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優しい灯  作者: 豆大豆
2章
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鉛色の予感

放課後の図書室はいつものように机と本の匂いが混ざり、どこか落ち着く静けさがあった。

開いた窓からは、涼しくなってきた風と、険しさの薄れた日差しが入り込み、カーテンは優しくはためいて、金色のように光っていた。

窓際に座る三人はいつもの席に並び、翌日の校内模試に備えて、問題集とノートを広げていた。


「うう、現代社会、もうちょっと頭に入れておかないと……」


夏海は、プリントを広げながら、慌てた声でぼやく。

悠は参考書のページに指を置いたまま、静かに答えた。


「今さら焦ったって変わらない!って自分で言ってたじゃん……」

「そうだけどさー!でも足りてないの気づいたらやるしかないでしょー!?」


少しだけ声のボリュームが上がる夏海を、咲がたしなめた。

その様子を見て、悠は少しだけため息をついた。でもその顔は、「しょうがないな」と小さく笑っているようだった。


「……でも、私も夏海さんと同じ。分からないところ多くて……すごく不安」

「きっと大丈夫だよ。咲ちゃん、ずっと頑張ってるのを見てきたし。」


夏海は明るく、背中を押すように言葉をかけた。


「まあ、模試だし。そこまで気負わずにやろう。終わったら、一緒に復習しよう」


続く悠の言い方も控えめだが、そこに込められた頼もしさが咲にはちゃんと伝わる。

咲はノートの端を押さえつつ、笑顔を作る。


「うん、ありがとう。がんばるね」


「……ほんと、咲ちゃんには優しいよねー……」と夏海が少し頬を膨らませて、ふてくされるように言った。

悠は何も言わず、顔を背けて小さく頭をかいた。


いつもの三人でかわすやり取りは、咲の不安を少しだけ軽くしていた。

それでも、不安は消えなかった。

中間テストの結果も、参考書に挟んだ不明点を示す赤い付箋の数が減らないことも、

すべてが咲の心をざわつかせていた。


校内に、下校のチャイムが鳴り響いた。

「じゃあ、明日ね。早めに寝て、明日は頑張ろうね」

夏海が言い、咲と悠がうなずく。

三人で軽く片付けをして、一緒に学校の外へ出る。

帰り道、途中の別れ道で咲と悠は夏海の背中を見送る。

咲は悠に駅の改札まで見送られ、手を振って別れて電車に乗った。

いつもと変わらない日常が、咲を少しだけ落ち着かせた。

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