態度で受け入れているのだ。
そして聞き逃せない兵士の言葉。
確かに二人の兵士はミーア様と言った。
ミーア――それは冒険者ならば誰もが知っている名前。
「まさか……」
「初めまして! 私はミーア、よろしくね!」
フードを外して目の前にいたのは。
ランキング二位の超有名パーティー【白薔薇】のリーダーであるミーアだった。
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