変わる放課後①
「学校が終わったら連絡ちょうだい。駅前で待ってるから」
「うん、ありがとう」
朝、家を出る前、お母さんとの短い会話。
昨日の夜に塾に行くことを相談して、さっそくお母さんと一緒に申し込みに行くことになった。
放課後になったら、急いで駅前でお母さんと合流してそのまま塾に行く流れだ。
それだけで、成績に関しては少しだけ光が見えた気がした。
まだ何も解決したわけじゃない。あとは私が頑張るしかないけど、自分の選択が行きたい未来につながっていると思えた。
放課後。
私はカバンに荷物をまとめた。
同じクラスの友達は「じゃあ、また明日ね」と私に手を振って教室を出ていく。
私も「またね」と小さく手を振り返した。
皆、それぞれに受験に向けて準備をしているのだろう。
私は図書室に顔を出して、日向くんと夏海さんに「塾に行くから、図書室で勉強ができなくなる」と伝えるべきか、迷った。
だけど正直、気が進まなかった。
伝えるべきなのは分かってるのに、ふたりのところに顔を出すのに抵抗があった。
それでも、図書室に向かおうと決めて、廊下を歩いていった。
図書室のドアの前に立ち、扉を開けようと取っ手に手を伸ばした。
ふたりはもう来ているかもしれない。
きっとふたりは、いつものように私を笑顔で迎えてくれて、話を聞いて、塾に行くという私の選択を尊重してくれるだろう。
そう考えたところで、伸ばした手を戻してしまった。
今の私には、その優しさも正しさも、突き刺すような痛みを感じるだけだろう。
……私、ほんと嫌な奴だな。
図書室に背を向けて、カバンを肩に掛けなおして、昇降口へと向かっていった。
早足で歩く自分一人の足音が廊下に響く。
途中、笑いあいながら友達と並んで歩いている生徒とすれ違う。
今はそれが妙にうらやましく思えた。




