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10 ハーレム・逆ハー、許せますか?(登場人物について・そのさん)

「複雑な心理変化を一緒に共感したい――できる程度のリアリティと理由づけは欲しい」


前回書いたこれを検討していこうかなぁと思います。と申しましても、一意見でございますし、検討というほど大したことはできませんが、それでもよろしければお暇つぶしにどうぞ。


心理変化――嫌いな相手が好きに変わる(友情及び恋愛どちらも)、なんとも思っていない相手を大事に想うようになる、逆に好意的だった相手に憎悪を感じるようになる……それぞれ、全て変化です。

変化するには、理由がある。これが全く(もしくは納得できる程度に)ないのに変わってしまうと読者としては置いてきぼりになって「ぽかーん」となるわけです。


その一番分かりやすい局面が恋愛なのですが、このエッセイをお読みになる方……がいれば、おそらく、なろう定番のファンタジーテンプレ系を書かれる又は読まれる方が多いのではと思うので、一番話題になる「ハーレム」「逆ハーレム」について見てみます。




さて、そもそも「ハーレム(逆ハー)」とは何を指すのか。

作者様によってその定義があいまいで、タグ付けと自分の主観がずれる場合がありますから、ここで定義を固めておきたいと思います。


広辞苑によりますと、ハーレムとは「イスラム教徒の邸宅の奥にある妻や家族の居室」「繁殖期に動物が形成する、一雄多雌の群れ」だそうです。

とはいえ、これを忠実に守った小説はほとんどないでしょう。動物一家(笑)


おそらくなろうでは、後者の人間版を広く考えて、広義では「たくさんの異性に囲まれ、恋情を寄せられている状態」、狭義では「たくさんの異性に囲まれ、恋情を寄せられ、本人も周りからの恋情を自覚している上で、周り全員が現状に納得して主人公と複数のお相手に恋愛関係が成り立つ状態」

ではないかなぁと。


で、このエッセイにおきましては、後者をハーレムと定義いたします。

前者はリアルにもよくある話です(美人は一度にたくさんの男性に好かれますし、イケメンは一度にたくさんの女性に好かれますもの)ので、これまでハーレムとして弾くと、きっぱり友情オンリーの異性が出る小説以外は全てハーレムものになることになり、お話したい状態から外れるので。



######


よく、チーレム(チート&ハーレム)が大人気ななろうのエッセイでは、少数派になるだろう、「ハーレムが苦手な方」のエッセイを見かけます。

そこでは大抵


「ハーレム、逆ハーレム、無理!でも、主人公にそれだけの魅力があればイイ」


と書かれています。

が、私は「でも、主人公にそれだけの魅力があればイイ」とすら思えません。

ハーレムも逆ハーレムも、無理です。読めないし、書けません。


「どうしてそんなにダメか?」その理由を書いていこうかなと思います。



【ハーレム(逆ハー)苦手な読者目線】


・女性視点でハーレムを見たとき(複数人側が同性)


これが出てきた瞬間に、私はブクマを外します。というか多分最初からブクマをつけません。

なぜか、と言われれば、女性の心理が全く持って理解不能だからです。



女性は、「一途」や「溺愛」が大好きです。

(ヒーローがヒロインを)最初っから溺愛しているものはもちろん、最初がツンツンな相手や何らかの理由で嫌われている相手でも、そこから段々気持ちが移り変わって、最後に一途になればそれにきゅん、となる方が多いわけです(ならない場合もありますが、それはおそらく理由と誠意が足りない)。


逆に、「浮気」、「ふらふら」――これらは天敵でございます。目の仇に思う女性がどれだけ多いかは、浮気ものを書いてなおかつ復縁させた作品を書いた私が一番実感しました(これは別のテーマがあったのであえてです。浮気な男性を肯定する気は毛頭ありません。作品を肯定された方でも「小説だからこそできたね」と仰った方は多かったですし、私もそう思います。)


これはなろう以外の恋愛もの、少女漫画、なろうの恋愛もの、ムーンを少しでも覗いていただければ、男性でもお分かりになるかと思います。



「おいおい待てよー。じゃあヤ○チ○ってなんでうまくいくわけ?」

「浮気されても自分のところに帰ってきてくれればいいっていう女性だって現実にいるだろ?」



はい、おりますね。ですが、これはなろうハーレムとは前提が違うのです。

前者の場合、「そもそも女性が体の関係を楽しんでいることが多く、相手のことを本当の意味で好きだとは思っていない」ことが多いです。お互い割り切った関係です。

後者の場合、「なんらかの別れられない理由があるだけ」のことが多いです。そうでない場合もありますが、その場合も(本当に相手が好きであれば)女性の心の内には、相手への怒りや不満、虚しさ、苦しさが溜まっていきます。いつかは爆発する時限爆弾があり、そのタイムリミットがどれだけあるかというだけの話です。



では、なろうのハーレムものの女性を見てみましょう。


「一生お傍に!」

「命を捨てても○○と一緒にいたい!」


女性からの気持ちはとてつもなく強いです。溺愛です。


それなのに、「あなたがそう言うなら仕方ない」と言ってハーレムを許すんです。

中にはハーレムの女性同士が仲良くなっているものもあります。

最初は嫉妬しても、愛する主人公に構ってもらえたらころっと機嫌を直し、そのあと仲直り。


「えええええ!?なるわけねぇだろ馬鹿野郎!」「なんだこのチョロインたちは」です。


本当に主人公が好きなら、女性たちは表面上「うん、じゃあ仲良くしよっか」と言っていても、中身はどろどろのはずです。ちょっとでも他の方の相手をしていたら、激しい怒りと嫉妬を猛らせます。特に肉体関係まであればなおさらです。

これらの薄汚い人間っぽさが描写されていれば、納得できます。

ですが、ハーレム作品の読者は、美少女たちのこんな醜い中身やドロドロの女合戦なんて見たくないでしょうから、そんなものを作者も書いたりはしません。

そして、描写されていると作者様が思っていても、されてはおりません。本当に中身がここまでだったら、実際は描写した瞬間に話が崩壊するんです。平和になるはずなどないのです。お互い相手を貶めることを考える、そして耐えられなくなった人が凶行に走るか、その主人公を諦める。これが普通です。純粋な女性心理からは、ハーレムは成り立ちえません。



「待て待て。歴史上ハーレムってあるじゃないか。大奥とか、イスラムとか、(歴史上は少ないと思われますが)後宮とかさ!」


はい、ございます。

が、あれは「一夫多妻が慣習上当たり前で、それに逆らうことを観念できない状態にあるから」成り立つのです。

女性たちが、「一夫多妻」をどこの家庭でも起こる当然のものだと認識している、宗教や生い立ちからそれを当然だと思っている――だからイスラム系で女性たちが醜く殺し合いをすることはありません。

まぁそれでも大奥などでは、恐ろしい足の引っ張り合いがあったとかなかったとか(まぁあれは、純粋な恋情だけではありませんが)。



一方、なろうの(中世風)異世界では、一夫多妻制を強制される環境ではないと思います。

また、旅をしている一般人又は貴族の主人公がお相手ですから、強制的に一緒にいなければいけないわけでもありません。

いつでも離れられる、純粋な感情だけが両者をつなぎとめる絆なのです。


だから、ハーレム要員の同性から見たら、「ありえねぇ」となり、急激に冷めるわけです。



男性の方から見たら「逆ハー」も同じはないですか?

好きな女性に他にも男がいるって知ったら、ものすごく怒りませんか?不愉快じゃないですか?それを「うん、お前が幸せなら」と笑って許すヒーローたち。

同性としてそれに怖気が走るのではないでしょうか。「ありえねぇ!」と。





・女性視点で逆ハーを見たとき(中心が同性)


この場合、読者様は二通りに分かれます。

「夢世界だし、いいじゃないの!イケメン万歳!見ていて幸せ!!」

として、許容できる方と、

「なんだこのビッチ。こんなにふらふらする主人公に感情移入とかできないんですけど」

として許せない方。


ご都合主義で、逆ハーを求めている方が多いからこそ許され、人気も出るけれど、それでも「うーん?」と納得がいかず、離れる(もしくは読まない)読者もそれなりにいるのです。

特に主人公の女の子にそんなに魅力がない場合、まわりのヒーローたちが現実味のないお人形に見えてしまい、冷めます。



男性から見た逆パターン(つまり、ハーレム)は、どうでしょう?

多数派の方がお好きなのは、おそらく「ご都合主義でいい」し、そのあたりの整合性がないのは飛ばせるから!の方が多いからな気がします。

男性心理はよく分かりませんが、生物的な意味で、女性よりその傾向は強いのではないのかな、と思います。



【作者目線】


さぁ、上記を見て、どうでしょうか。

私は、共感できるもの(体験でも、想像でも、妄想でも)でないと、絶対に書けません。

いや、機械的には書けるでしょうけど、多分途中でとてつもなくつまらなくて、書くのを投げ出します。そんな気持ちで作られた私の作品を見せられた読者様も、(一定までは楽しんでいただけるかもしれませんが)、のめり込んで「面白い!」とまでは感じていただけない気がします。

ですので、私は逆ハーが書けないのです。



あ、ちなみに、「三角関係」は書けるし、かなり好物です。

一人の女の子対二人の男の子は実際に書きました。それがないと、恋愛メインのストーリーでは話が平坦になって飽きますし、揺れ動く気持ちこそが書いてて楽しいのですもの。


逆に、一人の男の子対二人の女の子。これも許せます。

実際の人気な商業作品で例を挙げると、「フルメタル・パ○ック」(ライトノベル)とか「犬夜○」(少年漫画)とか。

あれらは、主人公の男の子が魅力的で、ヒロインたちが主人公に惚れる気持ちは分かります。女性としての個人的な感情から言えば、――特に犬○叉はですが――「ふらふらすんなー決めろー!」と思いますが、それでも読み続けてしまうんです。

それは、最終的にどっちのヒーローも「一人」を決め、そのお相手を大切にするからです。フルメ○ル・パニックで言えば、ソース○くんは、か○めちゃんを選んで最後まで死闘を続けますし、○夜叉なら、桔○を見送るときには、元カノをいとおしむ気持ちしか残っていない。最後はかご○ちゃんを大事にしています。

そして、これらでは、ヒロイン同士がもやもやした鬱屈とした感情を抱えるところが見事に表現されているのです。お互いに友情や共感もあり、けれど嫉妬やもやもやもある。

だからヒロインの気持ちは分かるし、個人的に許せるんです。



しかし、ハーレム・逆ハーレムものは、最終結末が一人ではありません。



というわけで、ここまで読まれた奇特な書き手の皆様へ


(ハーレム、逆ハーもの主人公と反対の)異性読者の完全な説得は無理と分かっていただけましたでしょうか?


となれば、同性読者を掴んで離さないことが大事ですから、いかに同性に共感してもらえるかを意識して書くのがいいのではないでしょうか。同性であれば、「絶対、なにがあっても無理!」とまでは思わないことも多いと思います。



どなたか、論破していただく――好みの問題ですので、論破は難しいとしても――こんな私にも反証になるような作品があるぜ!という方は教えていただければ嬉しいです。異論も別に構いません。一意見ですから。


(ちなみに、前に一度勉強にノクターン累計作品を見て、くらっとしました。「おおおお、おう!」と女性側から男性の欲求の深淵を覗いた気分でした。早々に尻尾を巻いて退散いたしましたが、あちらではほとんどの作品が「ハーレム」なのに、私ですら気にならなかったです。それは、「そういう目的」だと割り切っていて、お話としての整合性を求めていないからな気がします。)





ハーレム・逆ハー談義で終わりましたが、ジャンル問わず、キャラクターが出て来る以上、全て「心理描写」と「その理由」が大事になるのだろうと思っております。


恋愛は特に「心理」がメインになるので、恋愛ジャンル読者層の多くを占める女性読者にとって、その描写や理由に納得がいかなかった瞬間に「気分が悪い」「分からない」となり、「冷めた作品」とか、「好きでない作品」に入ってしまいます。


恋愛の中で、どのようなジャンルのヒーロー(わんこ系か、王道か、ひねくれヒーロー系かとか)やヒロイン(鈍感系、勘違い系、無関心系、惚れやすい系などなど)が人気か=需要があるかは、累計ランキングなどを読んでいただければ掴める、かもしれません。

(個人的には、ヒロインは適度な鈍感・天然系、ヒーローはわんこ溺愛系が鉄板な気が。趣味で真逆であるドS鬼畜ヒーローを突っ走らせている私が言えることではありませんが……)

それを選ぶかは作者様次第です。


もちろん、ストーリー構成が魅力的なことが一番だとは思いますけども!



ただ、選んで書いた以上、一度読んでくださった読者様を離さないように、魅力的に描きたいなぁと思いました。

感想文おわり!


※ 追記:実は、ムーン作品で唯一、「逆ハーなのにストーリーが破たんしていない、納得」と思える秀作があったのです。

作者様の許可をいただいていないので名前は伏せますが、女性が急激に減少して一妻多夫(確か上限4人)がとられており、どの女性も夫をたくさん持っている世界に異世界トリップした女性のお話でした。現代日本の感覚を持っている女性が主人公だったので、かなり悩んでいる描写があったことと、途中でかなり過酷な状況で「これならこの二人が夫になったのは分かるわ」と思えるほどの理由づけがあった状態で、男性二人が(肉体関係のある)夫になったという作品です。

このような場合、男性の読者様は「逆ハー」許容できるのでしょうか?


感想で「なろうテンプレ世界では魔物が多く男性が少ないから、女性が自分を庇護してくれる男性に集まるのが当たり前だから納得できる」との貴重なご意見をいただいたので、気になりました。もしこれをご覧になった方がいれば、気が向けばお教えくださいませ!

もしくはどなたか男性作者様でこういうの考察していただけないかなぁ……

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