危険な夜
「さて……と、うちらはどうする?」
「なんかいいお店ないかなぁ?」
2人はあたりを見わたしました。するとさっきまでは無かったはずの場所に、とつぜんお店があることに2人は気が付きました。おいしそうな食べ物や、かわいい女の店員さんもいます。
「うひょー、こういうのをまっていましたー!」
「いいね! はやく食べようぜ!」
2人は、お菓子やジュースを食べて飲んで、おおはしゃぎ。おまけに、かわいい女の店員さんもいて、まさに天国にいるような気持ちでした。
そして、とても疲れていたので、2人はテーブルにうつぶせてそのまま眠ってしまったのです。
ところが、2人が眠りに入ると、まわりのお客さんや、飲み物やお菓子が、とつぜん消えてなくなりました。
「ククク……おバカな坊やたちね」
「あたしたちの本当の姿に、気がつかなかったみたいね」
「さあーて、どうやって、こいつらを料理してやろうかしら?」
「どちらの子も美味しそうだわぁ。よだれが出ちゃいそうよ」
なんと、さっきまでの女の店員は、妖怪のサキュバスだったのです。お店もお客さんも、食べ物もすべて、幻だったのです。
サキュバスたちは、鉄の剣や鉄の槍で、眠っている2人におそいかかろうとしました。
そのときです。
カキーンッ!!
サキュバスの鉄の剣がリキヤ君にふりおろされる、まさにその瞬間のこと。突然の大きな音と共に、サキュバスの剣が弾け、地面に落ちました。
その音で、リキヤ君もおおつか君も目がさめて、一瞬パニックになりました。
「……ッ!? だれだ!!?」
「ハッ、これからやられるやつに、名前を言ってもしょうがねぇよ」
そこには、大きな剣を手にした、ネコの戦士が立っていました。
「おのれ……あたしらの食事の邪魔をするなぁ!」
サキュバスは怒りの形相でその鋭い牙を剥き出しにし、ネコの戦士に襲い掛かろうとしました。
「遅い!」
ザシュッ!!
ネコの戦士はものすごく速いスピードでサキュバスの後ろに回り込み、サキュバスの右肩から腰にかけて切り裂きます。
「ギャアアァ!」
ネコの戦士はたったの一撃で、まずは1匹を倒しました。
おおつか君は、そのスピードを目で追うのがやっとのようです。
「す、すげぇ……」
「残るはお前だけだ」
ネコの戦士は、もう片方のサキュバスにジリジリと詰め寄ります。
「……くっ、調子にのるなよ」
「武器をおいて降参しろ」
「チッ、覚えてろ!」
1匹になったサキュバスは、槍を地面に投げ捨て、黒い翼で空へ飛んで逃げて行きました。
「た、たすかったぜ」
「いやはや、危ないところをたすけていただき、ありがとうございます!」
リキヤ君が頭を下げてお礼を言うと、ネコの戦士はポリポリと鼻を掻き、はにかんだ笑いを見せました。
「どういたしまして。……へへっ、リキヤ君にお礼を言われるなんて、何だか不思議な感じがするよ」
「えっ? なんでおれの名前を知っているの?」
リキヤ君は驚いて、ネコにたずねました。
「ぼくはヨモギ。リキヤ君の家にいたネコだよ。覚えているかな?」
「えーっ!? ま、マジで?」
「君のいた世界でしんじゃったあと、このロボット王国の世界に、生まれかわったのさ。でも、しぬまえの記憶も少し残っているんだよ」
「そうだったのか……。まさか、本当にこんなことってあるんだね! ヨモギ、また会えてうれしいよ!」
「感動の再会ってやつだな! オレはこういうシーン、弱いんだよ……」
「話はさっき、ロボたんから聞いたよ。この世界を救うために、洞窟を通って来てくれたんだね」
「そのとおりさ。あれ、ロボたんを知っているんだ?」
「ああ、ボクとロボたんは、王様のもとで働いている。ロボたんは、助けを求めていろいろな世界を飛び回っていたんだ」
ヨモギがそう話した時、ロボたんがちょうど道の反対側から来ました。
「みなさん、大丈夫でしたか!?」
「あ、ロボたん。いや〜危機一髪だったよ」
「……よし、じゃあつもる話はあとにして、まずはダークロボマスターを倒しに行こう!」
「そうしたいんだけど、ボクはすぐには行けないんだ。じつは、やつらの兵団の中には、とっても悪い魔女がいて、ボクはそいつに呪いをかけられている。月が隠れる夜の0時から1時までの間しか、この姿で動けないんだ。この時間帯以外は、ただの小さなネコになってしまう呪いだ」
「そ、そんなヤバいやつが、ダークロボマスターの手下にいるのか!? 大丈夫かなぁ……」
ネコの呪いの話を聞いて、リキヤ君はちょっと心配になってきています。
「じゃあ、まずはそいつをぶっ倒そうぜ! そうすればヨモギ君の呪いは解けるんだろ?」
おおつか君がそう言うと、ヨモギは首を横にふりました。
「いや、それだけではだめだ。奴らを指揮しているダークロボマスターを倒さないと、ボクの呪いは解けない。ダークロボマスターが、全ての力を支配しているんだ」
「そ、そうか……」
「やはり、親玉をぶっ倒すしかないようだな」
「そうだ。しかしもうすぐ、1時になってしまう。そうしたら、ふつうのネコになってしまい、こうやって喋ることもできないんだ‥…」
「そうだったのか……」
リキヤ君もおおつか君も、少し途方にくれて首をうなだれます。
「でも、この呪いをいかす方法があるんだ」
「どういうこと?」
「ただのネコの状態であれば、ロボットたちに気づかれずに、ハイテックセンターに潜入することができる」
「なるほど、その手があったか!」
「明日の夜の0時前までに、ハイテックセンターの裏口あたりまで来ていてくれ。ボクはそれまでに、おひめ様がとらわれている、牢屋まで潜入してみる」
「わかった。なんとか行ってみるよ。」
「0時すぎになったら、ロボたんが、海から花火をうちあげる予定だ。その音が聞こえたら、すぐにハイテックセンターに入って、ダークロボマスターを倒してくれ」
「君はどうするの?」
「おひめ様たちを外に逃し、ロボたんが用意した船にのって、海上に出る。花火に気づいたロボットたちが、たくさんおっかけてくるだろう。でもそうすることで、センターの中の敵が少なくなるはず。その隙に、君たちはダークロボマスターを倒すんだ。ボクは海で、できるだけロボットたちの気を引いておこう」
「なるほど、いい計画だな」
「チャンスは、ボクがこの姿でいられる、1時間だけだ。ダークロボマスターを倒せば、敵のロボットは全ての機能を失う。逆に、時間内に倒せなかったら……」
「……キミとロボたんや、王様たちは、やつらにやられてしまうってことか……」
「おたがい、健闘を祈ろう」
「ああ、みんなで力をあわせれば、きっと大丈夫さ」
「うん。……ああ、もう1時になってしまう。リキヤ君、おおつか君、かならずまた生きてあおう! ぜったいしぬなよ!」
そう言うとヨモギは白い光につつまれ、体がだんだん小さくなり、やがて1匹の子ネコになってしまいました。
「ニャニャ! にゃーにゃにゃーん」
そしてヨモギは、暗闇の中を、さっと走っていきました。
「さあ、おれたちも一旦どこかで休んで、準備をして出発だ!」
「おう!」
「ボクは、ひとまずレジスタンスの隠れ家に行って、船と花火の準備をしてから海に行きます」
「頼んだぜ、ロボたん」
「これはこの街の地図です。ハイテックセンターがこれで、今ボクたちがいるのはここです」
「けっこう遠いんだね〜」
「気をつけて。ヨモギさんに呪いをかけた魔女は、すでにボクたちの行動に感づいているでしょう。奴らは、この国のあらゆる情報を掴んでいます」
「上等だぜ!」
「じゃあロボたん。君も気をつけてね!」
「はい!」
ロボたんは道の端の階段を降りて行きました。
「よし。とりあえずそこらへんの隠れられるところで、仮眠をとってから行こう」
「せっかくだから、サキュバスたちが落としていった武器は、ひろっておこう」
「さすがおおつか、抜かりないね!」




