気持ちのかたち7
『……バレンタインだから。
これ、受け取ってほしいなって、思って』
その言葉で、悠の心が大きく揺れた。
(……こんなまっすぐ、くれるんだ……)
もしかしたら来るかもしれない、とは思っていた。
昨日、咲はすぐに帰っていた。
今日、咲の鞄は少し膨らんでいるように見えた。
クラスでほとんど語られないけど、確かに感じるバレンタインの空気。
その全部が「もしかしたら……」と淡い期待となっていた。
けれど実際に、
自分の名前を呼ばれ、
自分の目の前に、真剣な眼差しで、
咲の手からラッピングされた袋が差し出されたこと。
その事実は、想像よりずっと真剣で、重かった。
きっとこれは義理じゃない。咲の気持ちそのものなんだ。
それを考えるだけで胸が熱くなって喉が詰まり、言葉が出てこない。
「ありがとう」という言葉すら、軽い気がしてしまった。
それでも、咲の気持ちに今ここで誠実に返したいと強く思った。
「……ありがとう。すごく、うれしい」
そう言って頭を下げて、両手でラッピングを優しく受け取った。
受け取った時にクシャ、と言う音が、静かな図書室に小さく響いた。
とても優しい音だった。
ラッピングを優しく手に持った悠に、咲は小さく「どういたしまして」と言って微笑んだ。
ふたりの瞳には、安堵のような光が映っていた。
カードに書かれた猫の顔を、じっと見つめる。
その横にある、咲から贈られた言葉。
“いつもありがとう”
たぶん、これからの人生で、何度も何度も読み返すんだろうと思った。
窓の外では、夕暮れが金色から群青へ移り変わっていった。




