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優しい灯  作者: 豆大豆
2章
89/145

置いてけぼり①

1日の授業が終わり、放課後の始まりを告げるチャイムが鳴る。

放課後になるのが怖かった。

と言うより、放課後の図書室で、ふたりに顔を合わせるのが怖かった。

それでも、今の自分の立ち位置を伝えたいと思い、心に鞭を打つ。

いつも賑やかな放課後の廊下の音も、なんだか今日は静かな気がした。


放課後の図書室は、いつものように本のにおいに満ちていた。

窓の外は濃い雨雲が陽の光を覆い、窓ガラスからは小さな雨音が聞こえる。

外の世界はグレーに染まり、咲の気分をさらに憂鬱にさせた。


いつもの窓際の机には、いつもどおり既に悠と夏海がいた。

咲には、その机までの距離が遠く見えた。


夏海は模試の成績表の胸に抱え、咲が机に座るやいなや満面の笑みを向けた。

「聞いて、咲ちゃん。今回、Bだった! 前はDだったから、2つも上がったんだよ」

声は抑えているのに、嬉しさがこぼれている。


「……すごい……おめでとう。本当にすごいね……」

咲は笑った。笑えた、と思った。

DからB。あっという間に、追い越された。

胸の内にある鉛の塊のようなものが、より重く、大きくなったように感じた。


向かいの席では、悠が成績表を半分だけ開いている。


「俺は今回もB。ただ、Aまであと一歩かも」

淡々と、悠は呟く、得意げでも謙遜でもない、ただ事実を伝えるだけの口調だった。


「日向くんも、すごいね。ふたりとも、よかった」

本心から、そう思えた。ずっと一緒に頑張っていたふたりが、目標に届きそうになっている。

だけど同時に、自分だけおいていかれている事実が、どうしようもなく苦しかった。


咲はゆっくりとカバンから成績表を引っ張り出し、机の上に置いた。

そっと成績表を開き、現れた判定欄の文字を言葉にするまで、時間がかかった。

ゆっくりと折り目を開く。そこにあった判定を読み上げる。


「……Dに落ちたんだ、私。」

成績表の端をつまむ指先が、わずかに震えた。


夏海は一瞬、息を止めたようだった。


「……そっか。ごめん、私……」

夏海がそこまで言うのを、咲が遮るようにつぶやいた。


「ううん……日向くんも夏海さんもすごいよ。私がまだまだだっただけだから」


精一杯の笑顔を添えた。

少しの沈黙。図書室の穏やかな空気は、今日は重かった。

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