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優しい灯  作者: 豆大豆
1章
53/145

気持ちのかたち7

『……バレンタインだから。

 これ、受け取ってほしいなって、思って』


その言葉で、悠の心が大きく揺れた。


(……こんなまっすぐ、くれるんだ……)


もしかしたら来るかもしれない、とは思っていた。

昨日、咲はすぐに帰っていた。

今日、咲の鞄は少し膨らんでいるように見えた。

クラスでほとんど語られないけど、確かに感じるバレンタインの空気。

その全部が「もしかしたら……」と淡い期待となっていた。


けれど実際に、

自分の名前を呼ばれ、

自分の目の前に、真剣な眼差しで、

咲の手からラッピングされた袋が差し出されたこと。

その事実は、想像よりずっと真剣で、重かった。


きっとこれは義理じゃない。咲の気持ちそのものなんだ。


それを考えるだけで胸が熱くなって喉が詰まり、言葉が出てこない。

「ありがとう」という言葉すら、軽い気がしてしまった。

それでも、咲の気持ちに今ここで誠実に返したいと強く思った。


「……ありがとう。すごく、うれしい」


そう言って頭を下げて、両手でラッピングを優しく受け取った。

受け取った時にクシャ、と言う音が、静かな図書室に小さく響いた。

とても優しい音だった。


ラッピングを優しく手に持った悠に、咲は小さく「どういたしまして」と言って微笑んだ。

ふたりの瞳には、安堵のような光が映っていた。


カードに書かれた猫の顔を、じっと見つめる。

その横にある、咲から贈られた言葉。

“いつもありがとう”

たぶん、これからの人生で、何度も何度も読み返すんだろうと思った。


窓の外では、夕暮れが金色から群青へ移り変わっていった。

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