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優しい灯  作者: 豆大豆
2章
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いつもの場所で

教室に担任が入り、新年度最初のホームルームが始まった。

「それじゃ、順番に自己紹介してもらおうかな。お互い知ってる人も多いでしょうし、名前と趣味くらいでいいよ」


出席番号1番から順番が進んでいく。

教室の中央付近で、一人の女子生徒が元気に立ち上がった。


真田(さなだ) 夏海(なつみ)です!趣味はバスケです。体を動かすのが好きです。これから一年よろしくお願いします!」


すると教室の後ろのほうから小さな笑いとともに声が飛んだ。


「趣味っていうか、バスケ部のキャプテンでしょー?」

「あっ、そうだった!ポジションはガードです!」


少し照れたように笑いながら明るく言う夏海に、教室中が和やかな笑いに包まれた。


(元気な人だなあ……)


悠もその空気に自然に笑みを浮かべる。


最初はやや固かった自己紹介の雰囲気も、あっという間に和らいだ。


和やかな雰囲気のまま、悠の順番が回ってきた。

悠はゆっくり立ち上がり、軽く会釈した。


「日向悠です。趣味は読書と動画を見ることです。一年間よろしくお願いします」


静かに着席すると、次の生徒が自己紹介を始める。

新しい教室の空気は、悪くなさそうだと思った。

そのきっかけを作ったのが誰だったのかは、言うまでもなかった。


自己紹介が終わり、先生から一年間の説明が始まった。

配布物を受け取ったり、授業の注意点を聞いたりしているうちに、初日の学校生活はあっという間に終わった。


放課後、悠はゆっくりと廊下を歩いて図書室へ向かう。


扉をゆっくりと開けると、春の午後の光が差し込む静かな空間があった。

窓際のいつもの席に、咲が座っていた。


「日向くん」

咲が顔を上げて、小さく手を振る。

それだけで悠は胸が温かくなるのを感じながら、咲の向かいの席に座った。


「なんか久しぶりな気がするね」

咲が微笑みながらそう言うと、悠も小さく頷いた。


「そうだね……クラス、別々になっちゃったからなあ」

「うん……そういえば、朝の二組、すごく盛り上がってなかった?こっちまで響いてきたよ」

「ああ、バスケ部のキャプテンの人が自己紹介の時に突っ込まれて、それでみんな笑ったんだよ」


悠は少し笑って答えた。


「そうなんだ。元気な人なんだね」

「うん……あと、ちょっと声が大きいかも」


悠が軽く肩をすくめると、咲は小さく笑った。


「ふふ、いいなあ……私、声小さいから、うらやましいかも」

「わかる……俺も、声あんまり通らないからなあ」


他愛のない会話が心地よかった。窓から入る陽射しが、机の上で静かに揺れている。


帰り際、図書室のカウンターに秋がいた。

悠たちに気づいて静かに頷く表情が、「いつでも来てください」と言っているように見えた。



悠は咲と並んで廊下に出た。

並んで歩く二人の間を、新しい季節の風が心地よく通り抜けていった。

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