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優しい灯  作者: 豆大豆
2章
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静かな始まり

朝の空気に、少しだけ緊張の匂いが混じっている気がした。

高校三年生になった藤音(ふじね) (さき)は制服の裾を指先で整えながら、昇降口を抜け、廊下を歩いていく。


「うわーー、別クラスか!」

「おー、今年は同じ二組だね!よろしく!」

「え……知り合い少ないんだけど……」


様々な感情にまみれた声が飛び交っている。

掲示板の前には、すでに人だかりができていた。

貼り出された三年生のクラス発表の紙がある。


自分の名前を探す指が、一組の名簿でぴたりと止まった。

「藤音 咲」


そして、もう一つの名前を、期待を込めて自然と探す。

だけど、一組にその名前は無かった。


少しの落胆を胸に、別のクラス名簿に視線を移すと、二組の名簿に

日向(ひなた) (ゆう)」の名前が目に入った。


(……今年は別のクラスなんだ)


ざわめく声にまぎれて、人の流れを縫うようにその場を離れる。


咲の隣を、肩を寄せ合って声を弾ませる生徒たちが、通り過ぎていく。

春の光はあたたかいのに、風が少し冷たかった。


(……大丈夫、図書室で会える)


約束したわけじゃない。でも、きっと彼も、同じことを思っているはず。

そう思ったら、肩の力が少しだけ抜けた。


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