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第13話 これからのこと

「――……と、こんな感じで琴弧ちゃんの身体に入ったってわけだ。嘘はもちろんついてないぜ?」


 琴弧ちゃんの友人である美紅ちゃんとの激闘後。

 肩を並べて石段に腰を掛けて、俺は琴弧ちゃんについての全てを話した。


「……嘘よ」

「嘘じゃねぇって!」

「琴弧があなたを好きになるなんて嘘! 絶対私の方が好きよっ!!」

「……それはどうでもいいけどさ」

「どうでもよくないわよ! こんなの……こんなの寝取られじゃないっ!!」

「えぇ……」


 美紅ちゃんはだいぶ琴弧ラブみたいだ。

 俺は間男になってしまったのだろうか……? 悪いことをしてしまったな。


「そんで、俺は琴弧ちゃんの魂を元に戻すのと、俺自身が蘇るための方法を探したいんだ。それで祓い屋になろうと思ってるんだが、美紅ちゃんはどう思う?」

「そうね、祓い屋になるのはいいと思うわ。それと、学園に入学しとくのもいいわね」

「学園? 祓い屋の学園があんのか!?」

「東京にある〝帝都祓魔学苑(ていとふつまがくえん)〟。そこで祓い屋として動きつつ、魂の研究をするのが最善よ」


 どうやら祓い屋が今一番有名な職業と琴弧ちゃんから教えられていた。

 そりゃ祓い屋の学園もあるか。


「学園か~……俺も入学できんのかな?」

「基本的に実力主義だから行けると思うわ。けど、琴弧としてではなく零太郎として入学すべきね」

「なんでだよ? 琴弧ちゃんとしてじゃ問題でもあんのか?」

「本人も言ってるからいいけど、琴弧の家は色々ときな臭いのよ。呪いも、家族は知っててあえて放置してた可能性が高いし」

「マジですか!?」


 確かに、琴弧ちゃんが頼れる人は一人もいないと言っていたな。

 美紅は友人として巻き込みたくないってのが分かったが、家族はそういう理由があって頼れなかったのか。


 魂から相手の記憶を読み取る術式で、何かしらの事実に気が付いたんだろう。


「それと、琴弧の中からは極力出ないこと。あなた今〝蒼ノ怪(アオノケ)〟って名付けられて指名手配されてるから」

「え、俺指名手配されてんの!? まだ何もしてないんだけど!」

「存在が指名手配なのよ。国家転覆級の最強な霊力持ってるからね。それに、霊が本人に成り代わるのも禁忌レベルとされてるから」

「世知辛い世の中じゃ……。俺は生きていけるのだろうか」


 百年鍛え続けて身体を借りた結果、俺はお尋ね者になってしまったらしい。

 しかも国家転覆級の最強亡霊? ちょっと、努力をしすぎてしまったかもしれない。


「ってか、俺って体から自由に出入りできんの?」

「ちゃんとした契約方法をしていたらできるはずね」

「ワットイズちゃんとした契約方法」

「互いが承諾し、心の内を話して、そして……」

「そして?」

「……むがぁーー! 接吻(キス)したかよ馬鹿零太郎! 私は幼い頃に琴弧のほっぺにしただけなのにぃいいい!!」


 怒髪冠を衝く勢いで怒りを露わにする美紅ちゃん。琴弧ちゃんのことが本当に大切だったようだ。

 そういえばあの時、琴弧ちゃんにキスされてたな。じゃあ出入りは可能なのだろう。


 一回試してみるか。


『おっ、本当に出れた!』

「……(なかみ)、つまらない容姿ね」

『つまんねぇナリで悪うござんしたよーだ』

「違うわよ。とんでもない不細工だったら祓うことも視野に入れてたのに、祓い損ねたじゃない。つまらないわ」

『えーっと……ありがとう? 美紅ちゃんはツンデレだな~』

「誰がツンデレよ! 舐めた口きくなら祓うわよ!?」


 美紅ちゃんのツンデレ具合は筋金入りみたいだ。

 可愛いなと思いつつ、俺は琴弧ちゃんの身体に戻って立ち上がった。


「よっし、そんじゃあ学園入学のために色々するか! 美紅ちゃんと一緒なら試験でも学園でも頑張れちゃうな」

「いや、うーん……。入試は受けるけど、学園に入学するかはわからないわよ?」

「なんで!? えっ、お、俺のことそんなに気に入らないのか……?」

「気に入らないのは事実だけど別の理由があんのよ。

 妹が呪いをかけられてるしそのせいか家族全員なんだかピリピリしてる。だから入学して勉強するより祓い屋として元凶を見つけたいってわけよ」

「そうなのか……」


 また呪いか。

 琴弧ちゃん然り、美紅ちゃんの妹然り。


 ただ、妹ちゃんの方は琴弧ちゃんをは違ってまだまだ猶予はありそうな感じだ。

 大切な人が苦しんでいるのは、耐えられないからな。

 何かをきっかけに消える可能性だってあるんだ。


「……よし、学園入学は後回しだ!」

「はぁ!? 何言ってんのよ! そんなの――」

「美紅ちゃんがなんと言おうが後に回させてもらう。妹ちゃんの呪いを先にどうにかするのが先だ!

 もう二度と美紅ちゃんの大切な人が失わないよう、俺も力になりたいんだ」

「…………」


 俺が彼女の前に立ち、手を差し伸べる。

 きょとんとした顔で、一瞬理解できていない様子だった。


 美紅ちゃんはため息混じりに笑って、俺の手を握る。


「ほんの少し、一ピコメートルくらいだけど、琴弧があなたに惚れた理由が分かった気がしたわ。えっと、その……ありがとう、零太郎」

「そりゃどーも。じゃあもうちょい俺に対しての当たりを柔らかく――」

「調子に乗らないで頂戴、すけこまし変態霊が」

「うぅん、辛辣ぅ……」


 最悪のファーストコンタクトをした俺たちだったが、多少なりとも仲良くなれた気がする。


「そんじゃあ行こうぜ。妹の呪いを解くため、そんで琴弧ちゃんの必ず取り戻すために!」

「そうね、けど学園の入試がやっぱり先。これは譲れないわ」

「なんでぇ!?」

「私の妹の呪いはまだ猶予があるの。けど、帝都祓魔学苑の入試は特殊で、()()()()()しか受験日がないの。

 だから先に入試をして、そこから妹の呪いの件を進めましょ。私たちは、大丈夫だから」

「……そう、か。そこまで言うなら仕方ないか……」


 上手く丸め込まれた気がしたが、今はとりあえず美紅ちゃんの言葉を信じることにしよう。


「んじゃ、一旦の目標も決まったことだし出発しますか!」

「ええ。じゃあ……ん」

「……? えーっと、腕を広げて何してんの、美紅ちゃん」

「霊力使いすぎて歩くのがままならないのよ! おんぶっ!!」

「り、了解……」


 おんぶを要求された。

 俺の方がボコボコにされてたが、まあ元気いっぱいだからいいだろう。


 彼女をおんぶし、石段を下り始める。


「すん……すんすん……」

「あの、美紅サン? 俺のうなじの匂い嗅いでっけど、なんで?」

「ムカつく。中身は違うのにちゃんと琴弧の匂いしてむかつく! スゥーーッ!!」

「恥ずかしいんで辞めてもらえないかなぁ!?」

「うるさい! 黙って吸われてて!!」

「ひぃん!」


 誰かー!

 助けてくれ〜〜!

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