こんにちは、ファンタジー
気が付けば、何も見えない暗い世界にたたずんでいた。
さっきまで感じてた激痛は、すでに治まっていた。
だからなんとなく、ここが死後の世界だって思えた。
「その様子だと、ここがどこかわかっていそうでね。」
「ええ……あなたは?」
さっきまでただ暗いだけの世界だったのに、僕の前だけライトが点いたように明るくなり、ぼんやりと人の姿が現れた。ローブを頭からかぶった長身で、声からすると男性のようだ。
「初めまして。私は、君たちの言葉でいうところの神様って存在だよ。」
「っ!は、初めまして!」
「ははは、そんなに驚かなくてもいいよ。それに、こっちは謝らないといけないんだ。」
「……はい?」
顔色はわからないが、雰囲気から神様のその言葉が本心だとわかった。
だけど、神様に謝られる理由がわからない。
「どうして、神様が僕に?」
「それは、私が君にかした役割が理由なんだ。君には、世界にあふれる負の感情を引き受けてもらうという酷な役割だが、世界が正常にまわるために必要な役割だ。……その影響で君はまともに生活が送れない人生になってしまった。すまなかった。そして、ありがとう。これで地球は、数百年は大丈夫だろう。」
「…………そんな役割が…あったん……ですね。」
確かに僕の人生は、ほぼ病院で過ごした。
原因不明の病により、走り回ることもできず激痛に耐えることがほとんどだった。
どうして僕が、と考える毎日だった。けど
「良かった。僕でも誰かを助けれていたんですね。」
時々、体調のいい時に見ていたテレビに映っていたアニメ。そこには、みんなを救う英雄の姿があった。僕ができないことをやってのけ、世界を救うその姿に、僕は心を奪われた。僕は、誰かを悲しませることしかできなかったから。
「そうだね。君は、地球を救った。私にはできないことを君はできたんだ。誇っていい、君は英雄だよ。」
「神様…………ありがとう……ございます。」
「うんうん。さて、そんな君に、感謝の気持ちとして新しい人生を歩んでもらおうと思っている。」
「……!は、はい!喜んで!」
「ふふ。よかった。ただ、条件があるんだ。」
「条件ですか?」
と、僕が神様の言葉に疑問を感じた瞬間、今まで神様だけが見えていた世界が急に明るくなりあたり一面、草原の景色になった。何も感じなかったさっきの場所とは違い、頬をなでる風が心地いい。
「条件というのは、君が暮らす世界が地球じゃないってこと。」
「はい?」
いまだにぼんやりとしか姿が見えない神様は、唐突にそんなことを言ってきた。
ここは、地球じゃないってこと?
「すまない、こちらとしても地球で暮らしてほしかったんだが、私ではあまり干渉ができないんだよ。だから、この世界で暮らしてもらおうと思っている。」
「え、あ、はい。」
「まあ、何が違うかっていうと……」
神様が、そういいながら空を見渡してると、何かを見つけたようで空のある場所を指さした。
そこには
「えええ!?」
鳥なんか比較にならないほどの大きさの翼、包丁なんかじゃびくともしなさそうな鱗、なによりも僕が驚いたのはその巨躯。飛行機と見間違うほどの大きさ。その生物は、地球では見たことがない。見たことがあるのは、アニメの中だけ。
「この世界には、地球にはいない存在でいっぱいだということだ。いわゆるファンタジーの世界ってやつだね。」