表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
静寂の魔導姫 ───引きこもりを望んでいた最強少女は無詠唱魔術で護衛する────  作者: おもち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/19

第17話 生徒会のお手伝い係就任



運ばれてきた料理はどれも美味しく、しかも自由にとって食べる形式だったため、人より少食気味なリーゼリアでも多くの種類を食べることができた。食事中も和気あいあいとした雰囲気で、リーゼリアも食事と会話の両方を楽しむことができた。


あまり過度に話が振られなかったことも、楽しく時間を過ごすことができた要因の一つだろう。予め話すことが得意ではないと告げていたリーゼリアだったため、周りも必要以上に話しかけてくることはなく、食事に集中できた。


取り分けた料理を食べ切ると、リーゼリアは満足したようにグラスに注がれた水を飲む。小さなバイキングを楽しんだ感じた。


そろそろ教室に戻る時間かと考えていると、アシェルと話していたリアンがふとしたようにリーゼリアに視線を向けた。


「そういえば、リーゼちゃんは生徒会に興味はありませんか?」

「……まあ、特には」

「いま庶務の席がひとつ空いているんですよ。興味があるのなら、と思ったんですがね」


そう言われ、リーゼリアは戸惑いながらも首を横に振った。


「……以前、ノアさまたちにも、言われたことがあります。けれど、私は生徒会が務まる器では、ないと考えています」

「そんなことはないと思いますよ。まあ、勧誘はしたかったんですが、本人が望んでいないのならば勧誘しても意味がありませんね」

「……ご、ごめんなさい」


思わず謝ってしまうと、リアンはにこやかに告げた。


「いえいえ。勧誘はしないですが友人として生徒会の仕事は手伝ってもらおうかと思っているので、謝罪されてしまうとこちらが心苦しくなってしまいますよ」

「…………はえ?」

「ちょっ、ちょっと待て! リアン、お前はなにを言っている!?」


リアンの言葉が理解できなくて、気の抜けた声が口から出ると、すぐさまアシェルがリアンに抗議した。しかし、それに対してリアンは肩を竦めるだけだった。


「本来では生徒会役員ではないリーゼちゃんに生徒会の仕事を任せることなんてしないんですが、生憎と生徒会の仕事が多く、手が回っていないことは知っているでしょう?」


リアンのその言葉にアシェルだけでなく、他の生徒会役員も口を噤む。まるで、リアンの言葉の通り、仕事の手が回っていないようではないか。


リーゼリアは小さく挙手をして、リアンというより生徒会役員全員に問いかけるように口を開いた。


「……あの、手が回っていない、とはどういう、ことですか?」

「言葉の通りですよ」

「??」


リアンの返答に余計に分からなくなる。すると、生徒会会長であるユリウスが渋々口を開いた。


「……生徒会の仕事は毎年変わらない。そもそも引き継ぎ資料があるため毎年仕事で困ることもない。けれど、今年は少し問題があってな」

「……問題?」


リーゼリアは首を傾げる。すると、ユリウスは事のあらましを説明してくれる。


「3年前、国を襲ったスタンピードは《静寂の魔道姫》と呼ばれる正体不明の魔術師の手によって鎮められた。今年はスタンピードが起きてから3年目ということでひとつの区切りのような年となっている。そこで学院でもスタンピードを鎮めたということで毎年国で行っている《静穏祭》のような催しをやることが決まったんだ」

「……それは、学院で毎年行われている、《雪静祭》とは、また別でですか?」

「また別だな。《星環三刻祭》という名前でスタンピードが起きた秋頃に《静穏祭》と被らないよう、少し時期をずらして行うことになった」


それを聞いて、生徒会の仕事の手が回らない理由がわかった。


本来ならばなかったはずの《星環三刻祭》は今年初の試みであり、昨年度を手本に行動することができない。学院では《雪静祭》という毎年冬頃に行われる文化祭のようなものもあり、《星環三刻祭》とは開催時期も少し近い。


その上、国で行われる《静穏祭》もあるという。《静穏祭》では第一王子であるユリウスやその婚約者であるアリシア、公爵子息のノアに加えて、生徒会役員であるリアンたちも出席することになる。その準備も加わるため、今年は猫の手も借りたいほど忙しいということだろう。


そこまで聞き、以前にノアたちがリーゼリアを生徒会に勧誘したことも、たった今リアンがリーゼリアを生徒会に勧誘し、断られても友人として仕事を手伝ってほしいと言った理由が分かった。


「……確かに、忙しそうですね」


普段の授業もあると考えると今年の生徒会は休む間も無さそうだ。正体不明の《静寂の魔導姫》と呼ばれるリーゼリアはそんなことを思う。


「そうなんだよね。イベントが重なると準備する側が大変だよ」

(…………これは、話を聞いて断れるものなの……?)


溜息をつきながら愚痴をこぼすノアを横目にリーゼリアは内心どうしたものかと考える。リーゼリアからすれば手伝いだとしても、あまり生徒会に関わるという面倒ごとは避けたい。


彼らを護衛をするために学院に入学したリーゼリアのセリフではないが、ここに来る前の1階での食堂の騒ぎを見るに、生徒会役員と知り合いになる程度ならまだしも、生徒会役員になる、または生徒会の手伝いとして生徒会に出入りするとなると、周りからやっかみが起きることだろう。


それはリーゼリアからすると面倒なことこの上ない。けれど、困っている友人を放っておくほど、冷徹な性格はしていない。


どうしたものかと悩んでいると、兄のアシェルがリアンと話しているのが視界に映った。


「確かに今年は忙しいが、関係のないリーゼリアを巻き込むのは違うだろ」

「本来ならば、私だってこんなこと言いませんよ。しかし、やらなければいけない仕事が多いことも知っているでしょうに」

「そうだとしても、これは生徒会の仕事だ。役員でもないリーゼリアに頼むことじゃない」


アシェルはリーゼリアが《静寂の魔導姫》であり、彼らの護衛として学院に入学したことを知っている人物だ。護衛任務で忙しいリーゼリアをわざわざ生徒会の仕事に巻き込むことはしたくないと思っている。


そして、そんなアシェルの思いをリーゼリアは何となく読み取っていた。


(……護衛の仕事なんて、しているようでしてないけど)


一学生としてノアやユリウスたちと授業を共にし、毎日を過ごしているだけで特にこれといって忙しい思いというのはしていないのが現状だ。護衛任務の報告書も書いてはいるが、特に変わったことも無いため、いつも問題なしで終わってしまう。


「役員になりたくないのなら、周りからバレないようにすればいい。今回だけの手伝いとしてお願いするだけですよ」

「それなら、他の生徒でもいいはずだ。リーゼリアにこだわる理由がない」


アシェルはリアンの言葉に反論すると、リアンは肩を竦めて答えた。


「それは兄であるアシェルがよく分かっているんじゃないんですか? 今話しただけでもリーゼちゃんの頭の回転の速さは伺えるし、ノア君たちの信頼も得ている。何より、私たちや生徒会に興味がない。仕事をする上で、とても素晴らしい人材じゃないですか」


その内容にアシェルは口を噤む。聞いていた周りもリアンの言葉に思うことがあるようで、特に口を開くようなことはしなかった。


「生徒会の仕事は生徒会だけで片をつけるのが通常ですが、今回ばかりはそんなことを言っていては終わりが見えませんよ。これは、生徒会副会長としての提案です」


先程までにこやかに笑っていたリアンからは想像もつかないほど、表情のない真顔での言葉だった。それほどまでに仕事に追われているとも考えられる。


(……まあ、役員になって人前に立つ訳じゃないし、兄さまたちも困っているようだし……)


生徒会役員になれという話ならば、リーゼリアは断固として拒否の姿勢を見せていたが、影からこっそりと生徒会のお手伝い係として仕事を手伝ってほしいということならば、考えなくもない。


このまま仕事が忙しくて、ノアやアリシアたちと一緒に過ごせる時間が減ってしまうかもしれないという寂しさから考えたものでは決してない。


リーゼリアはそう考え、おずおずと発言した。


「……あ、の、お手伝いなら、やってもいい、です」

「! 本当ですか!?」


その瞬間、リアンやユリウスたちが一斉にリーゼリアを見た。その視線に一瞬びくつくも、リーゼリアはこくりと頷いた。


「……はい。ただ、役員にはなりませんし、周りの生徒に、バレないように、してくれるのなら、やります」


リーゼリアの言葉に部屋の空気が一気に明るくなった。リューイとリューレは仲良くハイタッチをしているし、サリアは嬉しそうに笑みを浮かべている。


ノアやアリシア、ユリウスも嬉しそうで、リアンはホッとしたように紅茶を飲んでいた。ただ、アシェルだけは心配そうにリーゼリアを見ていた。


「大丈夫なのか? 仕事で寮に帰るのも遅くなるかもしれないんだぞ?」

「……アリシアさまや、サリア先輩がいるので、大丈夫です。それに、最近兄さま、忙しそう、です。私も手伝うので、少しお休みになって、ください」

「リーゼリア……」


リーゼリアの言葉にアシェルはどこか感動したようにしていた。


「いい妹を持ちましたね、アシェル」

「本当だな。その俺のいい妹をたった今、激務へと誘ったリアンはリーゼリアに頭を下げて感謝するんだな」

「ええもちろん。私が気に入っているお菓子の詰め合わせでどうでしょう? 勉強や生徒会の仕事の合間にオススメですよ」


しっかりと仕事を手伝わせる気満々のリアンに苦笑いしてしまうが、お菓子のほうには少し興味があるため、リーゼリアは頷いておいた。


その時、ユリウスが口を開いた。


「さて、話はついたな。リーゼリア嬢、此度の件を引き受けてくれて生徒会会長として感謝する。リアン先輩の話が出たときは会長として容認していいのか迷ったのが、正直に言うと仕事が忙しいのは事実でな。通常業務に加えての《星環三刻祭》の準備などやることが多く、人手が足りなかったんだ」


困ったように告げるユリウスの様子や周りを見てもそれが真実だということが分かる。無関係なリーゼリアにお願いするほど切羽詰まった状況であったようだと再認識する。


「こちらの提案を受けて入れてくれたんだ。リーゼリア嬢の希望通り、他の生徒からは気取られないように十分注意する」

「……そこは、お願い、します」

「ああ、もちろん。そこで早速で申し訳ないんだが、今日の放課後から手伝ってもらうことはできるか? 手伝ってもらう仕事の内容を説明したいんだ」

「……はい、大丈夫、です」


毎日授業が終わると、ノアたちと違ってやることが特にないリーゼリアはすぐに寮へと戻り、自室で過ごしているばかりだ。《大精霊エリュシオン》と話をしたり、本を読んだりと代わり映えのない放課後を送っている。


今日もすることなんて特にない。せいぜい授業の復習くらいなもので、リーゼリアはユリウスの言葉に頷いた。


「そうか、ありがとう。ところで放課後、一緒に行くと他の生徒に勘繰られる恐れがあるから少し時間をずらして来てもらうことになるが、大丈夫か?」

「……生徒会室の場所は、知っているので、大丈夫です」

「分かった。詳しい話は放課後、生徒会室で。次の授業のこともあるし、そろそろ解散しようと思うが、それでいいか?」


その問いにリーゼリアはこくりと頷き、他も同様に頷く。それを確認すると、ユリウスは各自解散するように告げた。


「生徒会室に来たものから順に仕事に取り掛かってくれ。それではまた、放課後で」


その言葉を皮切りに、アシェルやリアン、サリアなど次々と部屋を出ていき、リーゼリアもノアちについていくようにして、部屋を去った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ