表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ただ春の夜の夢のごとし  作者: 大舞舵輪
90/129

タッチボール場外乱闘事件24 ~キャリオカ・スプリングスティーン登場~

「お子さまみたいなことをマジな顔して言っちゃうんだ」


 キャリオカ・スプリングスティーン嬢は天を仰ぎ、ゲラゲラ声を出して笑った。


「久しぶりに少年漫画じみた台詞を聞いたよ。オーケー、クロードくんは試合のために私たちに力を貸す……」

「……キャリオカさんは捜査のために僕に力を貸す。それでWinWinってことでいいかな?」

「キャリーでいいよ。親しい友人はみんなそう呼ぶんだ」


 彼女は僕に向かって右手を差し出してきた。


「じゃあ僕もクローで。綺麗な女の人からは大概そう呼ばれてるから」

「言うねぇ、君も」


 今度は遠慮せず、本気で彼女の手を握り返してみる。

 意外に温かで、柔らかな感触だった。

 見た目にはクールだけど、表には出さないだけで本当は情熱的な人なのだろう。

 でないと、こうまで仲間に慕われまい。



「クロー……いい人見つけた……」


 チームの輪から離れると、シズカが近づいてきた。


「うん。なかなかの掘り出し物だよ、彼女は」

「探していたもう一枚が……手に入った……」


 ナショーカとマクガイナ五段、それにキャリオカ嬢が加われば、結構な戦力になるのは間違いない。

 彼女には、好守のバランスが取れたいい働きが期待できそうだ。


「キャリーがいれば……大会に優勝して……ティラーノの野望を……潰せる……」

「そうだね。どうあってもオヨタのIFFを連中に渡すわけにはいかない」

「それに……きっとクローの……悲願を果たすのに……役立ってくれる……」


 シズカはその時だけ少し声色を変えて呟いた。

 僕は思わずドキリとしてしまった。

 シズカが言ってるのは、ミナモンテスによるティラーノへの復讐のことなのか。

 どうして彼女が僕の秘密を知っているのだ。


 僕はミナモンテス先代当主の九男で、ティラーノ一族は両親の仇に当たる。

 その秘密はミナモンテスの旧臣の中でも、限られた一部の人間しか知らないはずだ。

 連中は僕をティラーノ打倒の旗頭にして、ミナモンテスを復興させようと躍起になっている。

 しかし、それは彼らの悲願であって、僕の望むところではないのだ。

 そしてこの隠し事は、僕が既に人間じゃなくなっているという、更に大きな秘密に直結している。

 シズカはそれを知っているというのか。


「えっ、僕の悲願って? 君は何を言ってるんだい」


 僕はとぼけ通す作戦に出たが、心の動揺を抑えきれなかった。

 そのため、声は不審なまでに狼狽えきっていた。

 だが、僕の動揺はまったくの杞憂であったのだ。


「とぼけても無駄……クローは知り合った女と……片っ端から親密になり……ハーレムを作ろうと企んでいる……」

「……へっ?」

「スケベ男の……考えていることくらい……シズカには……お見通し……」

「…………」


 僕は思わずプッと吹きだしてしまった。

 この可愛くて滅法強いロボットは、アホの子だったのだ。

 と言うか、僕自身でさえついこの間知ったばかりの秘密を、シズカが知っているわけがないのだった。

 しかしまあ、ハーレムとは楽しげな勘違いをしてくれる。

 僕が秘蔵するオタッキーコレクションに影響されたのだろうけど。


「でも……キャリーなら……ハーレムの末席に加えても……いい……」

「やけに肩を持つじゃないか。そんなに気に入ったの? まさか、彼女も実は男って言うんじゃないだろうね」


 僕はアーチー・ティラーノの一件を思い出した。

 シズカがジェラシックにならないとは、逆に心配になってしまうじゃないか。


「そうではないけど……キャリーはこれからも……クローの役に立ってくれる予感が……する……」

「ちょっと依怙贔屓が入ってるんじゃないの? まあ、手を貸してくれるってのなら、せいぜい頑張ってもらうさ」


 なんたって、シズカが率先して仲良くしてくれる女性は貴重だ。

 そんなのは、あのココ主任くらいしかいないから、キャリオカ嬢の存在は絶滅危惧種並みの有り難さがある。

 できるだけ大切に扱って、親密度を上げていかなくては。


 個人的な楽しみのためにも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ