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静寂の魔導姫 ───引きこもりを望んでいた最強少女は無詠唱魔術で護衛する────  作者: おもち


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第1話 はじまり



スタンピード───それは発生理由が不明の魔物の群れであり、たった一つの集団で国ひとつを滅ぼしてしまえるほどの力を持つ。


聖暦1540年、ルシエル王国には過去に類を見ないスタンピードによる被害が起きた。一度に八群れの魔物の集団に襲われ、ひとつの群れにはそれぞれ王と呼ぶに相応しい強い個体の魔物がいた。


ルシエル王国が誇る《七星の塔》を主力にし、魔術師や騎士たちがスタンピードの対処を行った。しかし、八つの群れに群れの長。《七星の塔》がそれぞれひと群れを相手にしても対処できない。


王国の被害が拡大していく中、当時12歳のひとりの少女が現れた。ローブを被り、顔が見えず、武器も持たない。


突如として現れたその少女に誰もが言葉を失った。当然だ。今そこは戦場の真っ只中。か弱そうな少女が一人でいるべき場所ではない。


少女を安全な場所に避難させようにも今目の前にいる魔物の対処に手一杯の彼らにはどうすることもできない。


そんな中、彼女はローブの下から魔物の群れを見つめる。いくつかの群れでは王が倒され、群れが解体し始めているところもあるが、依然として群れは王国を襲っている。


「…………めんどくさい」


彼女はポツリと零した。


その瞬間、少女の体からは膨大な量の魔力が溢れ出る。人が持てる魔力の量をゆうに超えているそれに人だけでなく、魔物すらも怖気付く。


「《契約者リーゼリアの願いのもとに、大精霊エリュシオンよ、ここに》」


少女は手を天に掲げ、そう告げた。その途端、見たこともない無数の魔術陣が空へと浮かび上がった。


魔物には魔力核と呼ばれるものが存在する。言わばそれが心臓であり、高純度の魔力核は魔物に大きな力を与える。


だからこそ魔術師や騎士はその核を破壊する。それ以外で、魔物を倒すすべはないからだ。


そのことは魔術師を目指すもの、騎士を目指すものに限らず、王国に住まう全ての人間が知っている。


「何が、起きているんだ……」


彼らの目の前ではありえないことが起きていた。突如として現れた少女が創り出した無数の魔術陣。そのどれもが見たこともない魔術陣だ。


そしてその魔術陣から何か魔術が発動したようには見えない。なのに、魔物は核が破壊されたかのように消滅していく。


強さなんて関係ない。全て等しく、灰のように消えていく。その光景に彼らは目を大きく見開いた。


音もなく、少女はスタンピードを鎮めた。魔物の群れはそこにはもうない。


誰もがそれを目の当たりにした。


崖の上に立ち、全てを見下ろしていた少女はいつの間にか消えていた。幻のように思えたが、未だ彼女の魔術陣は空を埋めつくしている。


それが、彼女のいた最もな証だった。


誰も少女の素顔を知らない。けれど確かに彼女はスタンピードをたった一人で鎮めた英雄なのだ。


美しく、音もないその魔術に目を奪われる。


やがてその勇姿は国に広がった。顔も名前も知らない少女に対して敬意を払い、彼らはこう呼んだ。



────《静寂の魔導姫》と。




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