学校 三角関係 自殺
古びた校舎には、人気はない。昼と夜を断つ光が辺りを照らしている。砂利にまみれた床を土足で踏みしめると、不快な音が響き渡る。
懐かしいけれど、いい思い出ではない。輝かしい青春は、今思い出すと全て嘘のようだった。何も知らずに笑っていた自分が馬鹿みたいだ、どうしようもなく。
一歩一歩進み、10年も前の自分たちの記憶を辿る。教室、体育館、保健室……。どこにも残っている、詰まっている、思い出たちが。暖かで優して、そしてどこまでも残酷な時の名残りたちが。
彼女はずっと自分なんか見ていなかった。まるで遠くを眺めるかのようにアイツを見つめていた。自分は、そんな彼女のことをテレビ画面の向こう側の出来事のように覗いていた。そんなことがずっと続いた。アイツだけが何も知らなかった。
最後の思い出が詰まった屋上は、すでに闇に飲まれていた。普段立ち入り禁止であったためここだけがやけに小奇麗で、まるで別の世界のようだった。転落防止にしては頼りない柵に手をかけて下を覗くと、そこには夜の世界が広がっていた。
ここに来たのは、これで2度目だ。初めて訪れたあの日は、忘れもしない彼女との別れの日だった。煮えきらない3人の関係が長く続いていた矢先だった。最期の挨拶もそこそこに、彼女は時分に向かってこんな事を言っていた。
私は、二人のことが大好きだったんだよーーー
名前呼ばれた気がして振り返ると、そこには忘れもしないアイツが立っていた。息を切らして必死の形相で、そこに立っていた。
「お前、こんなところで何をしてるんだ」
あの日々と変わらない態度で、でも随分と変わってしまった様子でアイツは少しずつ近づいてくる。最期の日が脳裏に蘇ってくる。もしあの時、自分でなくてアイツが彼女を止めに行っていれば。
「お前はいつも遅いんだ。遅すぎたんだ」
柵を乗り越え、あと数歩先は闇の底となった。その様子を見て、アイツも歩みを止めた。泣きそうな顔だった。
「あの日は確かに間に合わなかった。けど、今回はまだ間に合う……!」
そんな、自分だけ傷付いた顔をして。自分だけが苦しい顔をして。自分だけが全てを背負った顔をして。だからアイツが嫌いだ。
大嫌いなんだ。
「お前はあの時から全てが遅かったんだ。今更、何も取り戻せない。お前だけが、お前だけが……」
声も体も震える。怒りが沸き上がってくる。心の底から、今まで押しとどめていた熱い波が体を巡る。理性が全て飲み込まれたとき、その波が声となって口から溢れ出た。
「お前があの時来ていれば、彼女は死なずに済んだんだ!お前が彼女の想いを知っていたら、こんなことにならなかったんだ!お前が彼女を支えていれば、彼女はそんな想いをしなくて済んだんだ!俺は俺の出来ることをしてた。お前はお前の出来ることをしなかった。俺にはできないのに、お前にしかできないのに、だ。そんなお前には、俺を止める資格はない」
波に飲まれたアイツは、藻掻き苦しんで顔をして俯かせた。それを見たらやはり不快で、早く視界から消し去りたくてアイツに背を向けた。
アイツは何も言わなかった。
僕は何も言えなかった。
彼の言っていることは正しかった。あの日々の浅はかな思いのまま動いていた自分のせいで、全てが失われた。何も知らないフリをしていた自分のせいで、あの日々が壊れてしまった。
あの日に戻れるなら、どんな犠牲を払ってでも彼女を引き止めたい。三人の関係が拗れようと彼女の想いを受け止めたい。今までの日々を過去にしてでも、彼女の支えになりたい。
僕は、三人で過ごす日々が好きだった。だから彼女の想いに気付かないフリをしていた。少しでも僕らの関係が変わってしまったら、全ての日々が消えてなくなりそうで怖かった。
しかし、全く予期しなかった事で、その日々は崩れさった。
「」
未完。
オチ迷子。
修正予定。




