表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/18

第14話 帝都祓魔学苑入学試験①

 山道を歩き、とうとう街へと到着した。


「お、おお~! 人間が密集してる光景を見るのは百年ぶりだ!」

「発言が人外すぎるからやめなさい。バレたらどうするのよ」


 俺が今までいたのは、過ぎ去った季節に取り残されたゴーストタウン。

 きちんと文明が進んでいる街に出てきたのは本当に百年ぶりだ。


 見るに、それほど近未来化はしていなかったが、やはり百年前とはどこか雰囲気が違って見えた。

 フクロウのように、目を輝かせながらキョロキョロ辺りを見渡す。


 恥ずかしいからやめて頂戴! と言われるかと思ったが、隣でくすっと笑っているのが目に入った。


「そろそろ迎えの車が来るから、それに乗って一旦東京の借家に行くわよ」

「了解! いやー、にしてもやっぱ娑婆の空気は最高だぜ!」

「はいはい。はしゃがないの」


 しばらくすると黒塗りの車がやってきて、スーツを着た人物が扉を開ける。

 もしかして美紅ちゃんって、結構すごいとこの子なのだろうか?


 車内でこれからの綿密なスケジュールを彼女から教えてもらうことに。


「その入試の受験日っていつなんだ?」

()()よ」

「…………すまん。どうやら耳クソが詰まっててなんも聞こえなかったわ。もっかい言って?」

「琴弧の耳にクソなんて詰まっているわけないでしょ! いい加減にして頂戴!!」

「アイドルはおならしないみたいな理論じゃんかよ! って、マジで明日なの!?」

「ちゃんと聞こえてるじゃない! 耳クソが詰まってると言う発言を撤回しなさい! ちょっと! 聞いてるの!?」


 え、明日!? 明日受験日なの!?

 何も準備してないし、祓い屋界隈がどんな感じなのかも全く知らないペーペーだぞ俺。


 落ちたら三年後まで待たなきゃいけない。

 そんなの待っていられるの? いやムリムリ!


「まあ安心しなさい。今日は徹夜でみっちり現代についてを教えるわ。それに、あなたの受験方法は()()()()よ」

「推薦入試?」

「えぇ。私は特別入試枠だから、一人だけ推薦して受験させられるの。本当は琴弧を推薦するつもりだったけど……。

 だから筆記試験はなくって、霊力検査・実技・浄魂(じょうこん)の三つだけよ」

「ジョーコン?」

「浄魂は悪霊とかを祓うことの総称ね」


 筆記試験があったら確実に落ちていただろうが、実技とかならまだ希望はありそうだ。


 それにしても、推薦入試か。懐かしいな。

 生前も俺は大学に指定校推薦で入学したが、普通受験の人たちからズルいと言われたなぁ。


 まさか百年越しに再び受験することになるとは思いもしなかった。


「でも気を付けなさいよ。推薦入試の合格率は三十パーセントほどだから」

「ダメじゃん! 俺落ちちゃうじゃん!」

「落ちたらその程度の亡霊だったってことでしょ。精々琴弧のために気張りなさいよ」

「そりゃもちろん全力を尽くすけどさぁ……」


 多くの優秀な祓い屋が排出されたと言われている帝都祓魔学苑。

 俺みたいな百年前に取り残されて、亡霊な俺が受かるのだろうか?


 不安を募らせながら、車に揺られた。



  #  #  #  #  #



 ――翌日、受験日当日。


 俺は徹夜でみっちり現代の情勢やらなんやらを頭に詰め込み、学園へ向かっていた。


 一晩美紅ちゃんと同室で勉強をさせてもらったが、はっきり言って地獄であった。

 深夜、男女二人きり、いい雰囲気……とかには一切なっていない。


 スパルタ教官のようにビシバシ叩き込まれた。

 とてもありがたかったが、生前の受験の地獄を思い出して泣きそうになってしまったよ。


 まあその甲斐あってか、今の俺は自信に満ち溢れてるぜ!

 何も勉強していないのにテスト直前で「俺、いけんじゃね?」となるあの現象である。


「零太郎、はいこれ。仮受験票」

「さんきゅ。って、仮?」

「そう、仮よ。真の受験票は入り口で貰えるの。理由はすぐわかるわ」

「……? はぁ」


 美紅ちゃんから渡されたお(ふだ)のような受験票。〝(へい)○四七(まるよんなな)番〟と達筆に書かれている。

 なぜ〝仮〟なのだろうか。


 そんな疑問を抱えながら歩き続けて数分、学園に到着した。

 入口は雲を貫くほどの大きさをした鳥居で、奥には荘厳な和を軸とした建物が鎮座している。

 

 そして、大量の人が底には溢れかえっていた。


「すげぇ人の数だ! まるでゴミのようだ!!」

「何それ。私知らないわ」

「じぇ、ジェネレーションギャップ……ッ!?」

「あなたのジェネレーションは百年前だしギャップが合って当然でしょ」

「じゃあ今度一緒にそれ見ようぜ、めっちゃ面白いぞ!」

「……まあ、合格したら考えてあげなくもないわ」


 ツンデレ美紅ちゃんとの約束をしながら、受験生が並ぶ列の最後尾に並ぶ。

 しばらく談笑しながら待っていると、俺たちの番が回ってきた。


「それでは只今より、霊力検査を始めます。仮受験票はお持ちですか?」

「ええ」


 先に並んでいた美紅ちゃんが受付の人に受験票を手渡す。

 それとトレードするかのように、受付の人から一枚のお札を渡されていた。


「零太郎、これが帝都祓魔学苑受験、最初の難関である第一次試験〝霊力検査〟よ」

「これで霊力を検査すんのかー。でもなんで難関なんだ?」

「そりゃもちろん、規定量未満の霊力だったら問答無用で落とされるから」

「えぇ! そうなの!? ……あっ、だから仮受験票なのか!」


 最初の霊力検査で落ちるのが大勢いるから、まずは仮受験票でこれを検査する。

 合格だったら真の受験票を渡すということなのだろう。


 最初っからフルスロットルだな、帝都祓魔学苑。


 ちらりと横を一瞥してみると、阿鼻叫喚している受験生たちが目に入った。


「ふぬぬぬぬぬ!」

「燃え上がれ俺の霊力ぅうううううおおおおあああああああああ!!!!」

「わっ、規定量越えた~っ♪」

「チクショウ! また一次試験で落ちた!!」

「フッ……ここで落ちる雑魚どもが……」

「また数年後くるしかないな」


 手に持つお札からは、水が出たり炎が出たり、オーラが出たりと。

 十人十色の反応をしていた。


 反応を示した後は、お札が焦げて消えていくものや残るものと別れている。


「美紅ちゃん、このお札って?」

「これは人が持つ霊力の量や性質を確認する護符よ。炎の適性がある術式なら炎が出て、雷の適性がある術式は雷が出るわね。霊力量が多いほど反応が大きくなるわよ」

「へぇー! ちなみに霊力量ってどれくらいあればいいんだ?」

「護符が焦げてなくなれば規定量越えで合格ね」


 美紅ちゃんはそのお札、もとい護符を強く握り、霊力を込めた。


 バチチッ……バリバリバリバリバリッッ!!

 護符から紅の稲妻がおよそ五十メートルほど天に昇った。


 あんなにも騒がしかった受験会場が一瞬静寂に包まれる。


「やべええええ!?」

「なんだ今の霊力!」

「あ……霹靂家の鬼人、霹靂美紅だ」

「成程、あの家の者なら納得だ」

「いや、それでも膨大過ぎじゃんね?」

「今年は倍率ヤバいじゃねぇかよォ~~っ!」


 美紅ちゃんは振り向き、「ふっ」と鼻で笑って見せた。

 こんなもんよと言わんばかりのどや顔で可愛い。


「あ……き、規定量余裕の合格でございます! 真の受験票を受け取りください!」

「ありがとうございます。……ほら、次は零太郎の番よ。ちゃちゃっとやっちゃいなさい」


 そう言って俺を急かす美紅ちゃん。

 今のを見せられて次にやるのは中々酷なものじゃあないか?


 ま、それほど目立たなければすぐスルーされるか。

 前に進み、受付の方から護符を受け取った。


 それに力を込める。

 刹那、世界が一瞬真っ白になった。


 その直後。ゴオオオオオオオオオオオオッ!!!!

 爆音とともに、雲まで届くほどの蒼い炎の柱が吹き上がる。


 一瞬で周囲の地面を凍て尽かせ、受験生を次々と尻もちをつかせた。

 さらに追い打ちをかけるように、雲に届いた氷炎の影響か雪まで降り始める。


(ん~~…………。やっべ、やりすぎた! あははっ!!)


 天を仰ぎ、俺は乾いた笑いを漏らすのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ