つかの間の息抜き
夏休み明けの校内模試は、三年生をあっけなく現実に引き戻す。
三人にとって、夏休みに積み重ねた努力と図書室の勉強の成果が現れるか、数日後に届く結果を待つしかなかった。
放課後、三人はいつものように図書室の大きな机に集まっていた。
悠の正面に咲が座り、その横に夏海が座っている。
いつの間にか、咲の横が夏海の定位置になっていた。
模試に頭をフル回転させたためか、もう勉強する元気は残っていなかった。
悠は机に突っ伏しながら気だるげに声を漏らした。
「疲れた……三年の範囲が入ると一気にキツいなあ……」
「うん……でも、春の模試のときよりは解けたかも」
咲も小さくつぶやく。その顔はわずかに安堵の色が浮かんでいた。
「私も前より手応えあり!二人に教えてもらったおかげ」
夏海は咲と目を合わせ、小さく笑みを交わした。
「うん、まあ俺も程々かな…」
悠の動きを真似するように机に突っ伏していた夏海は、ぱっと顔を上げ、口元にいつもの明るい笑みを浮かべた。
「よし、今日は息抜きしよ!カラオケ行かない?」
その提案に二人は一瞬だけ目を合わせた。
「……俺、カラオケなんてもう何年も行ってないなあ」
「私も……」
その空気を察して、夏海はすぐに提案を切り替えた。
「んー、じゃあファミレスはどう?」
悠は少し考えこみ、それからぽつりとつぶやいた。
「……いや、久々にカラオケも悪くないかな」
「私も。あまり歌えないけど……」
二人の言葉に夏海は少し驚くような顔をした。
「えっ良いの?無理に付き合わなくても……」
「いや。むしろ普段行かないから、ちょうど良い機会かも」
「うん。あ、でも歌うかわからないけど……」
「ん、りょーかい!歌うのは自由で!じゃあ行ってみよ!」
その言葉をきっかけに、三人は立ち上がり、外に出る。
空は高く澄んでいるのに、厳しい残暑が遠くの建物を陽炎で揺らめていた。




