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優しい灯  作者: 豆大豆
2章
88/145

D

教室の窓の外は、鉛色の雲が重くのしかかるようだった。


咲のクラスでは、担任が模試の結果の入った封筒を配り始めていた。

咲は受け取った結果を開けられなかった。

結果を見てしまうことがどうしても怖かった。



数日前に受けた模試の手応えは、決して良くなかった。


試験中は悩む時間ばかりがかさみ、問題の半分も終わらないうちに、試験時間の大半が過ぎていた。

焦りは、普段は解けるはずの問題も悩ませてしまう。

解答箇所には飛ばされたマークがいくつもでき、「とりあえず埋めないと」と無理やり埋めた。

正解の自信からは程遠い、運任せだと言うのは分かっていた。

なにもかもが良くない方向に作用していた。


咲は模試中に感じた焦りと迷いをぼんやりと思い返していた。



周囲から聞こえてくるクラスメイトの反応が、咲を現実に引き戻した。

「よし、上がった!」

「うーん、Cか……でもほぼBだからいいかな?」

小さく喜ぶ声、誰かのため息。

結果を受け止める声が流れてくる。


ここで見ても見なくても、結果は変わらない。

咲は意を決し、模試の成績表をおそるおそる開き、判定欄を覗いた。


そこに書かれていたのは、黒い一文字。

「D」

無機質な判定の一文字が、白い紙の上に張り付いていた。


背中に冷たい感覚が流れていく。

わずかな息苦しさと吐き気の感覚が広がる。

短い時間だが、自分の呼吸が止まっていたのだと気づいた。


(……どうしよう、どうしよう)


教室のざわめきや、誰かが話す声や笑い声が、すべて別の部屋の出来事のようだった。

視界が、少し揺れるような感覚。それでも、判定欄の文字が変わることはない。

これが、現実だった。


胸の中に丸い鉛の塊が落ちるような感覚に襲われた。

予期していた結果が容赦なく突き付けられ、何も考えられなかった。

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