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優しい灯  作者: 豆大豆
2章
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旅は道連れ

夏休み明けの登校には、熱気がまとわりついていた。

悠は額に張り付く前髪を指で払いながら、早く学校のエアコンの風を浴びたかった。


歩きながら1組の前を覗くと、席替えしたのか、咲の姿は窓際に移っていた。

友達と話しながら、楽しそうに笑っている。

その様子を見て、悠の心もふっと柔らかくなった気がした。


2組の教室は既に夏休み明けのにぎやかさと、少しのけだるさが混じった雰囲気に包まれている。

悠は自席で提出用のプリントを整えていると、不意に元気な声が飛んできた。


「悠くん、おはよ。オープンキャンパスではびっくりしたよ」


顔を上げると、真田夏海が身を乗り出してきていた。

いつものように明るく、けれどどこか探るような目をしている。


「おはよう。うん、真田さんと会うなんて思わなかった」

「ほんとだね。ところで……悠くんの志望校って、やっぱり桜ヶ丘?」


悠が頷くと、夏海は「やっぱりか〜」と軽く笑った。


「私もさ、部活終わってから本格的に目指そうって決めたんだけど、春の模試……E判定だったんだよね!」


ちょっと大げさに肩をすくめて笑う夏海。でも、どこかで本気で気にしてるのが伝わる。


「部活引退して、夏から本格的に勉強始めたばっかり。分からないところ、たーくさん」


「でも、夏から切り替えた人なら普通だよ。Eから伸びる人も多いって先生言ってたし」


悠の落ち着いた言葉に、夏海は「そっか」と短く返した。

それでも、少しだけ表情がほぐれる。


「ていうか、悠くんってどこで勉強してるの? 予備校とか行ってるの?」

「夏期講習だけ行ったよ。基本は家。学校がある日は、放課後に図書室。藤音さんと一緒にやってる」


「へー、藤音さんって、文学部志望の子だっけ? あの時の……」


夏海は何かを思い出したように笑いながら、少しだけ間を置いて続けた。


「ねえ……もしよかったらだけど……私も一緒に勉強してもいい?邪魔にならないようにするから」


悠はちょっと驚いたように目を見開いてから、すぐに笑った。


「あー……うん。藤音さんも、たぶん歓迎すると思う」


「ほんと!?やった!ありがと! じゃあ、今日から行ってみていい?」


「うん。じゃあ、放課後になったら行ってみようか」


いたずらっぽく笑った夏海の声に、教室の窓から吹き込む風が重なる。

外はまだ夏の名残を感じさせていたが、次の季節への移ろいを感じさせた。

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