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凍結三日目。滑り川はTwitterを確認した。
二度目の異議を申請したのにアカウントは凍結されたままだった。
思わず「うおおおおお」とうめき声を漏らしてしまった。
ゲームシナリオの企画が水に流れてしまうのではないかと不安が押し寄せてくる。
さらに、最悪なことに、
「兄貴、落ち着いてくだせえ!」不思議と悪役令嬢という感じは1mmもしなかった。青白く生命力を欠いたその表情は、もはや令嬢というよりは珈琲を動力源に用いた女吸血鬼といったところである。「どんなに世間が後ろ指差そうとも、あっしだけは兄貴の味方ですぜえ!」
「おい、どうなってるんだ?」出っ歯令嬢にむかって、責めるように滑り川はいった。「お前らのいった通りにやってるのに全然解決しないじゃないか……どうしてくれる!」
「そ……それは……」涙を貯めて出っ歯令嬢がいった。
「兄ちゃん、冷静になりなよ」コルセット令嬢がいった。「自分に辛いことがあったからって、僕ちゃんさんたちを攻撃したところで、なんの問題の解決にもならないと思うよ。人は他人の過ちについて許すことが肝心なんだと思うんだね」
「つまり、どうしろっていうんだよ!」
「兄貴、ふぁあああああ」吸血鬼令嬢がいった。「ふぁあああああ。メールは確認したんでやんすか?」
滑り川はメールを確認した。
『ご連絡ありがとうございます。残念ながらあなたのアカウントはTwitterの自動検索装置にて利用規約に違反するスパムである可能性が非常に高いと判断されてしまいました。あなたが本人であり、今後も安全にTwitterをご利用していただけるのなら以下の手順に従い凍結解除してください』
電話番号入力後に確認コードがショットメールで届くと記入されている。
「ふぁあああああ」滑り川がいった。「僕はPHSなんで番号を登録しても海外からショットメールが届かないんだ。どうすればいいんだ」
「「「ふぁあああああ」」」三人の悪役令嬢が声をそろえていった。「「「メールに解除して欲しいと返信してみてくださいふぁあああああ」」」
滑り川は最初とまったく同じ文章──唐突にアカウントが脈絡なくロックされてしまい天涯孤独に困っております。貧乏暇なしスマートフォンに大金支払う余裕なんてオラありません。どうぞ電話番号認証なしでロック解除していただけないでしょうか?──を送信した。