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3話~ミルフィーユ、売られる~

ディアンヌが完全に私を嫌いになってしまったのは、それから三日位した時の事であった。


この日も朝は太陽さんが勝手口で寝てる私を暖かく起こしてくれた。

朝起きると私は空を飛ぶ練習をしようと背中の羽を動かす練習をしていた。


空を飛ぶ事が出来れば、水を運ぶ事が出来るようになる。

他に出来る事は無いが、空を飛べれば水を汲む事が出来れば、ディアンヌはまた始めの一週間の時みたいに優しくご飯を食べさせてくれると思っていた。


しかし、どんなに頑張っても羽はパタパタと動くだけで一向に飛べる気配が無い。



ガチャリ



不意に勝手口の扉が開き、人影が現れる。

顔を見上げるとディアンヌが冷たい目で私を見下げていた。


「水汲みも行かないで何を遊んでるの!!」


「あ・・・。」


私は言葉が出なかった。

最近はいつもディアンヌに怒られてばかりいたので萎縮してしまっていた。

そんな私を見て、ディアンヌは「どいて!」とだけ言い、樽を持って水を汲みに行った。



この日も当然のように朝食を抜かれ、私は庭の虫を捕まえて食べる。

これがいけなかった。


今日、初めてディアンヌに虫を食べる所を見られた。


「きゃぁあああ!」


虫を食べる私を見て、ディアンヌが悲鳴をあげた。

私は何が起きたのか分からず、ディアンヌの心配をしてディアンヌに近付く。


「どうしましたか?大丈夫です?」


「来ないで!気持ち悪い!!」


近付く私をディアンヌは追い払う。


それ以降、私は家に入れて貰えなくなった。






夏が過ぎ、秋になる。


秋は夏と比べ、虫が少ない。

しかし、家の裏にある山からドングリが沢山落ちてくる。

私はドングリを拾って食べるようになった。



私自身もこの世に産まれて三ヶ月が立ち、羽を使って少しだけなら空を飛べるようになっていた。

落ちてくるドングリだけでは足らず、パタパタと空を飛んで木の実も採って食べる事が出来るようになっていた。


この時の私の好物は、イチヂクだった。

当たり外れがあるけど、甘くて美味しい。

そんなに沢山は採れないけど、もう落ちそうなイチヂクが当たりの事が多い。


私はイチヂクを食べながら初めて街に来た時を思い出す。


「ディアンヌと一緒に食べた、ミルフィーユ。美味しかったなぁ~・・・。」


私はディアンヌは怖いけど感謝をしている。

ディアンヌがいなければ、言葉を知らなかった。

ディアンヌが私に毛布をくれた。

ディアンヌが私は空を飛ぶ事が出来ると教えてくれた。


私はディアンヌのお陰で生きて来れたのだから。


今、私が食べてるイチヂクの実は甘くて美味しい。

あの時食べたミルフィーユより甘いと思う。


私は一口食べて、甘いと思ったイチヂクを持って、ディアンヌの所へ行く。


「ディアンヌ、これ、甘くて美味しいです。」


私は家の窓をトントンと叩き、室内にいたディアンヌにイチヂクを差し出す。



ペシィ!


突然、頬に痛みが走った。

私は驚いて持っていたイチヂクの実を落とす。

見上げると、ディアンヌは私の頬を叩いた手をそのままに私を怖い目で睨み付けていた。


「汚ない手で窓を触らないで!!」


そう言うと、ディアンヌは勢い良く窓を閉めた。


私は地面に落ちたイチヂクを拾う。


「甘くて美味しいのに・・・。」

私は拾ったイチヂクを食べる。




美味しい木の実が食べられる秋は夜が寒い。

雨が降るとその寒さは一層激しくなる。

私はディアンヌに貰った毛布にくるまりガタガタと震えながら太陽さんがまた出てくるのをひたすら待つしか無かった。


そして、待ちに待った久しぶりの太陽さんの日。

私はいつも通り裏山の実を採りに行こうと羽を広げる。

しかし、いつもと様子が違い、今日は上手く空を飛ぶ事が出来ず、すぐに地面に落ちた。


体が重たく、頭がクラクラする。

クシュン!

クシュン!!

と鼻が勝手に歌いだし、鼻水が止まらない。

コホコホと勝手に私の口も意味の分からない言葉を喋り出す。


私は動く気力が無くなり、庭でそのまま眠りだす。

毛布にくるまりたいが、毛布まで戻る元気が無い。


そんな私に水を汲みに行くディアンヌが気付いてくれた。


「どうしたの?真っ赤な顔をして・・・。」


言うとディアンヌは私のおでこに手を当てる。

久しぶりの人の感触が柔くて気持ち良い。


「あら!風邪ひいたの?」

ディアンヌが私に聞いてくる。


「風邪?」

私はディアンヌに聞き返す。

するとディアンヌは突然立ち上がり怒りだした。


「もうっ!いい加減にして!!大金払ったのに役に立たないくせに邪魔ばっかりして!!今度は風邪?もう、あなたなんかいらない!!」


ディアンヌは私の尻尾を持ち上げるとスタスタと歩き出した。


「毛布・・・。」


毛布を欲しがる私を無視して庭を出、奴隷商人の所へ行く。




「この子、いらないから!竜の子よ。高く買ってよ!!」


半ば怒鳴りながら奴隷商人に私を売ろうとするディアンヌ。

私はぼんやりする意識で奴隷商人を見る。

奴隷商人も私を見て何やら悩んでいる。


「う~む・・・赤竜の子ですか・・・この子は今はまだ赤ちゃんですけど、成長すると凄いですよ?」


「未来なんてどうでも良いの!私はすぐに役立つ奴隷が欲しいの!!」


奴隷商人の言葉に間髪を入れずに答えるディアンヌ。


「分かりました。では、ちょっと弱っているので、三百万でどうでしょう?」


「はぁ?六百万で買ったのよ?少し成長もしてるし、色を付けなさいよ。」


「そうは言いましてもね。竜の子とは言え、生後一ヶ月も三ヶ月も大差ありませんしね・・・。空を飛べてもまだ体が小さすぎて大したこと出来ませんし・・・。」


困ったように答える奴隷商人にディアンヌも根負けしたのか、三百万で私は奴隷商人に売り渡された。



奴隷商人は私を買い取ると、奴隷の首輪を外し、私を牢屋に入れると、水とお粥を食べさせてくれた。

久しぶりに食べる暖かい食べ物に少し心が落ち着く。


「毛布・・・。」

私は奴隷商人に大好きな毛布が欲しいと伝えようと頑張る。


「ああ、少し待っててな。」

言うと奴隷商人はどこからか毛布を持ってきてくれて、私に与えてくれた。


毛布にくるまると自然と安心する。

出来れば、ディアンヌの勝手口ある使いなれた毛布が良いがそれを言っても多分、ディアンヌは持ってきてくれないだろうと何となく思った。


「本来なら教会の司祭を読んで治癒の魔法をかけて貰うんだが、そんな金無いからな。売れるまで死んでくれるなよ。」

奴隷商人はそう私に言い、牢屋の沢山ある部屋から出て行った。




「お嬢ちゃん。風邪ひいて捨てられたのかい?」

毛布にくるまり熱くなる体に息を切らしていた私に、隣の牢屋にいたおじさんが声を掛けてきた。


「おじさんは?」

私はおじさんに返事をする。


「私はボウル。狼の亜人だよ。こないだ亜人狩りに捕まってしまってね。奴隷生活はどうだったかい?ご主人様は厳しかったかい?」


「ディアンヌは優しかったの。美味しいケーキ食べさせてくれたり、言葉も教えてくれました。」

そう答える私にボウルは小さく笑ってみせる。


「お嬢ちゃんは優しいと言う意味を知らないんだね。優しい人は風邪ひいた人の尻尾を持って奴隷商人に売り飛ばしたりはしないよ。」


「ボウルさんは優しいの?太陽さんは知ってる?」

私は毛布にくるまり、ボウルに話を振り続ける。

ボウルは私の問い掛けに一つ一つ答えてくれた。



それから、私の生活はまた変わる。

太陽さんがいる時間は店頭に並べられる。


やって来た人の大半は私を見て足を止めてこう言う。

「可愛い!欲しい!」


その言葉を聞くと店内にいる奴隷商人がお客さんに近付いて営業トークをする。


「いらっしゃいませ。可愛いでしょ?亜人でも珍しい赤竜の赤ちゃんですよ。今は小さいから飛ぶ位しか出来ませんが、成長すると、人間じゃあ張り合えない位の怪力と皮膚の固さで最強の戦士になります。」


ペラペラと良く分からない事を説明する。

そして、それで食い付いたお客さんには牢屋に手を入れて私の顔をお客さんに見せる。


「しかも、この愛嬌たっぷりのこの顔。育つと絶対に美人になりますよ!」


「へぇ、今は大事に育てれば良いんですね?お値段は?」


「はい。四百万です。」


「あー・・・。」

と、ここで会話が終わる。

四百万がどれくらいの価値があるのか分からないけど、四百万と言う値段は他の奴隷と比べてもかなり高額らしい。

そういう理由で私は中々買って貰えなかった。




そして、狼の亜人のボウルも中々売れない。

狼の亜人は足が早いのが特徴らしく、人力車や狩猟犬として買われる事が多い。

しかし、ボウルの場合はもう年が行っていて体力が少ないという事が懸念され、十万でも売れないらしい。




夜の時間は、ボウルと寝るまでお話をする。

ボウルは買われても辛いだけなので、出来る事ならこのままここで死ぬまで売れ残りたいと悲しい事を言っている。


私は、もし、私が成長して、本当に力を持てたら、このお店からボウルを逃がしてあげたいと考えるようになっていた。


ボウルが言うには草原と言う楽園がこの世界にはあるらしい。

辺り一面が全て草で覆われて、いくら力一杯走っても走りきれないらしい。


ボウルを助け出したら一緒に草原って所へ行って目一杯走り回りたいと言う夢が私の中に産まれていた。

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