春休みの合間に1
窓の向こうで、春の陽射しがアスファルトを照らしている。
咲といつも一緒にお昼を食べている四人は、春休みに駅前のファミレスの一角に集まっていた。
ドリンクバーのおかわりを済ませたところで、テーブルにはポテトと、安定のミニピザ。
「で、私の部屋、まだ片付けてなくてさ、2年の教科書とかそのままなんだけど」
ポニーテールの子がストローをくわえて笑う。
「それ言ったら、私1年の時のやつ、まだ置いてあるからね……たまに復習で使うかなって」
メガネの子がカシスソーダを一口飲んで、炭酸にちょっとだけむせた。
「わかる……結局使わないんだよね。私なんて中学校の時のやつすら棚に置きっぱなしだもん」
ショートヘアの子が、ピザの端をちぎりながら小さく笑う。
話題は、学校→家→部活→進路。
特にテーマもないまま、会話はころころと転がっては消えていく。
咲はその輪のなかで、グラスの結露を指でぬぐった。
ポケットから出したのは、猫の刺繍が入った小さなタオル。
「それ、かわいいじゃん」
ポニーテールの子がすぐに気づいた。
「ほんとだ、猫の刺繍、かわいい。自分で買ったの?」
「……ううん。もらった」
答えながら、咲はタオルの角を指先でそっと整える。
その言葉を聞いて、隣のメガネの子がニヤッと笑った。
「え、だれに~?」
その言葉に、空気が少し変わった。
「これは……この前、日向くんに……」
咲が目を伏せたまま小さく答える。
「あ、やっぱり。咲、もしかして日向くんと付き合ってたり……?」
ショートヘアの子が慎重に聞いてくる。
「え!?ううん、違うよ?そういうのじゃなくて……」
慌てて首を振る咲。髪が頬にかかって、すぐに指で払った。
「なんだ、そっかー。咲ちゃんと日向くん、いつも一緒に居るからそうなのかと思った」
メガネの子はピザを食べながら、ニヤニヤしている。
「あれ、じゃあ咲、それいつもらったの?ホワイトデー?」
ショートヘアの子の言葉を聞いて、ポニーテールの子が思い出したようにパンッと両手を叩く。
「そういえば……咲ちゃんさ、バレンタインの次の日だっけ?昼休みの話の続き、まだ聞いてないんだけど?」
(……う、やっぱり来た)
咲の心のなかで、ほんの少しだけ覚悟が固まる。




