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優しい灯  作者: 豆大豆
2章
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師に学ぶ

放課後、三人で図書室で勉強するようになって数日が経ったある日のこと。

いつものように悠の横に座った夏海はノートを前にして、眉間にしわを寄せながらため息をついた。


「うーん……この『スマホは何歳まで持たせるべきか』って小論文、やっぱりわかんないや」


夏海の呟きを聞いて、隣に座っていた悠が手を止めてそっと視線を向ける。


「それって、この前の問題?」


「うん。100点満点中、30点だった……。ねえ、咲ちゃんたちはどんなふうに書いた?」


咲は少し戸惑いがちな表情で顔を上げた。


「私は、中学生くらいまでは持たせないほうがいいかなって書いたよ。それで、理由を二つくらい挙げたかな……」


「俺も、だいたいそんな感じ」と悠も続けた。


夏海は二人を見比べてから、小さく首をかしげた。


「うーん……私も理由書いてるんだけどなあ~、うまくまとまってないのかな?」


咲は柔らかく微笑んで、小さくうなずく。


「多分ね。ちゃんとまとまっていれば、きっと大丈夫だと思う……」


夏海は納得したようなしないような表情のまま、再び深いため息をついた。


「私、まとまんないや……。あ、そうだ。秋先生に聞いてみようかな?」


咲が驚いたように目を丸くする。


「えっ、秋先生に?」


「うん。ほら、いつも図書室にいるじゃん。聞いてみてダメだったら諦めればいいし」


悠が思わず苦笑する。


「まあ、国語の先生だしね……でも、先生、仕事中じゃない?」


夏海は気にした様子もなく手をひらひらさせた。


「平気平気! ダメ元でちょっと聞いてみる!」


夏海は元気よく立ち上がり、カウンターで書籍の整理をしている秋のところまで歩いていった。


「あの、秋先生、お疲れ様です。小論文のことで質問してもいいですか?」


秋は顔を上げると、穏やかな笑みを浮かべた。


「ええ、もちろんです」


それを聞いた夏海はほっと安心したように、自分の答案を秋に差し出した。


「これ、小論文の問題なんですけど、私、ぜんぜん書けなくて……30点しか取れなくて……」


「お借りしますね」


秋は夏海の答案を手に取り、眼鏡を正しながら丁寧になぞるように視線を動かした。そして、間を置いてから一言付け加えた。


「……書けてますけどね」


「えっ!?」


予想外の言葉に、夏海は思わず声を上げてしまった。


「ぜんぜんダメだと思ってたんだけど……」


すると、秋はカウンターから立ち上がり、本棚から薄い小論文の参考書を一冊取り出して戻ってきた。

本を開いて夏海の前に置くと、いつもの落ち着いた口調で話し始めた。

時折、秋の質問に夏海が自信なさげに答えると、秋は優しく頷いて、「それでいいんです」と言っていた。

会話が進むたびに、夏海は、胸が少し軽くなるのを感じた。


「秋先生、ありがとうございます! ちょっとやってみます!」


質問が終わり、夏海が元気よくお辞儀をして、少し自信がついた足取りで席に戻ると、

咲と悠が微笑みながら夏海を迎えた。


「夏海さん、良かったね」


「うん! 聞いてみるもんだね~。二人も次から一緒に行ってみようよ」


三人の柔らかな笑い声が、静かな図書室の中に溶け込んでいった。

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