あらすじ
碧は風の町に住んでいる。
海と山に囲まれたその町で、碧の家は老舗旅館を営んでいた。
この町では家業を手伝うと成績に加算されるので、碧もその例にもれず旅館の仕事を手伝っている。
旅館には長期の滞在者もおり、その一人が都からやってきたヨクという風の研究者だ。ヨクは気難しく、仲居たちは苦手としていたけれど、物をよく知っており時々話し相手もしてくれるので碧は懐いていた。夜、日が落ちてから中庭でぽつりぽつりと、学校での出来事を語ったり、ヨクの子どもの頃の話しなどを聞くのが好きだった この風の町には伝説がある。
この町には風を自在に操り空を飛ぶことができた先住民がいたというのだ。確固たる物証がないため、史実には残っていないけれど、伝説として町に語り継がれていた。
碧の住む町はその名の通り、よく風が通る町だったため、山の稜線には三枚羽根の風車が建っている。それは発電のために建てられたのだと言われていた。が、そこには闇に隠れ、怪しい男たちが出入りしていた。
これは発電のために建てられた風車ではない
その矢先、碧は生まれて初めて風車が三日続けて止まっているのを目にする。
風の町に迫る危機の中で、碧はどんな道を選ぶのか。
ヨクの正体は?
ここではないどこかの町の長編ファンタジー小説。