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戦国リーゼント  作者: 寛喜堂秀介


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お前の危機なら仕方ない



 信長の元へ、正道出奔の知らせが届いた。


 信長は激怒した。

 だが同時に、心のどこかで安心した。

 熱田を敵に回せば、織田家が揺らぎかねない。

 その危機を脱したという安堵からだ。


 しばらくして、文からの手紙が届いた。

 信長の、正道への態度を非難する言葉がつづられていた。



 ――誰もかれも、わしを理解せんか……



 信長の言うことは無茶だ。

 誰もが天下人の視点でものが見えるわけではない。


 国家のことなど頭の端にもない。

 愛情と、血縁と、そして義理がなによりも優先される。

 そんな狭い世界に、みな生きている。



「山田の、お主だけは。なにがあってもわしを認めていてくれると、信じていた」



 失望ではない。

 ただ悲痛な、それは独白。



「――いったい誰が。なにゆえ、このようなことに」


「……おそれながら」



 そんな信長に、小姓がそっと耳打ちした。


 佐久間排斥に繋がる、信盛とのやりとり。

 そこに権謀の毒を仕込んだ人物の名を。



 ――明智日向守光秀。



 証拠はなかった。

 しかし信長は怒りのままに、文机を叩き壊した。







 信長の激怒を伝え聞いて、明智光秀は絶望した。


 信長は好悪の激しい人間だ。

 一度嫌えばとことん嫌い抜く。

 出来る人間を積極的に排除はしないが、必要がなくなれば。



 ――陰謀をたくましくしすぎたか。



 自嘲じちょう混じりに、光秀は自らを顧みる。

 陰謀、謀略、武略に知略。ありとあらゆる手管てくだを使い、がむしゃらに出世を求め、生きてきた。


 それでも懸命に戦って。

 光秀なりに、誠心誠意仕えて。

 ふいに、四国戦略から外された。


 このままでは排斥される。そう光秀は感じた。

 政略に関わることを許されず、一介の方面軍団長に落とされ、功を立てれば九州の端――それこそ日向ひゅうが国あたりの一国主。失敗すれば、佐久間の二の舞だ。



 ――人生、五十年も生きれば、ここで果てようとも、十分か。



 光秀は独白する。

 すでに、存分に名を為した。

 たとえ末路が流浪の果ての死であっても、十分と言えよう。



 ――いや。



 光秀は自らの言葉を否定する。



 ――まだ足りぬ。どうせ残り少ない人生なら。幼い我が子に土地も残せないというのなら……



 信長は本能寺に居る。

 連れているのは、わずかな供廻りのみ。

 さらには嫡子信忠のぶただも在京しており、しかも京にまとまった兵力は存在していない。

 両者を同時に殺すのは容易で、しかもそれが成功すれば、織田軍団は空中分解するだろう。



 ――たとえひと時でも、天下様として明智光秀の名を為さしめたい。



 苦悩の末、光秀は決断した。



「――敵は、本能寺にあり」







 本能寺は炎上していた。

 戦いの中で、ゆっくりと火が回っていく。



「是非も無し」



 襲い来る明智軍に、信長は応戦する。

 寡兵を率いて自ら弓を射、槍をしごいて戦った。

 戦って、戦って、戦って戦って――戦いまくった。


 戦いながら、信長の脳裏に、走馬灯が走る。

 下天の一日にも届かない、わずか四十五年の人生。そのなかで、懸命にあがいた毎日。


 そして思い出す。

 父を、義父を、平手政秀じいを失い、孤独の中で、今川義元の大軍に戦い挑んだあの時。


 なにもわからないのに助けてくれた――親友ともがいた。



「山田の」



 正道の行方は、いまだわからない。

 後悔しかない。唯一対等な存在を、彼は自ら捨ててしまったのだ。



「山田の……すまん」



 信長は痛恨の念を言葉にする。


 その時。

 東の彼方から、けたたましい爆音が響いてきた。


 明智の雑兵を蹴散らしながら。

 スピードひとつ緩めずに突っ走ってくる、たった一つの影。



「あれは!」



 信長は声をあげる。


 改造バイクに長ラン姿。

 天突く巨体に金属バット。

 不敵な笑いを浮かべる男。

 白髪しらが混じりのリーゼント。



「山田の!」



 信長は叫んだ。

 正道がにやりと笑い返す。



「――助けに来たぜェ……織田のォ!」






 羽柴秀吉「オート大八車でブーン」


 北陸方面軍北近江衆「モーター小早でスイー」


 細川藤孝「(協力を)お断りします」


 筒井順慶「お断りします」


 浅井長政「泳 い で 参 っ た !!」


 織田信忠「\ここにいるぞ!/」


 光秀「」




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