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翌日。Twitterを確認した。アカウントは凍結されたままだった。
思わず滑り川は舌打ちをする。
ゲームシナリオの制作チームとはTwitter以外の連絡先を交換していない。
「僕ちゃんさん的にはどうでもいいのでございますう!」ウエストを絞りあげたセクシーな黒コルセット。スカートを履いていない。もはや、乙ゲーという感じはどこにもなくエロゲーそのものであった。「面倒くさいならTwitterなんてやめちゃえば? ついでに売れないワナビ小説家もご引退くださいまし!」
なぜか、悪役令嬢はふたりに分裂してしまっていた。
男の暑苦しい相棒ものを書いたはずがBL《ボーイズ・ラブ》のオチになってしまった心境──どうしてこうなった?
「やめれるもんなら、もうとっくにやめているよ」苛立ちを隠すことができない。
滑り川にはやめられない理由があった。
その破壊的人格破綻者そのままの性格の為に定職に就くことなどできるはずもなく、彼は専業作家として極貧生活を送っていた。
「なんでまだ凍結解除されてないんだ?」
「それはわたくしがご説明いたします」出っ歯令嬢の方がいった。「兄様、とりあえずメールを確認してくださいませ」
滑り川はメールソフトを立ちあげ要件を確認していく。
Twitterからメールが届いていた。
「複数の違反行為またはくり返しTwitterルールに違反した為、お客様のアカウントは永久的に凍結されました……なんじゃ、こりゃあ……」
「落ち着くのねん!」コルセット令嬢の方がいった。「兄ちゃん的にはまったく身に覚えがないんでっか?」
「あるわけないだろ!」滑り川はいった。「このアカウントを凍結解除することはありませんって……もう、どうしろっていうんだよ!」
「本当にないのですね!」出っ歯令嬢がいった。「やましいことがなにもないなら、もう一度、異議を申請してください!」
「でも、このメールに返信しても対応いたしかねますって書いてあるぞ……」
「アングロサクソン系の民族にその理屈は通じないのよねん」コルセット令嬢がいった。「ゲームの論理に従わなければ、どんなに正しい行いも勝利に結びつくことはないのですよん。というわけで、改変されてしまったこの世界では純日本的わびさび阿吽の呼吸一聞いたら十わかれよみたいな思考では生き残ることができまへんねん」
「つまりどういうことだ……なにをいっているのか僕にはさっぱりだ……」
戸惑う滑り川に対して出っ歯令嬢がいい放った。
「メールを返信するのではなく、Twitterの異議申し立てフォームから『解除して欲しい』と連絡してみてください」