夕陽と夢 【月夜譚No.418】
掲載日:2026/09/06
バンド練習の帰り道が好きだった。赤い夕陽と川辺の遊歩道、そしてそこに伸びるギターを背負った影。何気ない会話をしながら零れる笑い声は、かけがえのない青春の一ページだ。
高校の女子バンド部は数名しかいない小規模なもので、活動も割とのんびりとしていた。それでも練習は真面目にやって、文化祭などといった行事の際は、最終下校時間まで学校に残ることもあった。
当時の自分はそれが当たり前で、そんな日常を恋しく思う日がくるなんて思いもしなかった。
仕事から帰って習慣でつけたテレビの画面に、目が釘付けになる。音楽番組で有名タレントと会話をする、緊張を含んだ笑顔。
忘れるはずがない。青春を共に駆け抜けた、一つ下の後輩だ。
テレビの光を照り返した瞳から、自然と涙が溢れる。夕陽の中で夢を語ったあの恥ずかしそうな笑顔が、そのままそこにある。
あの日の自分達に、今の感情を伝えたい。温かくて、嬉しくて、けれど少しだけ淋しい、この気持ちを――。
誇らしげに歌う彼女の勇姿を見届けてから、私はスマートフォンのメッセージアプリを立ち上げた。




