それぞれのクラス
咲が一足先に新しいクラスに向かったあと、
校舎の昇降口を抜けた悠は、軽く息を吐きながら掲示板の前に近づいていく。
新年度特有のざわめきを横目に、一組の名簿を目でなぞる。
自分の名前より先に、「藤音 咲」を見つける。
少しだけ心が弾んだ。
だけど、一組の名簿を最後まで見ても、自分の名前はなかった。
(……別のクラスか)
軽い失望を抱えながら、隣の二組の名簿を見ると、
そこに自分の名前が載っていた。
(まあ、図書室で会えるはず)
悠は自分に言い聞かせるように、ゆっくりと歩き出した。
二組の教室に向かう途中、一組の教室の前を通りかかる。
ふと教室に目をやると、廊下側の一番前の席に咲がいた。
横の席の女子と、穏やかな笑顔で言葉を交わしている。
(……よかった、楽しそうだな)
ほんの一瞬のことだったが、咲の顔を見れた。
それだけで胸のつかえが取れた気がした。
咲は悠に気づく様子もなく、視線は友達との会話に向けられている。
悠も特に声をかけず、穏やかな気持ちで一組の前を通り過ぎた。
自分のクラスに近づくと、すでに元気な声が廊下まで響いてきている。
「やったー!うちら同じクラスだし!」
「席隣にしようよ、先生来る前に!」
(朝から元気だな……友達と一緒になったのか)
悠は軽く笑いながら、二組の教室に足を踏み入れた。
自分の席を探してみると、廊下側、一番前の席が自分の場所だった。
鞄を置きながら、椅子に腰を下ろすと、後ろから声をかけられた。
「よ、悠。今年もよろしく」
「おう」
振り向くと、いつも昼によく一緒にいた友達だった。
クラスを見渡すと、見知った顔がちらほら。
でも、当然そこに咲の姿は見えなかった。
小さく息をついて座ると、チャイムが静かに鳴り響いた。




