自己紹介
「始まってしまいましたね」
「なんで悲しそうなの~?」
「だってこんな見切り発車で小説とも呼べなさそうな話の登場人物なんて、後先不安じゃないですか」
「後先なんて考えんじゃねぇ!今を生きてやるんだ!」
「どこかの予備校先生みたいですね~」
「いつを生きるの?」
「今でしょ!」
「もう落ち目だとおもうよ~」
「お前が振ったんだろ」
三人のヒロインはかき氷をかじっていた
「やっぱり出オチか?」
「さすがに鍋の次の日にかき氷は」
「いろんな意味で寒いね~」
扇風機は首を振る
「そういえば私たち自己紹介したほうがよくないですか?」
「なんで?」
「わ~い、自己紹介だ~」
「だって私たちはもう顔見知りですけど、読者の方々は全然私たちのこと知らないと思いますから」
「読者なんていんのかよ?」
「さぁ?」
「自己紹介だ~」
「でも一応やっておきましょうよ」
「というかなんで自分で紹介しなくちゃなんねぇんだよ」
「じっこじっこしょうかい~」
「普通の小説だったら、作者が登場人物を懇切丁寧に描写して、読者にイメージを与えるってなもんだろ?」
「まず普通の小説ではないです」
「アタシの完璧なまでの美貌を余すことなく表現してもらわないとな」
「それは難しいと思います」
「どーして?」
「じぃこしょおかぁぁい~」
「考えて見てください。第2話ここまでほとんど私たちがおしゃべりしているだけで、状況とか人物の描写なんて」
三人のヒロインはかき氷をかじっていた
扇風機は首を振る
「だけですよ」
「た、確かに」
「それに1話の発言。確か雑ポニーテールなんて言われてましたよね」
「そういえば。こりゃ確かにダメかもな」
「じーこじーことるしえじーこ」
「そんじゃ自己紹介やるか」
「誰からいきますか?」
「は~いは~いは~い、やる~」
「どうしよっかねー順番は」
「じゃんけんで決めましょうか」
「はいはいはいは~いなんで無視するの~はいはいね~ってば~」
「ん?あぁなんか言ったか?」
「ずっと無視してたら、無視し慣れちゃいました」
「ひどいよ~、慣れるの早すぎるよ~」
「まぁやりたいということなら一発目お願いします」
「やった~!じゃあいきま~す」
「こんにちは~。ボクはアニメの世界のヒロインだよ。よろしくね~」
「以上?」
「以上~」
「本当に以上?」
「本当に以上~」
「あんなに張り切ってたのに?」
「張り切っても以上~」
「いいんですか?それじゃ読者は全然わかんないと思いますけど」
「いいのいいの。もともとボクはアニメのヒロインなんていうウルトラ抽象的な存在なんだから、みんなの想像してくれた姿がボクの姿なんだよ」
「ふーん」
「ふーん」
「次どっちいく?」
「私がいこうかな?」
「なんで無視なのさ~」
「自己紹介はもっと自分をアピールしないといけませんよ。よーし」
「?」
「?」
「じゃーん!私はゲームのヒロイン。君のハートを奪っちゃうぞぉー!てへ」
「うわっ、あいつ抜け駆けしやがった」
「……せっかくイイコト言って票を集めようと思ったのに~……」
「ん?なんか言ったか?」
「いえいえいえ~、なにも言ってないよ~」
「夢の世界でレボリューション!私の魂はいつでも君のもの!世界の果てまで君を守りにってうわぁあ!なにするんですか?」
「ボクのカゲを薄くしやがって~」
「ちょっと待って、待ってくださいー」
「はぁ、あいつらのことはほっといてアタシの自己紹介。ども!マンガのヒロインっす。才色兼備で容姿端麗な女の子です。よろしく!」
「「ふざけるなーー!!!」」
「こらっ、待てって!ストーーップ!」