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優しい灯  作者: 豆大豆
2章
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霞む景色

翌日、放課後の教室の一角。

咲は担任と向かい合って座り、机の上の進路希望調査票と成績表を見つめていた。

成績表の「D」の文字が、改めて現実を突きつけてくる。


椅子がきしむ音が静かに響き、それに続いて担任が口を開いた。

「……今回の判定はD。第一志望の桜ヶ丘大学は、現時点では正直厳しい。それはわかってる?」

「……はい」

予想していた言葉なのに、声にされると余計に苦しかった。


「……ただ、これは“今の時点”の評価にすぎず、これからの努力次第で伸びしろはまだあるから、諦めなくていい」


"これからの努力次第"

"諦めなくていい"

それなら、今までの自分の努力は足りなかったのだろうか?

諦めるのがあるべき姿なのだろうか?


「でも、第二志望の私立水乃杜大学なら今の成績でも十分に狙える。そこを確実に押さえつつ、第一志望にも挑戦しよう」


すべて正しい。反論できる余地はどこにもなかった。

今の自分が批判されているわけでもない。


ただ、"第一志望にも"と言う言葉が引っかかった。

まるで、おまけみたいな扱いだった。

咲の「第一志望に入りたい」という気持ちは、無いものとして扱われているようだった。


(……私は、まだ諦めてないのに)


そう思う気持ちは確かにあった。伝えたかった。

だけど、成績表に刻まれた「D」の文字。

それが、咲の口を重たくふさいでいた。

結局、今の自分には、そんなことを言う資格は無いのだと、はっきりと感じてしまった。


この空間で与えられたのは、救いではなく、冷たい現実だけだった。


担任とのやり取りを終えて席を立ったとき、廊下の音がやけに遠くに感じられた。

図書室までの道のりは、誰ともすれ違わなかった。

まるで、私ひとりが世界に置き去りにされたかのようだった。

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