通知が運ぶぬくもり
日が暮れるのも早くなり、バスから降りた悠は暗い道を自宅へと歩いていた。
風はすっかり冷たくなり、ぽつぽつと並ぶ街灯の白い光も冷たく見えた。
悠の家は母と兄の三人暮らしで、皆平日は忙しく、いつも悠が一番に帰宅していた。
庭先のセンサーライトに照らされながら、慣れた手つきで玄関の鍵を開ける。
自室で着替えるためにスマホをポケットから出すと、通知が来ていることに気づいた。
咲だ。
脱ぎかけた制服はそのままに、すぐに画面を開き、咲からのメッセージに目を通した。
咲:「お疲れさま。返事が遅くなってごめんなさい。」
一緒に、「ごめんなさい」と書かれた女の子のスタンプが添えられていた。
彼女らしい文章。それを見ただけで、悠の心はふわっと温かくなった。
続けて、メッセージが書かれている。
咲:「しばらく塾に通うことになったので、当分は図書室に行けないです。伝えるのが遅くなってごめんなさい。」
悠は、ベッドの上にどさっと座り込んだ。
(塾か。確かに、成績を上げるなら一番良いよな)
理由が分かって、内心ホッとした。
少しだけ寂しい気持ちもあったけど、ぐっと堪える。
咲はきっと、自分の行く道を掴むために決断したのだろう。
その気持ちを尊重したかった。
悠はスマホの画面を見ながら、指で言葉を選ぶ。
悠:「了解、教えてくれてありがとう。体調、気を付けて。」
送信。
部屋着に着替えている間にスマホが震え、机の上で大きな音を立てた。
咲:「こちらこそ、連絡くれてありがとう。最近寒いから、日向くんも体調に気を付けてね」
マフラーをつけたネコのスタンプが添えられてくる。
それだけで、悠は自分の顔が少し緩んでいることに気づいた。
悠:「塾頑張ってね。応援してる。でも、無理しないで」
そして、「ご自愛ください」と頭を下げる漫画のキャラクターのスタンプを送信。
一瞬で既読がついて、「ありがとう」とお辞儀する柔らかいイラストのネコのスタンプが送られてきた。
無理をしないかだけが気がかりだったけれど、咲が諦めていないことが素直にうれしかった。
悠は、夏海にも短く、
悠:「返事、来たよ。塾に通うって」
とだけ送信して、画面を伏せた。
その夜、自室でのノートと問題集への書き込みはいつもよりも捗った。
夜の静けさに、ペンが走る音だけが響いていた。




