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2025/12/16_20:51:38

僕がこの世界に生まれてきた意味とはなんなのだろう。

遠くから聞こえてくるパトカーのサイレンを聴きながら、ふと考えた。

この世界では、僕達の「愛」は罪になってしまうらしい。

ひたすらに、怖かった。

別れの時が、すぐそこに迫っていることから、必死に目を逸らし続けた。

彼女は、消毒液の匂いが薫る病室で僕に言った。

「私を、殺して」

拒否した。僕が、彼女を殺すわけがない。

そう思っていた。思っていたかった。

彼女の目に浮かぶ涙を見ていると、決心が揺らいだ。それはまるで、強風に晒された、か弱い灯火のように。

いずれ消えてしまうことが定められているように。

どうせ、会えなくなってしまうのなら、その笑顔を見られなくなってしまうのなら、いっそ僕が。

細くて、脆い、彼女の首に、冷めた僕の手をかけた。

彼女は、呻き声1つ漏らさなかった。

人が死ぬ時は、あっけないものだと、改めて思い知った。

本当はただ寝ているだけなのではないかと。

今もなお、僕の腕の中で眠る彼女は、まだ人として生きてると、そう錯覚されるほど綺麗だった。

僕はこの世に何かを残せただろうか。

両親は小さい頃に僕を置いてどこかに行ってしまった。

人付き合いが苦手な僕は、友達と呼べる人間も誰もいなかった。

いじめられることも、人気者となることもない人間だった。本当に、いてもいなくても変わらないような、そんな人間だった。

逃げ込んだ裏路地の廃ビルを登っていく。

少しでも、1mmでも、高い所へ。

彼女の魂が、迷わず、きちんと天へ昇れるように。

屋上への扉を開けると、無邪気な子供がばらまいた金平糖のような、目が眩むほど明るくみえる星が転がっていた。

もう、すぐ側まで来たサイレンの音。

屋上の淵に立ち尽くす僕を、下から撮影する野次馬たち。

初めて。初めて心の底から笑えた気がした。

幸せな気持ちでも、悲しい気持ちでもない。

誰にも汚されていない、汚されることのない、感情だった。

僕は今。初めて、この残酷な世界を知った。だから、終わる。

これは、彼女からの贈り物。

笑い方を知らない僕へ、笑い方を知っている彼女からの贈り物。

きっとこれは、彼女が望んだ笑い声じゃないけれど。

それでも、この高らかな笑い声が、天まで届いていますように。

彼女に、陽葵に、聞こえていますように。

両親に、僕の生き様が見えていますように。

それでは、また。

王十と申します。

この度は、私の拙い作品をお読みいただきありがとうございます。

これが初投稿となりますが、1ヶ月を目安に短編を出して行けたらと思っております。

これからも、どうぞよろしくお願いいたします。


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